吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ――建築家の不在
Red Light Yokohama ©Yasutaka Yoshimura 神奈川県、2010年
Red Light Yokohama ©Yasutaka Yoshimura 神奈川県、2010年

東京、1月に行くべき無料のアート展6選

建築と漫画のコラボ展、写真、絵画、彫刻など、入場無料のアート展を紹介

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ここでは2025年1月に開催する入場無料のアート展を紹介したい。「TOTOギャラリー・間」での漫画と建築のコラボレーション展や宮原夢画の写真展、丹下健三と隈研吾の建築展など、入場無料で鑑賞できるアート展を揃えた。リストを片手にアート巡りと街歩きを楽しんでほしい。

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「TOTOギャラリー・間」で、「吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ――建築家の不在」展が開催。建築家・吉村靖孝の7つのプロジェクトを異なる漫画家が7つのストーリーとして描き下ろすことにより、建築の新たな解釈の可能性を探る。

吉村は、建築が人々のふるまいなどの自発的な動きと、社会制度や状況など多様な社会的条件との架け橋になれるよう、両者のさまざまな関係構築を試みてきた。

例えば、既成のテント倉庫で木造建築を覆うことで、大きな一つの空間の下で子どもがのびのびと過ごせる子育て支援施設を実現した『フクマスベース』(2016年)や、動物とともに幸せな人生を送れるアニマル・ウェルフェア社会を構想した『滝ヶ原チキンビレジ』(2021年)などで、新しい住まいや暮らしの在り方を模索している。

吉村が探究する、これらの現代社会における建築の拡張性をさらに進めるために、仮に建築家個人の作家性を「不在」にすると何が起きるのか。吉村自身が自らの作品を題材に、本展を通して問いかける。

漫画が建築と出合い、建築家の手を離れた先に描かれるものとは何か。2つのコラボレーションによって生まれるものを、発見してほしい。

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「ギャラリー小柳」で、マーク・マンダース(Mark Manders)による個展「Silent Studio」が開催。ギャラリーの空間を半透明の薄いビニールで囲ってアーティストのスタジオに一変させ、新作を含む9点を公開する。  

マンダースは、彫刻や家具、日用品や建築部材などを「想像上の」部屋に、緻密に練られた配置図に基づいて配するインスタレーションを制作してきた。展示空間の中央には、『Bonewhite Clay Head with Two Ropes』(2018〜2024年)を設置。作業台の上に置かれた乾燥してひび割れたかのような彫刻は、ロープで留められ、今にも崩れそうな緊張感を与える。

これらの作品がスタジオに設えられることで、作業の途中であるかのような印象をもたらし、静かなスタジオに作家がそれまでいたかのような、あるいは長い間放置されたかのように感じさせるだろう。はかなさが漂う彫刻は、ブロンズなどで強固に作られており、まさに一つの瞬間が凍結したかのようだ。

作品が醸し出す、詩的な空間をじっくりと味わってほしい。

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「デザインギャラリー1953」で、「丹下健三と隈研吾 二つの国立競技場」が開催。2024年に「パリ日本文化会館」で行われた「丹下健三と隈研吾展」を再編集し、特に「国立代々木競技場」と「国立競技場」についてフォーカスを当てる。

建築家の丹下健三と隈研吾は、3つの共通点を持っている。彼らの代表作が「東京五輪」に強く関係している点と、二人が設計した住宅は、日本建築の古典と称される「桂離宮」から説明ができる点。最後に、フランスから多くの影響を受け、多くの作品を残している点だ。

2つの国立競技場は異なる時代背景の中で建設され、開催された競技も異なるが、「ランドスケープ」「線」「軒」「アーチ効果」という4つのキーワードを通じて、戦後日本の近代建築の特徴を体感できる。特に、写真家の石元泰博と瀧本幹也のモノクロ写真を対比することで、2人の建築家の共通点や違いを知る手がかりを見つけられるだろう。

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「タカ イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム」で、写真家・宮原夢画の個展「KATAMARI」が開催。人間の肉体をテーマとした2つの異なる構成による作品、計20点を展示する。 

