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Photo: Studio Ghibli
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平成を代表する長編アニメーション作品

手描きからCG技術へ、時代の転換期だった平成を代表するアニメを紹介

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テキスト:Matt Schley

平成は日本のアニメ史においても重要な転機であり、重要な作品を多く生み出した時代だった。「オタク」というワードが世界中に浸透し、アニメ文化そのものが国境を越えたのは、平成時代に生み出されたアニメが国際的に評価されるようになったからだろう。また、この30年の間に制作面でも手描きからCG技術へと大きな進歩もあった。

令和を迎えて早くも2年。現在はスタジオジブリの新作から、大人向けのマニアックな作品までが多言語に訳され、アニメの舞台を訪れるために訪日する外国人も増えている。ここではもう一度じっくり見たい、アニメの黄金期を代表する作品を紹介しよう。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年/平成7年)

インターネットの普及により、生活スタイルが大きく変わった1990年代。ネットワーク化された未来が人類にどのような影響を与えるのか、人々が真剣に考え始めていた時代でもあった。

平成7年は未来哲学とサイボーグアクションを融合させた押井守の傑作、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』が公開された年。同作はウォシャウスキー姉妹によるサイバーパンクの名作『マトリックス』を制作するきっかけにもなった作品で、海外のSFファンからの評価も高い。

近年では、スカーレット・ヨハンソン主演の実写リメイク版も公開されている。

魔女の宅急便(1989年/平成元年)

今では考えられないことだが、1989年当時のスタジオジブリはまだ大きな興行功績を収めていなかった。『魔女の宅急便』はジブリの最初のヒット作で、この年の最高配給収入を記録している。

角野栄子同名小説を映画化した本作は13歳の魔女、キキが都会に移り住み、人々との出会いを通して成長していくというストーリー。新生活に奮闘するキキの姿は多くに人に共感され、キュートな黒猫のジジはキャラクターとしても人気になった。 

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おもひでぽろぽろ(1991年/平成3年)

スタジオジブリの監督としてスポットライトが当たるのは宮崎駿だが、ジブリの共同設立者である高畑勲も数多くの名作を生み出した重要監督の一人だ。時には競い合いながらも宮崎を盟友として支えてきた高畑だが、2018年に惜しくもこの世を去った。

宮崎作品とは異なり、高畑の作風はアニメの境界線を押し広げるようなネオリアリズム的要素が強い。高畑が平成3年に監督した本作は、東京生まれ、東京育ちのタエ子が田舎へ旅に出たことで小学5年生の自分を振り返る、というストーリー。

宮崎作品に登場するロボットや魔法使い、少女の冒険などファンタジー的要素は一切なく、「アニメが苦手」という人にもぴったりの大人向けの作品だ。

新世紀エヴァンゲリオン、ヱヴァンゲリヲン新劇場版(1997〜2012年/平成9年〜平成24年)

1995年から1996年にかけて放送された新世紀エヴァンゲリオンは、アニメの常識を覆す作品として、今も人気を誇る名作だ。全26話の同シリーズは、汎用(はんよう)人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットとなった少年少女と、アニメに登場する架空の都市「第3新東京市」を襲う謎の敵「使徒」との戦いを描いている。

シリーズが公開された1995年は、オウム真理教による地下鉄サリン事件と、阪神大震災という平成の歴史上最も痛ましい出来事が重なった年。混沌(こんとん)とした状況の中でテレビ放送された同作は見る者に疎外感、そして恐怖を与えると賛否両論の議論を巻き起こした。その後は合計6本の劇場版が制作され、今年は待望の新作映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の上映も控えている。

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パーフェクトブルー(1997年/平成9年)

正直、今敏の作品はどれを選出してもよかったのだが、彼の処女作である『パーフェクト・ブルー』は、文字通りパーフェクトな作品。ヒッチコックを連想させるスリルと、不気味な描写が特徴のこの作品は、デビュー作とは思えない監督の自信と完成度だ。

ストーカー被害に遭い、精神的に追い詰められたアイドルが現実と幻覚の間をさまようというストーリー展開。日本のポップカルチャーや社会への批判も感じられ、崩壊していく若い女性をリアルに描いたサイコスリラーに仕上がっている。

監督の今は、残念ながら2010年に46歳の若さでこの世を去ったが、『東京ゴッドファーザーズ』や『パプリカ』など多くの名作を残した。

劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲(1998年/平成10年)

日本が誇る平成のポップカルチャーを語る上で、「ポケモン」の存在は無視できない。1996年にゲームボーイのソフトとして誕生したポケモンは、カードゲームやキャラクター商品としても成功を収め、1997年にアニメ化。

初代劇場版の本作は、多くの子どもたちを夢中にさせた大ヒット映画で、世界的なポケモンブームを巻き起こすきっかけとなった。2019年には、リメイク版がフル3DCG映像で公開されている。

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千と千尋の神隠し(2001年/平成13年)

1990年代後半には、宮崎駿は世界で最も有名なアニメ監督になっていたが、『千と千尋の神隠し』の公開はその立ち位置をさらに確立させた。

本作は、両親の都合で引っ越しをすることになった千尋が道中に神隠しにあい、不思議な街の銭湯「油屋」で働くことになる、というストーリー。興行収入300億円を超え、日本歴代興行収入第1位を記録した作品だ。

宮崎はこの作品で、日本映画では初となるアカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した。

サマーウォーズ(2009年/平成21年)

平成の後半には、『劇場版デジモンアドベンチャー』などを手がけた細田守の名前がアニメ界のトップに躍り出るようになった。彼の本格的なブレイクの引き金となったのが、2009年の『サマーウォーズ』だ。

本作は、核戦争の危機をもたらすA.I(人工知能)と、日本の田舎に住む大家族が一致団結して戦う、というテクノロジーへの依存を主題とした作品。現代的なテーマを扱ったSF映画だが、家族や友情、田舎の地域社会などの描写が笑いや涙を与えてくれる。

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レッドライン(2010年/平成22年)

アニメ業界全体がCG技術に頼る傾向が強まるなか、アニメーターの小池健と石井克人は7年の歳月をかけて手描きの大作を完成させた。

『Redline』は、遠く離れた惑星を舞台に繰り広げられるカーアクションをアメコミ調に描いた2010年の作品。個性的な絵のタッチや爽快なスピード感、そして迫力のある描写を観るとアドレナリンで満たしてくれる。エンドロールが流れた後も余韻に浸ることのできる傑作だ。

興行的には失敗に終わった本作は、アナログアニメ史に刻まれる最後の栄光かもしれない。

君の名は(2016年/平成28年)

本作が公開される前は、クリエーターとしての評価が高かった新海誠。深海が制作するアニメの特徴は、なんと言ってもその美しい世界観や透き通った風景の描写だろう。

全世界でアニメ作品としては歴代最高興行収入を記録した『君の名は』は、3年前の時間軸を生きる田舎の少女と現在に生きる都会の少年の体が入れ替わる、というSFラブストーリー。

もしかしたら、宮崎駿監督の引退撤回決意のきっかけとなった作品かもしれない。2019年に公開された深海の『天気の子』も大ヒットとなった。

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