卵の配達スタッフを抜てき
大胆な決断は続く。小原は、添加物を一切使わず、卵の味で勝負するスイーツを目指していた。そのシェフとして、「食べるのが好き」と聞いていた卵の配達スタッフを抜てきしたのだ。「人を呼べるスイーツを作ろう」と考えた時、未経験であればプロにメニューの開発を依頼する人が大半ではないだろうか。小原は、そう考えなかった。
「専門家を呼ぶのは嫌でした。僕は、きらびやかなお菓子とかとかプロの技術を生かしたものじゃなくて、卵を軸にしたお菓子を作りたかったんですよ。専門家が来ると、その人が作りたいお菓子になるでしょ。それはちょっと違うなと」
菓子など作ったこともなく、数日間だけ菓子教室で学んだその男性スタッフは、ほぼぶっつけ本番でスイーツを作り始めた。いざ、実食。「それが、おいしくなかったんです!」と小原。
「プリンは、カフェを開く前から作り始めていたからまあまあおいしかったんです。シフォンケーキも、近所の料理好きの方からレシピを聞いて作ったから、おいしかった。でも、バウムクーヘンとシュークリームは、おいしくなかったですね」
しかし小原は、ほかの人に替えるという発想はなく、そのスタッフに任せた。それは、難しいことに挑戦していると分かっていたからだ。
「当時は無添加でバウムクーヘンを作っている人がいなくて、バウムクーヘンのメーカーさんに作り方を聞いても、分からないと言われたんです。そこを自分たちで一から開発しましたからね。それに、技術というのはやれば上達していくんですよ。だから、段々うまくなって、おいしくなりました」