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Photograph: Blue Sky Studio / Shutterstock
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2020年、世界で最もクールな40の地域

今年はコミュニティーの団結がキーになった

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翻訳:トノタイプ、Hanako Suga、Mari Hiratsuka

毎年、タイムアウトでは「世界で最もクールな40の地域(The 40 coolest neighbourhoods in the world)」を発見するため、世界中の何千人もの人々に対する調査を行っている。その地域とは、食事や娯楽、芸術や文化、雰囲気や個性などが培われるような場所だ。しかし2020年は、これまでと違う重要性を帯びてきた。

ここ数カ月間、何十億人もの人々が多くの時間を家の近くで過ごすことになった。ロックダウンと安全対策によってビジネス街やショッピング街が閑散とする一方、地元のテイクアウトレストランやショップは活気あるライフラインとなっている。この困難な時期に互いに助け合うための取り組みを進め、また「Black LivesMatter」をともに訴えるため団結した。

今までと同様に、世界で最もクールな地域の候補リストは地元の人々の意見に基づいている。年に1度行うアンケート(タイムアウトインデックス)に回答してくれた3万8000人以上に、自分たちの街のどこが好きかを教えてもらった。そしてもう一度、私たちは候補を比較検討し彼らの街の中で一番を決めるため、世界のタイムアウトの編集者とのネットワークを通じて助言を求めた。

最もクールな地域は、「人々の魅力的な交流」「革新的な食べ物や飲み物、芸術や文化」「手頃な家賃と生活コスト」「定義づけが難しいが、世界中の人々を引き付けるような話題がある」場所を基準としているのだが、今年はこれまで以上に、人やコミュニティー、企業が共通の苦境を通じて互いに助け合った地域、つまり街の魂を代表するような場所が選ばれたのだ。

注目を集める郊外の地域や、文化とともに戦う創造的な地区、そして予期せぬ文芸復興を経験したいくつかの街の中心地など、これらが2020年、世界で最もクールで親切な40の地域だ。

Instagramで#LoveLocalのハッシュタグを付けて、お気に入りの地域や地元のスポットを私たちに教えてほしい。また、街を素晴らしいものにする独立した飲食店、文化的活動の会場を祝福しサポートする、タイムアウトのLove Localキャンペーンをチェックしてみよう。

原文はこちら

1~10位

1. エスケラ デ アシャンプラ、バルセロナ(スペイン)

バルセロナのアシャンプラ地区は、二つの異なるセクションに分かれている。高級店やガウディなどのモデルニスモ建築が立ち並ぶドレタ デ アシャンプラ地区にスポットライトが当たりがちだが、2020年はエスケラ デ アシャンプラ地区(Esquerra de l'Eixample)が特に輝いていた。

エスケラ デ アシャンプラの住宅地は、それぞれのブロックに中庭があるという特徴的な建築形態で構成されている。新型コロナウイルスによる厳しいロックダウンの間は、地域住人たちがこの地区ならではの特性を生かして暗い時期を乗り越えてきた。

コスチュームに身を包んで、向かいに住む人を元気づけたり、バルコニーから大規模なダンスパーティーを開催したりと、ブロックごとに団結。こういった出来事は各地で大きく報じられた。

地域の個性の一つとして挙げられるのが、地域自治で成り立つ社会的スペースの存在だ。住人が街の公共空間を使って社会的に弱い立場にある人々を支援するための支援ネットワークを設立するなどしている。同地区にある有名なレストラン センプロニアーナ(Semproniana)のエイダ・パレラーダが医療ワーカーたちに料理を提供したりと、地域一丸となってパンデミックの危機を乗り越えてきた様子は、感動的なものだった。

また、「ゲイシャンプラ」という別名を持つことでも知られている。LGBTQ+運動を支援するヴェニューやゲイクラブなどのスポットもこの地域に点在するからだ。住民や地域全体が社会運動へ意欲的に取り組む姿勢は、まさにバルセロという都市の個性であり、この街に備わった魅力の一つとも言えるだろう。

そのほかの見どころは、ジョアン ミロ公園や古い工場を再利用したFàbrica Lehmann、Espai Germanetesの都市庭園といった場所や、地元の人でにぎわう二ノット市場(Mercat del Ninot)などだが、こういった場所の情報をガイドブックで見つけることは難しい。

観光客だけでなく、地元の人々が取り仕切るエスケラ デ アシャンプラはバルセロナ本来の姿であり、未来への道しるべと言えるだろう。

2. ダウンタウン、ロサンゼルス(アメリカ)

ロサンゼルスの街で今年話題になったニュースといえば、新しいホクストン ホテル(Hoxton hotel)のヘーゼルナッツパンケーキや、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)が入場料を値下げしたことだろう。

もしくは、コワーキングスペースのニューハウス(NeueHouse)が美しいブラッド ベリービルの中2階に移転したことや、ドーナッツ マン(Donut Man)が向かい側のグランドセントラルマーケットに2軒目の店舗をオープンし、丸ごとイチゴが乗った伝説的なドーナツの販売準備していたことなどだろうか。

それと同時に2020年は近年のロサンゼルス史上、最も苦しい年であったこともまた事実だ。 人々が一カ所に集まることが難しいこの街にとって、ダウンタウンはサポートの中心地となった。コービー・ブライアントの衝撃的な死の後、花束やキャンドル、そして人々の静かな一体感がL.A.ライブの広場を包み込んだことは記憶に新しい。

