畠山直哉「津波の木」
© Naoya Hatakeyama / Courtesy of Taka Ishii Gallery畠山直哉 連作「Kochi」より、2022 年 C プリント 21.2 x 24.8 cm
© Naoya Hatakeyama / Courtesy of Taka Ishii Gallery

東京、9月に行くべき無料のアート展9選

谷中・京橋・六本木・横浜などで見逃せない展示を紹介

広告

タイムアウト東京 > カルチャー > 東京、9月に行くべき無料のアート展9選

アートにあふれる街、東京。本記事では、残暑に負けず出かけたくなる無料のアートイベントを紹介する。

東アジアの写真芸術を広く取り扱ってきた「禅フォトギャラリー」の開廊15周年を記念した展覧会をはじめ、19世紀の写真技法「アンブロタイプ (ambrotype) 」を用いた山本昌男の個展、英語圏における最古の公共図書館である「チータムズ図書館」など歴史的建造物を題材にした寺崎百合子の個展など、入場無料で楽しめるギャラリーや美術館の展示を揃えた。ぜひチェックしてみてほしい。

関連記事
東京、8月から9月に行くべきアート展

  • アート
  • 谷中

スカイ ザ バスハウス」で、イギリスのアーティスト、ハルーン・ミルザ(Haroon Mirza)の個展「Ceremonies and Rituals」が開催。初公開となるインスタレーションを中心に、近作シリーズも併せて展示する。

ベースアンプやソーラーパネルなど既製品を寄せ集め、光と音を彫刻の素材として扱うミルザ。彼は周波数や波長を操作する電流こそが自身の表現メディアであると言う。

今回、その電流の効果をさらに追求し、神秘的な体験と科学的な分析が交差する未知の領域に踏み込む。科学と神秘を織り込んだ探求のタペストリーを提示し、固有の周波数に振動する潜在的な力を浮かび上がらせていく。

注目の10年ぶり2度目となる個展。見逃さないでほしい。

  • アート
  • 六本木

「タカ・イシイギャラリー」で、畠山直哉の個展「津波の木」が開催。会場では、2024年の写真集『津波の木』から10点、2021年から2022年にかけて高知県で撮影された新作『Kochi』から30点を展示する。

畠山は、2011年の東日本大震災における津波で実家と母親を亡くしてから、故郷の陸前高田の変わりゆく様子を写真に収めてきた。2018年から撮影された作品群『津波の木』は、さまざまな形で震災の影響を受けた樹木や風景を記録した写真集だ。写し出された木々には、時に不動の存在として崇められ、時に利用される木々と人間の関係性や、震災時から経過した時間が描き出されている。

また、『Kochi』からは津波避難タワーを被写体とした作品が出展され、タワー群が救済の場としてそびえ立つ一方で、その周囲の風景が失われてしまう時を静かに予示する姿を捉えている。

自然・都市・写真の関わり合いを重んじ、精密に作り上げられながら、豊かな詩情を持つ畠山の作品。じっくりと堪能してほしい。

広告
  • アート
  • 六本木

「禅フォトギャラリー」で、開廊15周年を記念した展覧会が開催。中国と日本の写真を専門に紹介する場として、2009年9月18日に渋谷の地に開廊した同ギャラリーの軌跡を振り返る。

同ギャラリーは2011年2月に現在の六本木に移転し、その後東アジア全般を専門領域としている。開廊以来、写真展に合わせて制作を続けてきた写真集のタイトルは、現在170を超える膨大な数だ。さらに、2023年に「造本装幀コンクール」の審査員奨励賞や、今年は「アルル国際写真祭2024」のブックアワードで「Historical Book Award」を受賞するなど、国内外で高い評価を得てきた。

会場では、これまで刊行した国内外の90人以上のアーティストによる写真集が一堂に会する。ギャラリーが作家とともに歩んできた道筋をのぞいてみては。

  • アート
  • アート

2024年9月21日(土)~29日(日)の9日間、渋谷・原宿周辺で、今年で8回目となる「SHIBUYA PIXEL ART 2024 ~Bit Valley, Bit Flowers~」が開催。総勢100人以上のピクセルアーティストやライブパフォーマーが参加し、企画展・フェア・トークショー・音楽ライブなどの全10本のプログラムが展開する。

