1. エスケラ デ アシャンプラ、バルセロナ(スペイン)
バルセロナのアシャンプラ地区は、二つの異なるセクションに分かれている。高級店やガウディなどのモデルニスモ建築が立ち並ぶドレタ デ アシャンプラ地区にスポットライトが当たりがちだが、2020年はエスケラ デ アシャンプラ地区(Esquerra de l'Eixample)が特に輝いていた。
エスケラ デ アシャンプラの住宅地は、それぞれのブロックに中庭があるという特徴的な建築形態で構成されている。新型コロナウイルスによる厳しいロックダウンの間は、地域住人たちがこの地区ならではの特性を生かして暗い時期を乗り越えてきた。
コスチュームに身を包んで、向かいに住む人を元気づけたり、バルコニーから大規模なダンスパーティーを開催したりと、ブロックごとに団結。こういった出来事は各地で大きく報じられた。
地域の個性の一つとして挙げられるのが、地域自治で成り立つ社会的スペースの存在だ。住人が街の公共空間を使って社会的に弱い立場にある人々を支援するための支援ネットワークを設立するなどしている。同地区にある有名なレストラン センプロニアーナ(Semproniana)のエイダ・パレラーダが医療ワーカーたちに料理を提供したりと、地域一丸となってパンデミックの危機を乗り越えてきた様子は、感動的なものだった。
また、「ゲイシャンプラ」という別名を持つことでも知られている。LGBTQ+運動を支援するヴェニューやゲイクラブなどのスポットもこの地域に点在するからだ。住民や地域全体が社会運動へ意欲的に取り組む姿勢は、まさにバルセロという都市の個性であり、この街に備わった魅力の一つとも言えるだろう。
そのほかの見どころは、ジョアン ミロ公園や古い工場を再利用したFàbrica Lehmann、Espai Germanetesの都市庭園といった場所や、地元の人でにぎわう二ノット市場(Mercat del Ninot)などだが、こういった場所の情報をガイドブックで見つけることは難しい。
観光客だけでなく、地元の人々が取り仕切るエスケラ デ アシャンプラはバルセロナ本来の姿であり、未来への道しるべと言えるだろう。