パンデミック中閉鎖されていたブロード ミュージアム(Broad museum)が草間彌生の『鏡の部屋』をリラックスできる音楽とともに無料オンライン提供し、自宅で不安な日々を過ごす人々を癒やした。ブロークン スパニッシュ(Broken Spanish)では、同レストランで働く移民労働者に食事提供のサポートに当たっていた。

ジョージ・フロイドの殺害事件を受けて、人々が人種差別や不当な暴力への抗議を始めた時、アンジェローたち(ロサンゼルス出身の住人)が声を上げた場所もここ、ダウンタウンだ。争いが全くなかったわけではないが、大通りに何千人もの人々が流れ込んだ日はロサンゼルスに住む人々がようやく団結し始めた歴史的な瞬間だっただろう。ダウンタウン、ロサンゼルスは、この孤立した一年の間に私たちを地元のコミュニティにぐっと近づけてくれた。

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3. シャムシュイポー、香港(中国)

繊維産業地帯として知られる香港で最も古い地区のひとつであるシャムシュイポー(深水ホ)。伝統的な露店商や歴史的な建造物などがこの街のイメージだったが、近年若いクリエーターたちによって活気を取り戻している。

ヴェルサーチやカルバン・クラインなど著名デザイナーが訪れる有名な生地店もこの地区に点在。また、美食家なら一度は訪れたいグルメ街としても注目を集めているのだ。

ミシュラン推薦の飲食店、カンウー トウフ ファクトリー(Kung Wo Tofu Factory)や三世代で家族経営を続ける麺屋、ラウ サム キー ヌードル(Lau Sum Kee Noodle)などの有名レストランも軒を連ねる。特に週末は香港人が食事やギャラリー散策をしに集まり、にぎわう。

3階建ての元織物店をリノベーションしたPHVLO HATCHはこの地域で生まれた人気スポット。サステナブルなコーヒーショップのカラー ブラウン(Colour Brown)や、アップサイクルやサステナビリティファッションを推進するPhvlo、社会的に恵まれない人々の支援を目的とした地元NGO、Hatchが入居している。

街のシーンの火付け役でもあるワントンミン(Wontonmeen)は、ユニークなホステル。宿泊施設としての機能だけでなく、アーティストの展示会などが行われるカルチャースポットの役割も果たしている。パンデミック中は、ミュージシャンがストリーミングをしたり、オンラインライブを行えるようミュージックスタジオもオープンした。

ホステルの一部はパンデミックの深刻な影響を受けたホームレスのための避難所として運営されている。1階にあるカフェ、ランナーズ フード カフェ(Runners Foods cafe)ではホームレス支援のため食事も提供中だ。

4. ベッドフォード スタイベサント、ニューヨーク(アメリカ)

ブルックリンの中央に位置するベッドフォード スタイベサント(通称、ベッド スタイBed-Stuy)は歴史に彩られた地区だ。緑豊かな住宅街の通りにはコミュニティーと伝統精神が脈打つ。 アパートの入り口の階段で隣人同士が会話をしていたりするアットホームな雰囲気、そして住宅街にはビクトリア朝のブラウンストーンの建物が立ち並ぶ。今年、この地域はニューヨーク最大のインキュベーターとなった。

ベッド スタイはニューヨークの黒人居住区、そしてアフリカ系アメリカ人文化の中心地として知られてきたが、今年は「Black Lives Matter」運動の中心地となった。新型コロナウイルスによってもたらされた被害の中で、弱い立場にある人々を守るため「Bed-Stuy Strong」のようなネットワークも誕生した。

一方、地元の企業が街頭へと扉を開き、公共空間と民間空間を融合させるなど新たな絆を築いているようだ。ピーチズ ホットハウス(Peaches Hothouse)は、屋外ダイニングでホットフライドチキンを提供している。古着屋のハロルド アンド モード ヴィンテージ(Harold and Maude Vintage)は、あらゆる性別に対応したカラフルな服を販売。

ビリー ホリデー シアター(Billie Holiday Theatre)では、ソーシャルディスタンスを守りながら見事な演劇作品を上演し、パンデミックの間もアートの存在を守り続けている。

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5. ヤラビル、メルボルン(オーストラリア)

シドニーには申し訳ないが、確かにメルボルンは常にオーストラリアの文化の中心地であり続けてきた。しかし、2回にわたる厳しいロックダウンにより、街の基盤となっているライブミュージックやカフェ文化、アートやレストランなど多くの魅力的な場所は休止状態にある。

一方で、メルボルンのコミュニティ精神はかつてないほど強くなっており、それを最もよく体現しているのがウエストサイド郊外のヤラビルだ。ロックダウン中に起きた二つのストーリーが、それを証明している。

一つ目のストーリーはヤラビルの地元民であるリー・スミス・モワールが始めた「ハッピーサイン」。彼女は2回目のロックダウンの間、この地域のウォーキングコースに地元の人たちを励ますための手作りメッセージを貼り始めた。同じくヤラビルに住むベル・ハディウィドジャジャも、散歩に出かける家族を少しでも楽しませようと行動した人物の一人。きらびやかな衣装を着て、通りをローラースケートで走り回る彼女の姿は話題となった。

それだけではない。比較的小さな郊外の街であるにもかかわらず、ヤラビルにはグルメやドリンクを楽しめる注目スポットもたくさんあるのだ。街のランドマークでもあるアールデコ調のサン シアター(Sun Theatre)、先住民族が経営するレストランのMabu Mabu、小さなモダン高級ダイナーのナビ(Navi)など、楽しみ方の多様性には目を見張るものがある。

