地球に優しいものは、人間にも優しい
―なぜ自身でケミカルフリーシャンプーを作ろうと考えたのですか。
僕自身、子どもの頃から頭皮の荒れに悩んでいて、美容師になってからはお客さまの髪にも、自分たちの手にもダメージを与えるプロダクトを使うことに常に疑問がありました。
お客さまからご縁があって5年前に始めた長野県の穂高養生園でのカットの経験も大きいです。養生園では森の中でカットするため、水質保全を考えた石鹸系シャンプーを使用していましたが、環境には良くても髪がきしみやすく手入れが大変。使いにくい製品は広がらないので、環境にも髪にもいいものを作りたいという思いは僕の中で強くなりました。
そんな時、現在、余[yo]の販売元となっているたかくら新産業社長の高倉健さんと出会い、シンプルだけど100%天然由来で、日常使いできるヘアケアラインを作ろうと意気投合したんです。
高倉さんはそれまでも自然派のボディーケア商品などを生産していましたが、お互い市場にある「植物成分」「オーガニック」をうたうヘアケアに満足していなかった。僕は美容師として、洗い上がりのテクスチャーなどを監修することになりました。
―余[yo]のこだわりは。
「日本人の髪と肌質に合った、まっすぐなシャンプー」。これが余[yo]への思いです。防腐剤や保存料はもちろん、水以外の油出溶媒やシリコン系ポリマーといったケミカルな成分は一切使用せず、現時点で最も身体に負担のない生成法で作られた製品の一つだと考えています。
そして、日本の美しい自然を残すこともポリシーとしています。長野の養生園で澄んだ川を前にすると、「この川にも流せるようなシャンプーを作りたい」と思うようになりました。今では養生園でも余[yo]を使用しています。地球に良いものは人間にも良く、またその逆も然りなんですよね。
―自然の中で髪を切ることにどのような意義を感じていますか。
切る側も切られる側も、森の中では五感がリセットされて、ふっと心が解放されます。心身がリセットされると、東京での活動においても周囲の雑音に流されなくなる。
美容師としては、カットやスタイリングにおいて流行などの形に縛られず、ただその人自身を「整え」、その人がその人らしくいられるスタイリングの提案が大事だと実感するようになりました。
都市生活者にこそ、日常生活から離れて心身をリセットできる場所が必要だと思います。今後、そうしたことを叶えるリトリート施設は、より注目されてくるのではないでしょうか。