真言密教の「金剛界曼荼羅(まんだら)」と「胎蔵界曼荼羅」の概念である「内なる宇宙から外なる世界へ、また外なる世界から内なる宇宙」に着想を得た宮原。写真というメディウムで人間の肉体を再解釈し、細部から広大な世界、そしてその逆の視点へと鑑賞者を誘う。 

最初のシリーズでは、荒廃した環境に人間の肉体を配することで、通常はその環境に存在し得ない肉体が、周囲の環境と共存する姿を描く。シュールリアリスティックな表現を避け、肉体と環境の対話的な関係性を通じて、被写体としての肉体に新しい意味を与えている。

2つ目のシリーズでは、アーヴィング・ペン(Irving Penn)、ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)など、モノクロームのヌード表現における巨匠たちへの敬意を払いつつ、カラーライティングによる新しい表現を追求。宮原が得意とするフィルターを駆使した手法により、肉体の輪郭が曖昧になり、単なる身体ではなく、その内側から発せられるエネルギーや生命力を捉えている。

ぜひ足を運んでほしい。

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  • 谷中

「スカイ ザ バスハウス」で、嵯峨篤の個展「Synchronicity」が開催。滑らかな曲線が浮かび上がる赤い色面から、音の存在を感じさせる新作シリーズ「Sync」を発表する。

嵯峨は、過去20年にわたり、絵の具の塗布と表面の研磨を手作業で繰り返し、鏡面のような質感を生み出すという独自の技法で、絵画の新たな境地を切り開いてきた。 

展示空間で目を引くのは、普遍的でありながら感情を揺さぶる圧倒的な赤の存在だ。赤は、生と死、静と動、聖と俗といった相反する要素を内包し、古今東西で特別な意味を持つ色として重宝されてきた。

漆のように艶やかな「Sync」の色面は、嵯峨が長年の実験を経て選び抜いた4種類の赤を独自に調合し、何層にも塗り重ねては磨き上げることで生まれた。微細な層の重なりは、光を柔らかく反射しつつも深い奥行きを生み出し、非言語的な時間の記録や歴史の積層を想起させる。

目に見えないものや潜在意識の深層へと鑑賞者を誘うだろう。

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  • 京橋

「小山登美夫ギャラリー京橋」で、倉田悟の個展が開催。最新の世界観が広がる新作を披露する。

倉田の以前のモチーフは夕暮れ・海・夜・車・卵・犬・寝るなど、その多くが記憶を元に想像したものであった。新作では、描かれるものが大きく変化し、アトリエや自宅の中、日々目にする人や植物・自然・動物・昼間の光景も具体的な絵の対象として描かれている。

新作『あさをまつよる』は、アトリエで横になっている自画像だ。背景にある多肉植物は実際に育てているもので、画中画は以前の倉田自身の作品。「待つ」という行為に希望や何らかの思いもなく、ただ「待つ」という状態の特殊性と重要さを表している。

もう一点の新作『よるのきのなか』は、近所の雑木林の絵だ。当初は明るい昼間の林を歩く2人の人物を描こうとしていたが、制作しているうちに夜の林へと変化し、3人の人物が現れたという。

不穏さがありながらも、どこかユーモアがある作品世界を堪能してほしい。

もっとアート散歩をするなら……

  • アート
  • 公共のアート

無数の美術館やギャラリーが存在し、常に多様な展覧会が開かれている東京。海外の芸術愛好家にとってもアジアトップクラスの目的地だ。しかし、貴重な展示会や美術館は料金がかさんでしまうのも事実。

そんなときは、東京の街を散策してみよう。著名な芸術家による傑作が、野外の至る所で鑑賞できる。特におすすめのスポットを紹介していく。

  • トラベル

東京には魅力的なアート展示や、パブリックアートなどがある。しかし建物が密集しているため、大規模なアート施設を新たに造ることは困難だろう。希少な絵画やサイトスペシフィックなインスタレーションを観たいのであれば、千葉、神奈川、埼玉といった近隣の県へ日帰りで出かけるのもいいかもしれない。

自然の中でリラックスしてアートに触れることができる休日に訪れたいアートスポットを紹介する。

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ここではタイムアウトワールドワイドによる、ピカソやミロ、村上隆などの作品を楽しめる世界の「アートレストラン」を紹介。美術館に行く代わりに、レストランを予約してみるというのもいいかもしれない。

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