美食の街であり、住宅地と娯楽のバランスが絶妙に取れた街、ヤラビルはほかに類を見ない場所と言えるだろう。

6. ヴェディング、ベルリン(ドイツ)

ノイケルン、クロイツベルク、ミッテなどのベルリン周辺の人気エリアには有名レストランやショップが立ち並んでいるが、北西部に位置するヴェディングには今ものんびりとした時間が流れている。

ヴェディングにあるのは多文化かつ多世代に渡るコミュニティ。小さな食料品店から新しくできた屋台まで、地元のローカルビジネスに忠実であることによってこの街の魅力が守り続けられている。

最近では、ゼー通り(Seestraße)にあるアジア・デリのような長年の人気店に加え、ビーガン対応のイタリアンレストランのSotto、台湾の家庭料理を提供するCozymazu、そしてErnst(ロックダウン中に店舗を改装し、ミシュランの星を獲得したメニューを提供している)などの新店も地元の人気店としての地位を急速に確立中だ。

時代とともに歴史的な変化を遂げようとしている街の一つでもあり、アフリカニッシェス フィアテル(Afrikikanisches Viertel)周辺にある通りの名前が、長年の活動家たちのキャンペーンにより、改名されることになったのだ。この地域の通りの名称は、アフリカ植民地時代の植民地主義者を象徴するものだとして問題になっていた。

もっと詳しく知りたいという人は、ミッテのブランデンブルク門からヴェディングまでの「ベルリン革命ツアー」の予約をおすすめする。ベルリンと、ヴェディングという少し地味な地域がどのようにして誕生したのか、より深く理解することができるだろう。

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7. シャンシーベイルー/カンディンルー、上海(中国)

100年前、静安区にあるこの静かな地域は上海共同租界の一部だった。現在、シャンシーベイルー(陝西北路)とカンディンルー(康定路)のエリアは洒落たカフェやバー、レストランが立ち並ぶ賑やかな街へと急速に変化している。

長屋や昔ながらのラーメン屋が立ち並ぶ中、自然派ワインバーのSOiF(金曜の夜には、肌に優しいワインとシャルキュトリーの盛り合わせを目当てに行列ができる人気店)や日系アメリカ人が経営するラッキー ダイナー(Lucky Diner)がオープン。今後数カ月間でさらに注目ヴェニューが開店する予定だ。

話題になっているのがローラースケートバーのRiink。かつて建設資材などを扱う工業市場だった、新しい複合施設ハンカン リー(hankang Li)内にオープン準備中で、同エリアに5年前にオープンしたLBTQ+コミュニティバー、ロキシー(Roxie)のオーナーティン・ティン・リャン(Ting Ting Liang)がプロデュースをしている。

そのほか、ニューヨークスタイルのピザを提供するホームスライス(Homeslice)や、ラテンアメリカ料理店アズール(Azul)の新店舗など、地元で愛されている名店も集結。

上海共同租界がなくなって久しいが、このエリアは今でも文化の交差点のような雰囲気が漂っている。

8. デニスタウン、グラスゴー(イギリス)

ネクロポリス(共同墓地)や高速道路のM8、そして鉄道レールに囲まれたデニスタウンは、グラスゴーのイーストエンドにある孤島のような街だ。ここ10年間は、近隣にあるストラスクライド大学からの学生を中心に若者が流れ込んでおり、労働者階級の街として知られてきたデニスタウンの人口構成に変化が見られるようになった。

街の特徴の一つでもあるレッドサンドストーンのアパートを、手頃な家賃で借りることができるのも魅力。ゆっくりではあるが、この地味で灰色の街にも再開発の波が押し寄せてきているようだ。

イースト コーヒー カンパニー(East Coffee Company)とMesaは、中心部にあるデュークストリートでブランチの売り上げを競い合う人気店。家庭料理とクラフトビールを提供する地元のパブ、レッドモンドズ(Redmond's)も足を運んでほしいヴェニューだ。残念ながら、アーティストが開催するマーケットギャラリーや、ドライゲート醸造所で行われるコメディーショーは長引くパンデミックの影響で閉鎖中だが、この地域に繁栄する文化的なライフスタイルが再び戻ってくる日は近いだろう。

ロックダウン中には、食料品が詰まったボックスを提供したゼロ ウェイスト マーケット(Zero Waste Market)や、持続可能な未来のために植物を植える「Alexandra Park's Food Forest」の取り組みなどよって、地域社会の連帯精神も育まれている。こぢんまりとした街、デニスタウンにはどんな街よりも強い独立精神が息づいているのだ。

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9. オー マレ、パリ(フランス)

マレ地区の北側に位置する、観光客が少ないオー マレ地区(Haut Marais)だが、ここ2、3年の間にスタイリッシュな店が大量に誕生し、注目を集めている。

地下鉄のランブトー駅、テンプル駅、サンセバスチャン・フロワサール駅に挟まれたこのエリアには、マルシェ・デ・エンファン・ルージュ(Marché des Enfants Rouges)の歴史的な城壁内にある、エンファン・デュ・マルシェ(Enfants Du Marché)のような高級レストランがあり、食通を魅了している。

また、スザンヌ タラシエーヴ(Suzanne Tarasieve)、エマニュエル ペロタン(Emmanuel Perrotin)、タッダエウス ロパック(Thaddaeus Ropac)など、世界をリードする現代アートギャラリーがあり、文化的な面でも注目が高い。手頃な価格のギフトを探しているなら、広大なコンセプトストアのメルシー(Merci)がお勧め。ブティック&カフェのジャック ジェナン(Jacques Genin)にも立ち寄ってほしい。

