日本人にとって富士山は特別な存在
高橋:SHOCK EYEさんは多くの神社を訪れていますが、最近はどちらに行かれたんですか?
SHOCK EYE:山梨県富士河口湖町にある河口浅間神社ですね。ここの裏山には「天空の鳥居」と呼ばれる遥拝(ようはい)所があって、絶景のパワースポットとして有名な場所なんです。鮮やかな朱色の鳥居の向こうに悠然とたたずむ富士の姿は、まさに言葉にならない美しさです。
高橋:日本人にとって、富士山はやはり特別な存在ですよね。人々は古くからその姿に畏敬の念を抱き、信仰の対象としてきました。だから富士山の周辺には、富士山を御神体とする「浅間神社」の名を持つ神社がたくさんあるんです。
SHOCK:富士山吉田口登山道の起点にある北口本宮冨士浅間神社もそうですよね。ここは僕にとって特に思い入れがある神社なんです。20年ほど前、河口湖へ遊びに行く道中、何かに呼ばれたような気がしてふらりと立ち寄ったら、そのすぐ後にデビューが決まったという不思議なご縁があって。それ以来、機会を見つけて何度も訪れています。杉の巨木が立ち並ぶ参道がとにかく好きなんです。
高橋:あの参道から境内に続く厳かな空間は、まさに神域そのものですよね。富士山は2013年に世界文化遺産に登録されましたが、北口本宮冨士浅間神社も25ある構成資産のうちの一つです。
富士山は自然遺産ではなく、多くの信仰を集め、数多くの芸術を生み出した文化遺産として登録されています。だから、信仰を現代に受け継ぐ役割を担った周辺の神社の数々も、重要な構成資産として登録されているんです。
SHOCK:神社は何百年、何千年もの間、人々の心のよりどころとしてさまざまな願いを脈々と紡いできた場所。そうやって神社が今日まで存続してきたのは、人々がその場所に特別な力を感じて、大切にしてきたからこそですよね。
つまり、神社を建てたから大切な場所になったのではなくて、人々にとって特別な場所だったから神社が造られた。全国の神社を訪れるようになって、そう考えるようになりました。
高橋:おっしゃる通りで、これだけ自然災害が多い日本に今もたくさんの神社が残っているのは、その場所が守られている安全な場所だから、という見方もできます。
実際、東日本大震災では多くの神社が津波の被害を免れているんです。そういう「神々に守られた空間」で感じる神聖さや、心が整う感覚というのも、神社が持つ無形の価値だと思います。
SHOCK:神社はよくパワースポットと呼ばれますが、それは災害や争いを耐え抜いた、いわば「強運な場所」だからですよね。実は「歩くパワースポット」と言われ始めた頃、そんな呼び名にふさわしい存在になるには何をすべきか、悩んだことがあって。そんなとき、なぜか「神社巡り」がふと思い浮かんだんですよ。
高橋:それが神社を巡るきっかけになったんですね。
SHOCK:はい。それまでの僕は、むしろ「神頼み」や「運」を信じないリアリストでした。でも、お参りしながら「運とは何か」を自分なりに見つめ直すうちに、強運の持ち主として誰かを幸せにすることも自分の役割だと思えるようになってきた。
日本人は小さい頃から初詣やお祭り、さまざまな願い事のたびに神社を訪れますよね。そうやって知らず知らずのうちにご利益にあずかり、精神的な支えにしてきたからこそ、そう思えたのかなと。私たち日本人にとって、神社は有形無形の価値を併せ持つ特別な場所なんですよね。