今回のテーマは「Bit Valley, Bit Flowers」。「ピクセルアートコンテスト」の受賞ノミネート作品およそ50点が、渋谷・原宿周辺100箇所のデジタルサイネージや巨大スクリーンに登場する。

また、ノミネート者が集合するコンテスト授賞式は、29日(日)に特別審査員によるトークセッションと併せて、「渋谷サクラステージ(Shibuya Sakura Stage)」の「404 Not Found」「re-serch」 で行われる。

会場はそのほかに、「Shibuya SACS」「sequence MIYASHITA PARK」「オールデイプレイス渋谷(all day place shibuya)」2階、「東急プラザ表参道 オモカド」など、全8会場だ。

このほか、CCCアートラボと共催する現代美術家と陶芸家による3人展「悪戯な、バグ展」や、韓国出身のピクセルアーティスであるジュ・ジェボム(Joo Jaebum)とグラフィックデザイナーの北山雅和のコラボレーション展「Harmony」など。さまざまな角度からピクセルアートの魅力を楽しめる内容となっている。

広告
  • アート
  • 銀座

銀座の「ギャラリー小柳」で、寺崎百合子の個展「Every step we take, each story we unfold 時を数えて」が開催。寺崎の同ギャラリーで6回目の個展となる。

寺崎は、階段・劇場・楽器・書物などの人間の手によって作られて長い月日の経たもの、そしてそれに触れてきた人々の気配をモチーフとしてきた。黒鉛筆を緻密に重ねて暗闇を描くことによって、場所そのものがたどった時の経過を表現する。

今回の個展では、1653年に開館した英語圏における最古の公共図書館である「チータムズ図書館」や、15世紀に建てられた「ウェルズ大聖堂」などを描いた新作を中心に展示する。なお、2024年8月23日(金)と9月21日(土)には作家によるトークイベントも予定している。展示と併せて楽しんでほしい。

  • アート
  • 市ヶ谷

「ミヅマアートギャラリー」で、静閑で詩的な写真作品やインスタレーションで知られる山本昌男の個展「生物 ≅ 静物」を開催。山本が新たに取り組んでいるアンブロタイプ (ambrotype) という19世紀の写真技法を用いた作品を発表する。

盆栽や木の根、道端の石など、日頃見過ごしてしまう小さなものや、ありとあらゆるものに宇宙が宿っていることを見いだしている山本。今回、アンブロタイプの技法により、山本はさまざまな生物(≅静物)を描き、絵画的な表情を見せる写真作品を生み出した。印画紙とは異なる物質感の、精細なガラスネガ作品には、繊細で刹那的な世界が広がる。

「自然物だけでなく人工物にでさえ、息遣いを感じることがある」と言う山本の、明確な境界のない世界観に浸ってほしい。

広告
  • アート
  • 横浜

「横浜市民ギャラリー」で、幅広い世代の作家による同時代の表現を多角的に取り上げ、現代美術やその背景にあるものを考察する「新・今日の作家展2024 あなたの中のわたし」が開催。「あなたの中のわたし」がテーマの本展では、2人の若手アーティスト、スクリプカリウ落合安奈と布施琳太郎の新作を交えた展示を行う。

日本とルーマニアにルーツを持つ落合は、「土地と人との結びつき」をテーマに、インスタレーション・写真・映像を制作する。2022年に約1年間ルーマニアに滞在した経験をもとに、2023年から写真を中心とする作品『ひ か り の う つ わ』を発表している。

布施はスマートフォン発売以降の都市における「孤独」や「二人であること」の回復に向けて、映像作品やウェブサイト、キュレーションやイベントの企画など、多様な方面で活動を行う。

彼らの作品を通じ、自己と他者やその関係性、また、それらが成す社会について観想してみては。

  • アート
  • 虎ノ門

現代における絵画の可能性を模索し続けるアーティスト、五月女哲平(そうとめ・てっぺい)の個展が「アート クルーズ ギャラリー バイ ベイクルーズ」で開催される。

五月女は、2009年ごろからフラットで鮮やかな色面を簡素化したモチーフで構成した絵画を制作し、注目を浴びているアーティストだ。東日本大震災後に発表した『He, She, You and Me』では、鮮やかな色彩を黒や白、グレーで覆い隠し、絵画の物質的側面に焦点を当てた表現へと移行した。

