1日最大500人が訪れる森のカフェ
その日は雨模様だったにもかかわらず、森の中のウッドデッキで傘を差しながらくつろいでいる人たちがいた。どこか異国の言葉で語り合っている。彼らの背後には、地上から5、6メートルの高さに造られた空中回廊と「ツリーハウスデッキ」がある。そこから見る景色は地面から見るものとはまったく違い、空中を散歩しているようだ。
ユニークなのは、カフェの入り口にキャンピングチェアがたくさん用意されていて、客が自分で椅子を持ち運ぶシステム。もちろん、帰る時に椅子を返却するのも客だ。注文した飲み物も、準備できたら客が受け取りに来て、
このシステムを考案したのは、一級建築士の大串幸男。彼は妻の前田和子とともに、15万平方メートル、東京ドーム3個以上の広さを誇り、カフェのほかに農地、うどん屋もある白糸の森のオーナーを務める。驚くべきは、たった二人で長年放置され、荒れ放題だったこの里山を開墾、整地し、10万人が訪れる場所に変えたことだ。
しかも、最初からそれを目指していたわけではなく、何かに導かれるように。