そして夜には……どこから手をつけたらいいのか迷ってしまう。パリの人々にとって、カクテルバーを発祥したような地区だ。リトル レッド ドア(Little Red Door)、ビズー(Bisou)、カンデラリア(Candelaria)、オー・マレ地区の曲がりくねった通りのどこかに行けば、特別な日のように感じさせてくれる、心躍るようなカクテルを見つけることができる。

10. マリックヴィル、シドニー(オーストラリア)

シドニーは「部族的」な街なのかもしれない。都市の構造的にも特定の「地域(hood)」に区切られているのが理由に挙げられる。例えば、ヘイマーケットのチャイナタウン、ライクハートのリトルイタリー、ボンダイにあるバックパッカーのたまり場、オックスフォードストリートのゲイビレッジなどだ。

一方、シドニーの郊外にあるマリックヴィルは真のメルティングポットと言えるだろう。この街が持つ多様性が、シドニーの新しいトレンド地区としての地位を確立していることは間違いない。

マリックヴィルは驚くべき二面性を持つ場所だ。それを証明するように、職人的なパン屋のトゥー チャップス(Two Chaps)と、ウェアズ ニック(Where's Nick)のスタイリッシュなソムリエが、市内で人気のベトナム料理店、マリックヴィル ポーク ロール(Marrickville Pork Roll)のようなカジュアルな店舗や、にぎやかなナイトクラブマリックヴィル ホテル(Marrickville Hotel)が混在する。

ポルトガルやベトナム、イタリア、ギリシャ人の移民の波は文化的な豊かさを加え、同時にこの街の多様なダイニングシーンを生み出しているのだ。そして植民地時代の家並みや葉っぱの茂った空き地など、こういった風景は郊外ならではの本質的な特徴を今も維持し続けている。

ジェントリフィケーションの典型的なルールとして、アーティストやクィア クリエーターたちも、かつては工業地帯だったこの街を魅力的に変えるキーを握っているが、中流階級の家族がマリックヴィルに引っ越してきても、これらのコミュニティが変わらずに住み続けているのが不思議だ。

目を見張るほど物価の高い都心部に近いにもかかわらず、マリックビルは手頃な価格で暮らせる包括的な街であり続けることができた。長く続きますように。

11~20位

11.  ベルダン、モントリオール(カナダ)

モントリオール南部のこの地区では、新型コロナウイルスによるパンデミックが発生した時には、第10回目となる最大のパーティー『Cabane Panache et Bois Rond』の開催から4日が経過していた。寒くて誰もいない通りには、このイベントを知らせる大きなバナーがぶら下がったままになっていた。しかし、地元の誇りを誇示し、故郷と呼ぶ場所を最大限に活用した。

ウェリントン・ストリートの大通りは歩行者天国になり、レストランの長い通り側のパティオや独立系小売店の夏季限定の大規模な屋外販売が快適に楽しめるようになり、たちまち人気のスポットに。

また、ヴェルダンの新しいアーバンビーチがオープンしたことで、街中の人々が熱波から逃れるための目的地となった。驚くべきことは、閉店するよりも開店する店の方が多かったことだ。この通りの非営利の経済開発組織は、地元のミュージシャンを招いてホットジャズを演奏したり、パフォーマーを招いて昼と夜にまばゆいばかりのマリオネットダンスを披露した。通りの公共駐車場の最上階には、責任を持って野外パーティーができるスペースが確保されていたのだ。

マスクや手指消毒器、そして2メートル離れた場所にいる人々がいなければ、そもそもパンデミックが起きているとは想像もできないだろう。10月には新たな封鎖規制が行われたにもかかわらず、不確実性に直面しながらも地元の味、景色、音を叫び続けるヴェルダンの姿は、モントリオールや世界中の都市がいかにしてこの状況を乗り切ることができるか、を証明している。

12. カラマジャ、タリン(エストニア)

カラマジャは、町の中でも好奇心をそそる場所だ。かわいらしい木造の家とソビエト後の産業が混在する港町である。テリスキヴィ・クリエーティブ・シティにあるレストランF-Hooneでは、おいしくて、リーズナブルにモダンなバルト料理を提供し、Sveta Baarではオルタナティブな音楽とともに酒が楽しめる。

エストニアはハイテク先進国として知られており、かつては集落のようだったこの町の一角をデジタル遊牧民が占拠したのだが、特にPalo Altoのような古い工場の建物を利用したコワーキングスペースが人気。春には、Garage48と呼ばれる企業が「Hack the Crisis」と呼ばれるオンラインイベントを立ち上げ、近隣地域とその周辺地域の800人以上のテックセクターの労働者を集め、国がパンデミックに対処するのを支援した。

相対的に言えば、エストニアではまだ感染者がほとんどおらず、それはこの若々しく冷ややかな地域のおかげでもある。

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13. 漢南洞、ソウル(韓国)

大使館や現代美術館、高級ファッション店が立ち並ぶ漢南洞は、一見華やかな街のように見える。しかし、ソウルの漢江津(ハンガンジン)駅と漢南(ハンナム)駅の間の丘陵地に広がるこの地区を深く掘り下げてみると、赤レンガの住宅、居心地の良いカフェ、植物や花の店などが軒を連ねている。

