コーラ・小林(Photo:Kisa Toyoshima)
コーラ・小林(Photo:Kisa Toyoshima)
コーラ・小林(Photo:Kisa Toyoshima)

キャットストリート進出は世界展開への第一歩

ブロードウェイを目指す、伊良コーラの挑戦

Mari Hiratsuka
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タイムアウト東京 > レストラン&カフェ > キャットストリート進出は世界展開への第一歩

テキスト:川内イオ

日本発のクラフトコーラメーカーの先駆け、伊良(いよし)コーラが原宿のキャットストリートに新店を開いた。あえてコロナ禍に2店舗目を開いた理由、新店舗に込めた思い、アフターコロナに計画するアメリカ進出などについて、創業者のコーラ・小林に話を聞いた。

人がいないキャットストリートを見て出店を決意

―コロナ禍が続き、飲食店が大きな打撃を受けるなか、なぜ2店舗目を開こうと考えたのでしょうか。

まず、総本店は下落合の住宅街の閑静なエリアにあって、お客さんも地元の方が多いので、ありがたいことにコロナの影響はそれほど大きくありませんでした。お客さんからの反応も良く、手ごたえを感じるなかで、昨年7月ごろから2店舗目を出そうと考え始めました。

もともと2024年にアメリカのニューヨークに進出しようと考えていて、その前にビジネス戦略上のクサビとなるお店を出したかったんです。それで新宿、代官山、浅草なども検討しましたが、伊良コーラはもともと国連大学前のファーマーズマーケットに出展していて渋谷に縁がありましたし、その時からよそ者を受け入れてくれる文化があると感じていたので、メジャーデビューの地としてキャットストリートを選びました。 

―この時期に、キャットストリートの一等地に出店することに躊躇(ちゅうちょ)はありませんでしたか?

物件を見たのが2020年の12月で、本当に今でいいのか、この場所でいいのか、やっていけるのかと、すごく悩んでモヤモヤしているうちに、2回目の緊急事態宣言が発令されました。それで、キャットストリートの様子を見に行くと、歩いている人がほぼいなくて、「こんなに寂しい感じになるんだ」と驚いたんです。

この様子を見て、コーラの歴史を思い出しました。コーラは、南北戦争が1865年に終わった後、まだ国が混とんとしていた1886年にアメリカのアトランタで誕生したものです。

その後の禁酒法の時代(1920~1933年)には、お酒に代わる存在として、人々に喜ばれたそうです。その歴史を振り返った時に、「コロナで混乱が続いている今だからこそ、出店しよう」と決めました。

コーラは「宇宙的な飲み物」

―店は近未来的な雰囲気ですね。どんなメッセージを込めたのですか?

表現したかったのは、「宇宙」です。僕はコーラを「宇宙的な飲み物」だと捉えているんですよ。いろいろなスパイスとフルーツが調和してコーラという飲み物ができるという意味で、有機的で宇宙的な生命体だと思っています。そこからイメージを得てデザインしました。

―「コーラは宇宙的」というのは新しいですね。

でも、完成した店舗を見た瞬間に、「ヤバい!」と思いました。空間としては格好いいけど、クラフトコーラを売る場所と認識されないかもしれない。自分の独りよがりを押し付けちゃったかなって。

それで、メニューを木枠に入れたり、杉の原木を置いたり、「クラフト」的なものを入れてどんどん中和しています(笑)。

お客さんの反応はすごくいいんですけど、「お店に入ろうとして入らなかった人」の声は聞けないでしょう。恐らく「店に入りづらい」「何の店かわからない」という部分があるのではないかと思っていて、そこを改善したいですね。

―開店後のお客さんの入りはいかがですか?

コロナは想像以上に強大な敵だと実感しました。特に雨の日はキャットストリートがゴーストタウンレベルで人がいなくなるので、渋谷と下落合の売り上げが逆転する時もあります。

でも、僕も含めて、伊良コーラのスタッフにとってはいい機会だと思っています。最初から人気店だと、自分が頑張らなくてもお客さんが来るから、そういうもんなんだと安心しちゃうでしょう。お客さんがいない時期を経験することで、「自分が頑張らないと」と思ってほしいので。最近メンバーも増えたし、これからが勝負ですね。

―新メンバーはどういう方ですか?

前職のアサツー・​ディ・ケイ(大手広告代理店)の後輩と、学生時代の知り合いを博報堂から引き抜きました。1年前なら誘わなかったと思いますが、今はそれだけの魅力を提供できると思っていますし、将来的にもウィンウィンの関係になれると確信しています。お店で働いてくれるスタッフも20人ほどに増えました。

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ハワイ在住のリピーターも

―広告代理店出身の3人でコロナ禍を乗り越えた後の計画を教えてください。

2024年のアメリカ進出に向けて動き始めています。ニューヨークに出店予定で、すでに不動産屋を通していいエリアを探しているところですが、僕は、ブロードウェイのタイムズスクエアもいいなと思っています。

―それはまた攻めますね! ちなみに、これまで『伊良コーラ』を飲んだ外国人のお客さんの反応はどうだったのでしょうか?

人種を問わず、めちゃくちゃ反応がいいんです。「今まで飲んできたコーラのなかで一番おいしい」と言ってくれたアメリカ人のお客さんもいます。

何度も日本に来ているハワイの方は、来日するたびに新しい友人を連れてきてくれるリピーターです。伊良コーラを飲むために、ノルウェーから来たという方もいました。

―ハワイ在住のリピーターはすごい。コーラの本場アメリカで全米展開の予定は?

アメリカはニューヨークに1店舗、その後は日本で全国展開したいですね。日本の次は、東南アジア進出を考えています。

―まだまだ挑戦は続きますね。

はい。そのためにもまず、キャットストリート店を軌道に乗せたいですね。緊急事態中はかなり厳しい戦いでしたが、そういう時期だからこそ得られる学びがあると思うんです。

僕は釣りが好きでバス釣りをするんですけど、冬は全然釣れません。冬に釣るためにはたくさん試行錯誤して、釣り糸を垂らし続けるしかない。そうして冬でも釣れるようになるとめちゃくちゃ経験値が上がって、春夏秋には楽に釣れるようになります。

今は「バス釣りの冬」だと捉えていて、今頑張ればコロナが落ち着いた時にチャンスが来ると思っています。

ライタープロフィール

川内イオ

1979年生まれ。ジャンルを問わず「世界を明るく照らす稀な人」を追う稀人ハンターとして取材、執筆、編集、企画、イベントコーディネートなどを行う。2006年から10年までバルセロナ在住。世界に散らばる稀人に光を当て、多彩な生き方や働き方を世に広く伝えることで「誰もが個性きらめく稀人になれる社会」の実現を目指す。著書に『1キロ100万円の塩をつくる 常識を超えて「おいしい」を生み出す10人』(ポプラ新書)、『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』(文春新書)などがある。

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