「食べる」という行為を捉え直し、見つめ直すこと
「全感覚祭はもちろん音楽イベントという一面もあるんですけど、一人一人が『ちゃんと存在する』ことがテーマだったんで、食べ物に向かっていくのも必然的だったと思いますね」
マヒトゥ・ザ・ピーポーはそう話す。十三月が主催するフェス『全感覚祭』は昨年からフードフリーを提唱し、全国の農家に野菜の提供を募った。
「体験の半分は自分の状態で決まると思うんですよ。ライブの楽屋にケータリングのお弁当が用意されることがあるけど、それが自分の知り合いが作ったものだとわかると、そのお弁当に対して意識が変わる。全感覚祭に来てくれた人もフードを作ってる人の顔が見えれば、食べるという体験の意味も変わってくるだろうし、ライブの体験自体も変わってくると思ったんですね」
マヒトは晶文社の連載『懐かしい未来』のなかで、フードフリーのアイデアについて「生き繋ぐではなく、美味しいものを食べて、ちゃんと生きる。その生きた体で全ての感覚を生かして遊ぶ」という言葉をつづっている。
ただ機械的に、まるでエサのように自分の胃袋に食料を流し込むのではなく、「食べる」という行為を捉え直すこと。そうした視点も内包した全感覚祭は、農家の間でもシンパシーを生んだ。なかには1200キロもの米を提供した農家もいたという。