このエリアは、2015年に実験的アートセンターのDミュージアムと、レコード・アーカイブ、ヒュンダイ・カード・ミュージック・ライブラリーの両方がオープンしたことで、アーティなタイプの人たちが集まり始めた。

しかし、ここ1年ほどで本格的に発展したのは、BTSのRMやG-DragonなどのK-POPタレントが引っ越してきたおかげでもある。漢南洞を満喫したいなら、スティルブックスでリーズナブルな価格のコレクションを見て、セメゲで鶏肉の炭火焼きを食べ、プッシーフットサルーンで優雅な飛行機をテーマにしたカクテルを注文してみては。

14. ボンフィン、ポルト(ポルトガル)

多くの地元の人は、ポルトの真のアイデンティティーが、街の中心部では失われつつあると感じている。ボンフィムでは、その精神が今でも生き残る場所だ。この地区には、小さなカフェやショップが並び、市内でも有数の伝統的なレストラン(A Cozinha do Manel、Rogério do Redondo、Casa Nanda)だけでなく、Euskalduna StudioやPedro Limãoのような最先端のレストランもある。

ポルト大学の芸術学部の存在と、Senhora PresidentaやLehmann + Silvaのようなギャラリーの存在は、この街を芸術で彩っている。古いショッピングセンターであるCCストップでは、ジャズからヘビーメタルまで、ミュージシャンのためのスタジオやリハーサル室に生まれ変わった。

ボンフィムは歩行者天国がますます増えつつあるが、伝統的な建築物が立ち並ぶ通りや、ドウロ川を見下ろすノヴァ・シントラのウォーターガーデンなど、徒歩での散策はこれまで以上に魅力的である。

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15. ゴーストタウン、オークランド(アメリカ)

マッカーサー駅から徒歩圏内にあるこの小さな地区は、パンキッシュな魅力を今でも体現している場所だ。

ゴーストタウンの名前の由来については誰もが納得していないが、この街はますます活気づいている。地元の人たちは、エリーズ マイル ハイ クラブ(Eli’s Mile High Club)で安いビールとビリヤードを楽しみながら交流したり、ステイゴールド デリ(Stay Gold Deli)で自家燻製のブリスケットを食べたり、国内最古の独立系黒人書店であるマーカス ブックストア(Marcus BookStores)で新刊を手に取ったりしている。

最近オープンしたばかりのBlk ガールズ グリーン ハウス(Blk Girls Green House)は、ブラックメイドのホームグッズを販売するアウトレット。住宅街には、アートギャラリーや都会の農場が点在しており、次のマーク・ザッカーバーグに出くわすよりも、スケートボードに乗ったパンクや、長年住んでいる住人が裏庭での誕生日パーティーに誘ってくれる(実話です!)方がはるかに可能性が高いフレンドリーな街だ。

16. チュラサミヤン、バンコク(タイ)

チュラロンコン大学(Chulalalongkorn University)の周辺は、かつては朽ち果て、半ば忘れ去られていたエリアで、古い食料品店や屋台、ボロボロの自動車部品店が軒を連ねていた。今では、大学の努力のおかげで、活気に満ちたギャラリーや飲食店に改装され、建築家が設計した新しい大規模な公共公園もある。

古いストリートフードの店がバン・タッド・トン(Ban Tad Thong)通りに移設され、新しい安くて手軽な食事をするときの目的地となっている。24時間営業の本屋、インディーズ映画専門の映画館、公共の屋上庭園を備えた斬新な新しいモール、サムヤン・ミットタウン(Samyan Mitrtown)には、地元のアートやデザインの振興に力を入れているホテル、トリプルYが併設されている。

中国人の古参者や大学生は、今でも安物を求めて通りを徘徊しているが、今ではアート愛好家や映画好き、グルメな人たちも訪れるエリアになった。新型コロナウイルスにより、上昇中の同エリアに大きな打撃を与えたが、地区のギャラリーが「パトゥムワン・アート・ルート(Pathumwan Art Routes)」の旗の下、展覧会や活動のために団結し、コミュニティはアートによって絆を深めている。

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17.  アルバラード、リスボン(ポルトガル)

リスボンの中心部で長年そこに住んでいる人を見つけるのは難しくなってきているが、アルヴァラードに行けば、生活の息吹を感じることができる。

この地域のウェルカムな雰囲気は、60年以上の歴史を持つ良い香りの紅茶とコーヒーの専門店ア マリアジーニャ(A Mariazinha)や、伝統的なメルカド デ アルバラード(Mercado de Alvalade)市場でも感じられる。また、レストラン、バー、コワーキングスペースのザ ウェーブ ファクトリー(The Wave Factory)では、屋内でサーフィンができるのもユニークだ。

1980年代にはリスボンのロックシーンの中心地だったアルバラードでは、その名残は今でもある。ポピュラー アルバラード(Popular Alvalade)、RCAクラブ(the RCA Club)、ゴシックのたまり場ノワールクラビング(Noir Clubbing)などのヴェニューで聞くことができる。

18. ノールド、アムステルダム(オランダ)

アムステルダム ノールド(Amsterdam-Noord)の活気ある地区では、造船所が文化的な遊び場となっており、若い家族連れ、アーティスト、醸造家、起業家などを招き入れる広いスペースが広がっている。

ストリートシーンの中心地であり、ヨーロッパ最大のフリーマーケットアイ・ハーレン蚤の市(IJ-Hallen)が毎月開催されるNDSMワーフ(NDSM Wharf)に向かうには、海外からの観光客とは反対方向にあるセントラル駅(Centraal Station)から無料のフェリーに乗ろう。