その後も絶えず絵画の在り方を探究し続け、絵の具を塗り重ねる代わりにアクリル板やガラス、シルクスクリーンを重ねるといった「作業」を行うなどして、絵画が絵画でいられる理由は何かを問い続けている。

展覧会名の「GEO(ジオ)」には2つの意味が込められている。一つは、人間の抽象的な思考に基づいた「Geometry(幾何学)」で、もう一つは「Geoglyph(地上絵)」「Geodetic(測地)」「Geology(地質学)」など、地球に根ざした概念だ。本展は、これら2つの要素が共存する内容となっている。

本展のアートディレクションは、ギャラリーのクリエーティブディレクターでありグラフィックデザイナーでもある、おおうちおさむが担当する。会場では数量限定で五月女の作品をデザインに取り入れたオリジナルラグも販売されるので、ぜひチェックしてほしい。

広告
  • アート
  • 京橋

京橋の現代アートギャラリー「ギャルリー東京ユマニテ」で、前衛いけばな作家の中川幸夫(1918〜2012年)によるガラス作品の展覧会を開催。本展では、2002年に山梨県の「富士川ガラス工房」で中川監修の下、ガラス作家の高橋禎彦が制作したガラス作品28点を展示する。

1941年から、華道家元の池坊に属していた中川は、戦後に作庭家の重森三玲(しげもり・みれい)の推薦により、世間の注目を集める。その後1951年に、白菜を丸ごと生けた作品『ブルース』について家元と争い、流派を去る。以降は流派に属さず、弟子も取らず、独自の表現を追求し続けた孤高の作家だ。

1973年の代表作『花坊主』では、900本の赤いカーネーションをガラス器に詰めて逆さに置き、白い和紙に真っ赤な花液がにじみ出る、伝統を覆す表現で高い評価を得た。中川にとってガラスは、花を生けるための器というよりも、等価の素材としてガラスと花が響き合う、いけばなの表現を追求したものだった。

中川のガラス作品に焦点を当てた、めったにないこの機会を見逃さないでほしい。

もっと9月開催のアート展を知りたいなら……

  • アート
  • アート

1936年生まれの田名網敬一は、幼少期に体験した戦争の記憶とその後に触れたアメリカ大衆文化の影響が色濃く反映された、鮮やかな色彩の作品で知られている。活動当初から既存のルールに捉われることなく、ジャンルを横断しながら精力的に創作活動を続け、戦後日本美術史に重要な成果を残してきた。近年、国外でも高い評価を得ている田名網の初となる大規模回顧展が、2024年8月7日(水)から11月11日(月)まで「国立新美術館」で開催される。

  • アート
  • アート

清澄白河の「東京都現代美術館」では、「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」とともに、現代アーティスト・開発好明(かいはつ・よしあき)の個展「開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ」が2024年11月10日(日)まで開催されている。コミュニケーションを誘発するようなプロジェクト型の作品が多く、美術館での展示が難しい開発の、都内初となる大規模個展だ。

広告
  • アート
  • アート

日本の現代美術好きなら、「高橋龍太郎コレクション」の名を一度は耳にしたことがあるだろう。精神科医の高橋龍太郎が、1990年代の半ばから収集してきたアート作品は、現在では3500点を超え、日本の現代美術にとって最も重要なコレクションとなっている。そんな高橋コレクションを、総勢115組のアーティストによる作品群で紹介する展覧会が、「東京都現代美術館」で開催されるのだから見逃す手はない。

  • アート

東京の人気ギャラリーや美術館で開催するアート展を紹介。8月から9月にかけては、「東京都写真美術館」でのメディアアーティストの岩井俊雄の展覧会や、ワタリウム美術館でのアートコレクティブ「SIDE CORE」の大規模個展など、注目の展示が目白押し。リストを片手に出かけてほしい。

おすすめ
    関連情報
    関連情報
    広告