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「スパイス探しはアンビカへ」新大久保店オープンの奥深い理由

老舗のベジタリアン、ビーガン向け食材店が出店に込めた思い

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
アンビカ
Photo: Shintaro Kumihashi
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新大久保の魅力は韓国料理やK-POPのファンショップだけではない。イスラム横丁があり、多くのネパール料理店があり、スパイスショップがある、ということを知る人は数年前よりも増えていると思うが、蔵前で人気のアンビカショップが新大久保にも進出したことはご存じだろうか。 

アンビカは1998年創業のベジタリアン、ビーガン向けの食材店。インドを中心に各国から輸入した本場の食材やスパイスを扱い、一般客だけでなく多くのインド料理店やカレー店も利用している老舗である。蔵前、西葛西に続き新大久保店が2021年2月22日にオープンしたが、なぜ今新大久保で、どのような店づくりをしているのか。その魅力を探ってみた。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi

「新大久保のスパイス事情を底上げしたい」

「なぜ今新大久保か」と、率直な疑問を代表のヒンガル・ニッティンに投げかけたところ、「業界のレベルの底上げをしたい」という答えが返ってきた。多種多様なスパイスが使いやすい量で、しかも安く手に入るため、スパイス初心者も玄人も新大久保へと足を運ぶ。いわばスパイスのアンテナ基地になっていて、その魅力に触れるにはこの上ない場所なのだ。が、スパイスの質がいいかは別の話。

「スパイスは乾燥したものだから極端に痛むことがないし、保存環境に大きく左右されるので賞味期限を決めるのが難しいのですが、状態の良し悪しはあります。スパイスも食品。口にして体を作る要素の一つなので、品質にこだわるべきなのです」

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi

創業からベジタリアン、数年前からビーガン向けの食品も扱い、食への高い意識を持ってきたアンビカ。商品は2カ月ほどで入れ替え、常にフレッシュな状態を保っているそう。質がいいものを提供し、日本の食の水準でスパイスを楽しんでほしいという思いから、後発でありながら新大久保への出店を決めたという。 

日本人も親しめる買い物しやすい店づくり

「日本人の感覚でスパイスに触れてほしい」。その思いはもちろん店づくりにも反映されている。 近隣のスパイス、食材店のほとんどは、インド人やネパール人が日常生活で必要なものを買いそろえるためのライフラインとして利用しているが、日本人にも親しんでほしいという思いがアンビカにはある。そのため、ゆっくりと買い物を楽しめるよう、スペースを確保したゆとりある商品陳列が特徴だ。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi

商品棚のポップはネパール人の店舗スタッフの手作り。コミカルなイラストやヒンドゥー語を模したユニークな文字で、親しみやすい雰囲気づくりに一役買っている。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi
アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi

スパイスから調理器具、スイーツまで販売

品ぞろえも幅広い。スパイスはカレーをはじめスパイス料理でよく使うものからマニアックなもの、はたまたレシピ付きのスパイスセットまでずらりと並ぶ。そのほかにもレトルト食品やバスマティライス(インディカ米)、生野菜、調理器具、日用品までほとんどのものがここで手に入れることができる。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi

スイーツを扱っていることも新大久保店の特徴だ。サモサやチャイを店頭で販売するスパイス店は少しずつ増えてきたが、スイーツは珍しいのではないだろうか。「インドのスイーツ」と聞くと、とにかく甘いというイメージがあるかもしれないが、もちろん甘い。しかし、そこはアンビカ。日本仕様に甘さを少し抑えたものに仕上げているので、ぜひ一度味わってみてほしい。 

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi

ちなみにアンビカで扱う食品は全てベジタリアンもしくはビーガン対応のもので、パッケージにももれなく表示がされている。徹底した品ぞろえも安心につながる要素の一つだ。 

アンビカでしかできないこととは

こだわりと信念を持って出店した新大久保店。狙い通り客層の半数以上は日本人で、リピートする人も多くいるそう。その背景に店舗づくりもあるが、接客もその一つである。店頭に立つのは日本語が堪能なインド人、ネパール人のスタッフ。

各商品の説明はもちろんのこと、その人に合った買い物の手助けをしてくれる。スパイスを使って何を作りたいか、料理の腕前はどの程度か、それぞれに目的があるはず。それを伝えれば、「初めてカレーを作るならこのスパイスとこのスパイスがあればOK」「ビリヤニを作りたいならこの米がおすすめ」「このスパイスはこういう使い方もできる」など、その人に合わせたちょうどいい提案をしてくれる。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
商品ポップでも分かりやすく解説をしてくれる(Photo: Shintaro Kumihashi)

スパイスを買ったものの使い切らずに余らせてしまうことはよくある。例えば、『チャットマサラ』(酸味のあるミックススパイス)の活用法を尋ねてみると、「インドではフルーツによくかけるけど、トーストやゆで卵にかけて食べるのもいい。唐揚げにかけてもおいしい」とスパイスをより一層身近に使うことができるようなアドバイスをくれる。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
トーストにチャットマサラを一つまみ。爽やかなスパイスの香りで変化を(写真: Shintaro Kumihashi)

例えば、最近よく耳にするビリヤニ(インド風炊き込みご飯)について。いきなり自分で作るのは少しハードルが高いからと、レトルトを薦めてくれた。「まずは食べてみて、おいしいと思って自分で作りたくなったら材料をそろえればいい。その方がきっと楽しく作れる」とのこと。気負いすぎず、程よい距離感でのアドバイスは特にビギナーにとっては心強いはずだ。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi

自分だけのスパイスの楽しみ方を見つけるには

質のいい食品を扱う、広く明るい店舗づくり、丁寧な接客。当然のようで全てをそろえるのは案外難しい。それをアンビカは実践していて、スパイスに詳しい詳しくないにかかわらず来店すればその実直さを体感できるはずだ。新大久保店から業界のレベルを上げていこうという姿勢にもうなずける。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保
Photo: Shintaro Kumihashi

なお勢いのあるカレーブームと続いてビリヤニブームの予感がある今、その価値をもっと深く感じるためにも一度は足を運んでみてほしい。そしてスパイスを少しでも身近に感じて、自分だけの楽しみを見つけてみては。

アンビカベジ&ビーガンショップ新大久保の詳細はこちら

テキスト:組橋信太朗

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