川の対岸には、映画館のようなウォーターフロントのレストランFC Hyena(現在はドライブインシアターを併設)や、ハーフパイプから一息ついて食事と自然派ワインを楽しめるスケートカフェ(SkateCafe)、都会のビーチ、プレック(Pllek)があり賑わっている。

最も象徴的な近代的な建物である角張ったアイ フィルムミュージアム(Eye Filmmuseum)は、木造家屋が立ち並ぶ伝統的な村から自転車ですぐの場所。また、アドレナリンをたっぷりと浴びたいなら、A'DAMタワーの頂上にあるヨーロッパで最も高いブランコに挑戦してみてはどうだろう。

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19. セントロ、サンパウロ(ブラジル)

過去10年間に、サンパウロのセントロは、避けて通れないような荒れた地区から、南米最大の都市の中で最もクールな一角になった。このダウンタウンエリアにある退廃的な1960年代の建物は、今では最先端の文化的なスペースで埋め尽くされている。

ジェファーソン・ルエダの受賞歴のあるポークサンドウィッチバーのア カサ ド ポルコ(A Casa do Porco)をはじめ、多くの一流レストランやバーがこの地域に根を下ろしたことで、この地域は生まれ変わった。店員が女性だらけのフェル(Fel)は、赤道を挟んだこちら側では最も上品なカクテルレストランかもしれないし、24時間営業のエスタダンダイナー(Estadão diner)は、夜に欠かせないレストランだ。

今年は新型コロナウイルスによって街が大打撃を受けたが、セントロ(Centro)は、近所の歩道がポップな屋外ダイニングスペースに変身するなど、正常な状態への回復に向けて舵(かじ)を切っている。

20. ホレショヴィツェ、プラハ(チェコ)

プラハの歴史的中心部から少し離れたホレショヴィツェ地区には、バーやカフェ、文化施設、そして街で最も愛されている緑のスペースがある(その中にはビアガーデンも)。アーティストや若い家族連れ、サイバーパンクの集団など、さまざまな人が集うこの地区の最近の復活は、進歩的な地方政府の大きな支援と、チェコの首都の公式な「アート地区」としての再ブランド化の恩恵だ。

近隣の中心地であるレトナ公園には、プラハで最も絵になるビアガーデンがあり、夏には巨大な文化的複合施設でにぎわう。広さ3,000平方メートルの印象的な現代アートギャラリー、DOXも見逃さないように。さらに、ビットコインのみでの支払いが可能な世界初のカフェ、パラレルニ ポリス(Paralelni Polis)でコーヒーを飲んでみてはいかがだろう。

21〜30位

21. ラヴァピエス、マドリード(スペイン)

マドリード中心部に位置するラヴァピエスは、数年前にもこのリストに選ばれたが、今でも街の人々に愛されているようだ。最近では、ローカルコミュニティーで新たな連帯の精神が見られる。今のような困難な時期に、イミグラント・セネガレセス・デ・エスパーニャ(Inmigrantes Senegaleses de España)やヴァリエンテ・バングラ(Valiente Bangla)などの移民援助団体が、移民であろうとなかろうと、必要としている人々に献身的に援助を提供し続けているのだ。

第2のロックダウンが迫ろうとしているにもかかわらず、ラヴァピエスは、収容人数の制限、ソーシャルディスタンスの確保、マスク着用の義務化などの努力を重ね、正常に戻ろうとしている。モダンなホラコーヒー(Hola Coffee)には、再びフィルターコーヒーの香りが満ち、メロズ(Melo’s)では有名なサパティージャサンドイッチが作られ、パヴォン・カミカゼ劇場(Pavón Kamikaze Theatre )では幕が開いた。

困難な時期を切り抜けられると感じさせてくれる生き生きとした文化があり、隣人が互いを助け合うために最善を尽くしている場所であるラヴァピエスは、マドリードのニューノーマルを最もよく表しているエリアだ。

22.  オペビ、ラゴス(ナイジェリア)

ナイジェリア最大の都市、ラゴスはそもそもソーシャルディスタンスを保つことが難しい街だが、その中で本土側のイケジャ地区にあるオペビは、ラゴス島の喧騒(けんそう)から離れているため、スローで穏やか。このエリアのフレンドリーな人たち、大きな家やアパート、街角に建つ果物や野菜の屋台などは、訪れる者をリラックスした気分にさせてくれる。

ロックダウンの間、オペビやその周辺地域は静かだった。外に出て動き回る人はほとんどなく、通りの車もない。街の至る所で毎日見かける商売人たちも全く見かけなかった。しかし、ラゴスの経済活動が再開した今、オペビもまた活気に満ちている。しゃれているバレル・ラウンジ(Barrel Lounge)では、ヤム芋フライや新鮮な魚、ヤギ肉などをつまみながらカクテルを飲むこともできるし、ママ・キャス(Mama Cass)では、2人分10ドル(約1,050円)以下という安さで、食欲をそそるローカルフードを堪能できる。

つまりオペビの魅力は、フレンドリーで安価、巨大で賑やかなラゴスの中で静けさを感じられる、ということに尽きるだろう。

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23. ナラヴァルテ、メキシコシティ(メキシコ)

