夜な夜なカクテルの華が咲く・・・・・・。そんな一軒には、やはり2人で足を運ぶのが望ましい。日本一、いや世界一にも輝いた経歴を持つオーナーバーテンダー石垣忍の店をデート向けに紹介するのは、おこがましい限り。しかし氏が繰り出す、その華やかで見目麗しいカクテルの数々は、やはり女性にも愛でてもらいたいものだ。
カクテルの天才。いや、そんな陳腐な言葉で片付けるわけにはいかない。これまでの絶え間ない研鑽(けんさん)の賜物が、このバーマンを高みに導いた。才走る腕前にいまさら文字を費やすのは野暮だろう。
最近はカクテル名でオーダーするケースすら減ってきた。「今日はやたらと歩き回り喉が渇いているので・・・・・・」、「まだこんな季節だっていうのにかなり寒い・・・・・・」と口にしていると、気分にぴったりの一杯が次々と繰り出され幻惑されてしまう。まずは、マスターの一杯に負けない魅力溢れる2人であるよう心掛けたい。隣の相手よりもカクテルに惚れてしまった・・・・・・となる事故は、往々にして想定される。それでもこんな一軒が常にデートコースに入っているような2人だとしたら、羨ましいほどに素敵だ。
表の歩道から小窓を通して中の様子が伺え、かつメニューも用意されているので、ぜひ初心者にも飛び込んでもらいたい。
タイムアウト東京 > ナイトライフ > 東京、デートバー10選
「バーで口説くな」というバーテンダーもいる。しかしやはり、すべてにおいてオーセンティックな一軒だからこそ、男女を問わず「すてきなあの人と足を運びたい」と考えるのも不思議ではない。ただし、扉を開く者はひとつだけしっかりと覚えておかなければならない。2人の交わす言葉、口説き文句の一語一句は、バーテンダーに筒抜けである、と。あるバーテンダーから耳にした逸話だ。カウンターにはどうみても訳ありそうな、言葉少なげな2人。ほかに客はなし。沈黙をついて女性が発した台詞は「このまま時が止まればいいのに・・・・・・」。それに黙って頷く男性・・・・・・。しかしその台詞を聞き、マスターは心の中で呟いた。「私もその中に止まり続けなければいけないので、それだけは勘弁して」と。バーでのデートは、スマートな行動と台詞とともにありたい。では今宵も至福の隠れ家で愉しい逢瀬を。