暮れなずむ下町の亀戸で幹線道路の南の路地を歩いていると、洋酒の香りに敏感な者だけが気づく、瀟洒(しょうしゃ)なランプを見つけるだろう。「亀戸らしからぬ」という形容は失礼かもしれない。その扉を開くと下町とは思えない「非日常」を提供するカウンターに6つの特等席が待っている。
「新進気鋭の」という形容ももう似つかわしくない。「止まり木」として足を運んでもらえることを想定した「枝」という意の店名もあまねく知れ渡り、今年で創業10年を迎える。
オーナーバーテンダー佐藤剛は、レストランでの仕入れ業務や、伝説の店として名高い新小岩の「フストカーレン」勤務などの経験から、これまで手に入れてきたレアな年代もの、至高の逸品を惜しみなく披露する。一杯進むごとに、酒呑みを「うんうん」と確実に唸らす。そこに挟まれるアミューズもまた絶品。
「ああ、もっと足繁く通いたい……」。一度訪れた酒呑みを、そんな気持ちにさせる珠玉の一軒だ。