メキシコシティを歩いていて、焼き立てのパン、挽きたてのコーヒー、クラフトビールのホップの香りを感じたら、そこはナラヴァルテに違いない。メキシコシティで最も住みやすい場所の一つとして注目されているエリアだ。パン屋のコストラ(Costra)、コーヒーショップのアルマネグラ(Almanegra)、ビールパブのラ・ペルディダ(La Perdida)は、そうした香りに誘われるがままに訪れて間違いない。さらに、このエリアは、タコスハンターのメッカとしても知られている。

しかし、この地域は単に食通に人気なだけではない。もし、善意、同情、連帯に匂いがあったら、間違いなく、それらはナラヴァルテを特徴付ける「香り」だと言えるだろう。このエリアの豊かなコミュニティー精神を感じ取れたのは、地震があった2017年。2020年のロックダウンでも、同様だった。バーベキューの人気店であるピンチェ・グリンゴ( Pinche Gringo)は、#StayAtPincheHomeと題して、DJプレイ、ヨガセッション、ドラァグクイーンによるビンゴなどの催しをFacebook上でライブ配信し、地元の人たちを盛り上げた。同じ頃、地元のタップルーム、ホップ・ザ・ビア・エクスペリエンス2(Hop The Beer Experience 2)では、メキシコシティにある仲間のブルワリーたちが団結。医療関連の現場で働く人たちへ、出来たてのビールを届けていた。

一方、近くの病院では、片目が不自由なパグ犬のハーリーが、防護具を付けて病院の救急隊員らを励ましていた。その様子はネット上で話題となり、病院も有名に。そう、ナラヴァルテの「仲間意識」は動物界にまで及んでいるのだ。

24. アップタウン、シカゴ(アメリカ)

シカゴ北部、アップタウンのブロードウェイとローレンス・アベニューの交差点を歩くと、1920年代に建てられた劇場の古びたファサードや、かつてアル・カポネがよく利用していたジャズクラブのネオンサインを目にする。近くのクリフトン・アベニューの歩道を覆っているのは、18人の地元アーティストによる「ブラック・ライヴズ・マター」をテーマにした路上画だ。こうした風景は、このエリアの歴史を時系列に要約したものと言えるだろう。

「忍耐」は、アップタウンの歴史を特徴付けるテーマだ。このエリアは今、ロックダウン後の活気をゆっくりと取り戻しつつある。カントリーミュージックバーのキャロルズ・パブ(Carol’s Pub)やドラァグクラブのバトン・ショー・ラウンジ(Baton Show Lounge)では、ライブパフォーマンスが再開。エチオピア料理店のデメラ(Demera)や中華風バーベキュー料理店のサン・ワウ(Sun Wah)も営業を再開した。地元の人たちだけでなく、離れた場所に住むシカゴ市民の空腹も満たしている。

このエリアには、活気あふれるアーガイル・ストリートのフードシーンや息を飲むような湖畔の景色に加えて、文化の多様性とはっきりと感じられる歴史の名残がある。そのことが、アップタウンがシカゴの過去、そして、未来にとって不可欠な存在であると感じさせてくれる。

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25. リトル・ファイブ・ポインツ、アトランタ(アメリカ)

活気に満ちて、親しみを感じるコミュニティーがあるリトル・ファイブ・ポインツは、アトランタの人々に愛されている。エキセントリックなタトゥーパーラーや賑やかなダイブバーなどの魅力的な店と、クリエーターや自由に生きる人たちの暮らしが密接していて、雰囲気はどこかアーティスティック。アトランタのダウンタウンで見かけるような非常識な料金を取る駐車場もなく、車の交通量も頭を痛めるほどではない。地下鉄駅やバス停までは歩いて行くことも可能。シティライフのすべての利点がそろっているのだ。

L5P(このエリアの略称)では、風変わりな音楽ヴェニューとファッション系ショップが混在している。例えば、ユークリッド・アベニューを歩いていると、ストリートウエアを着た女子大生が、エッジの効いたブティックであるウィッシュATL(Wish ATL) まで、Yeezyのスニーカーを買いに行くところを見かけるだろう。すぐ近くのライブハウス、アイル5(Aisle 5)の外で、その日に初めてステージに立つ話題のバンドがタバコを吹かしているのも珍しくない。アーデンズ・ガーデン(Arden’s Garden)でスムージーを手にしているヒッピー風のカップルは、きっとスリフトショップでお気に入りのものを見つけたあとだろう。ムーズ・ミュージック(Moods Music)という黒人店主が経営するレコードショップをのぞくと、地元のラッパーがミュージックビデオを撮影していることもある。

このエリアの人々は、皆、個性豊かだが、コミュニティーの結びつきも強い。そのことを最も感じられるのが、ユークリッド・アベニューとモレランド・アベニューが交わる所にある五差路で、ここでは、バー巡りイベント、アート作品セール、歩道での即興セッションなどが頻繁に行われている。

26. ウィンウッド、マイアミ(アメリカ)

ウィンウッドは、世界的に評価されている屋外美術館、ウィンウッド・ウォールズ(Wynwood Walls)の10周年を祝って2019年を締めくくった。そして、2020年を『第54回スーパーボウル』のためのクールなパーティーやコンサートでスタート。その後、ロックダウンが起きたのだ。賑やかだったこの辺りは静かになり、アートギャラリーやウィンウッド・ウォールズは営業停止に。観光客は来なくなった。しばらくの間、マイアミのアート地区であるウィンウッドで起こっていた唯一のエキサイティングなことといえば、NWセカンド・アベニューで行われたブラック・ライヴズ・マターを訴えるデモ行進ぐらいだった。

