日本は一生懸命やっていれば成果が付いてくる
―日本でビジネスを始めたきっかけを教えてください。
1995年に日本へ留学したのがきっかけです。15歳ごろから食に興味も持ち始め、1997年に勉強の傍ら、パキスタンの家庭料理店、シディーク1号店を新宿に開店(2021年現在、都内に7店舗、千葉県に1店舗展開)しました。
もともと貿易に興味があって日本に留学したため、妻と共同で和新トレーディングを立ち上げ、ハラルやパキスタンの食材を日本に輸入するほか、自社工場での製造販売も行っています。2010年にパキスタンマンゴーの輸入販売を本格事業化させ、日本の大手スーパーマーケットへの販売を開始。2021年3月にシディークナショナルマートを製造拠点がある木更津にオープンしたのです。
また、日本は治安の面など安心・安全が実現していると感じ、この国に住みたいと思っていたのも、店を始めるきっかけとしては大きいですね。
―シディークはカレーの激戦区である『神田カレーグランプリ』に出場し、3年連続準優勝を獲得、ナショナルマートもSNSを中心に大きな反響を呼んでいます。こうした事業を成功に導くための秘訣(ひけつ)はありますか。
休まず働き続けることですね(笑)。ほかには「何でも一生懸命にやり抜く」ということはいつも気をつけていました。自分の情熱や考えが相手に届けばうまくいくんじゃないかと思いますよ。
シディークの1店舗目は、人通りが少なく立地的に良い場所ではなかったんです。それでもめげずにオフィス街の客層に合わせて、ランチメニューを提供したり、価格や量を調整するなど、さまざまな工夫をしました。当初は客単価が安くなってしまい、店の運営費が捻出できず、別のアルバイトで補填するなど大変な時期がありましたが、やがて口コミで話題の店になったのです。
対して、パキスタンで事業を始めるのは簡単なことではありません。3つの要素が必要だといわれています。1つ目は資金。2つ目はさまざまな場所で通用するコネクション、3つ目は社会的に有力な支援者です。お金があるだけでは何もできないのです。
日本は真面目に法律を順守して、一生懸命やっていれば問題はまず起きません。それに、本当に困ったときはお世話になった人たちが助けてくれました。