街の外からの人の流入がなく、それを支える地元コミュニティーの結束が弱まっていた頃、ウィンウッドのビジネスオーナーたちは、地域の文化的な使命を維持するために立ち上がった。このエリアで大きなブロックパーティーやフェスを主催してきたSWARMが、2020年6月、地域を連携することを目的としたラジオ局を開設。番組に登場したのは、これまでのイベントに出演してきたDJたちだ。クラブで称賛を浴びていた彼らのプレイが、数々のホームパーティーで再びグルーブを作り出したのだ。

ほぼ同時期、ウィンウッド・ビジネス・インプルーブメント・ディストリクトは、飲食店による路上駐車スペースの屋外席への転換を支援。評価が高く、タイムアウトイートリストの長年にわたる常連でもある、キュー(KYU)をはじめとする店に新たな屋外席が導入された。 NWフィフス・アベニューにあるタイガーキングを描いた愉快な壁画から、BLMに敬意を表した考えさせられるグラフィティ、ミュージアム・グラフィティ(Museum of Graffiti)での時事的な気候変動の影響を取り上げた展示など、アートもまた、あらゆる場所で見られるようになった。世界的危機の中、ローカルコミュニティーでは、創造性と革新性が解毒剤の役割を果たしているようだ。

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27. フィブスバラ、ダブリン(アイルランド)

2019年は、「クール」の称号を隣接するストーニーバターに奪われてしまったが、2020年、再びフィブスバラが注目を集めることになった。もちろん、良い理由でだ。パンデミックはダブリン中心部の一部を空洞化させてしまったが、同市北側にあるこのエリアは奇妙な時代を見事に乗り越えている。

昔ながらの魅力と現代的な活気が融合したフィブスボロは、人々の生活、活気を感じられる場所だ。住宅の近くに、コーヒーショップ、レストラン、パブなどがたくさん軒を連ねているので、地元の人たちが日々の選択肢に困ることはない。例えば、地元で人気のカフェ、バンバン(Bang Bang)はブランチバーガーがおいしく、政治ネタをフィーチャーしたトートバッグも手に入る。スポーツバー、ザ・バックページ(The Back Page)では、アイルランドの偉大なアスリートにちなんだピザを提供。ビクトリア朝時代の雰囲気が残る飲み屋、ザ・ハット(The Hut)では、スタッフはたくさんの「プレーン(ギネス)」を運んでいる。

この地域をさらに際立たせているのは、ボヘミアンFCの壁画、ビリヤード場、パンクバンド、巨大なブルータリズム建築であるフィブスボロ・ショッピング・センター(Phibsboro Shopping Centre)といった、このエリアの典型的なローカルカルチャーだ。もし、血の通った本当のダブリンを探しているのであれば、街の中でも、素晴らしくのんびりとしていて飾り気のない、このエリアを訪れてみてはどうだろうか。

28. ネーアボロ、コペンハーゲン(デンマーク)

コペンハーゲンの有名なザ・レイクスのすぐ北側にある多民族のコミュニティーであるネーアボロは、まるで「眠らない街」だ。例えば、週末は、蚤の市にはじまり、繁盛している中東料理やアフリカ料理で食事を楽しみ、飾り気のない安酒場で心ゆくまで飲むことができる。

美食の街であるコペンハーゲンの中でもネーアボロは、地元の人が食べに来たり、飲んだりしている場所。ポンペット(Pompette)のような自然派ワインのバーは、環境への意識が高く、ワインの楽しみ方に革命をもたらした。寿司ならセルフィッシュ(Selfish)、トップレベルのエチオピア料理ならメイド(Ma'ed)、ランニーズ(Ranee's)では風味豊かな魚介類を使った北タイ料理が人気だ。また、フードロスをなくすために活動しているオーガニック野菜の宅配サービス、グリム(Grim、みにくいという意味)は、ロックダウンの間に評価が高まった。

いつもの年であれば、バルダ・プラス(Balders Plads)のような広場は、毎年恒例のダンスミュージックイベント『ディストーション』やジャズフェスティバルの会場になり、プライド・パレードや抗議デモも節度を守って行われる。朝のひとときを過ごすには、おとぎ話の王様、アンデルセンが眠るアシステンス教会墓地へ行くのがおすすめ。彼もきっと今、この本当に不思議な街並みに心を奪われているだろう。

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29. ブギス(シンガポール)

シンガポールが高層アパートが立ち並ぶ近代都市になる前、人々はカンポンと呼ばれる小さな村に住み、一緒に食事をシェアしたり、一つのテレビの周りに集まったり、お互いの子どもたちの見守ったりしていた。玄関ドアには鍵を掛けない、結び付きの強いコミュニティーで、彼らは共に、贅沢をしないで毎日を生き抜いていたのだ。もはやこうした村は、都市国家になったシンガポールでは一般的な光景ではないが、ブギスというエリアには「カンポンの精神」は残っている。

ハジ・レーン(名前は1800年代にこの場所に最初に定住したイスラム教徒移民に由来)沿いにあるグッドラック・ビアハウス(Good Luck Beer)は、飲食店の仲間たちに助けの手を差し伸べている。シンガポールでは、「サーキット・ブレーカー」と呼ばれるロックダウンの最中、同店は、老舗ホーカー(屋台)であるブランコ・コート・プローン・ミー(Blanco Court Prawn Mee)などの近隣の店に、自店のオンラインデリバリーサービスを解放した。この連携がなければ、コロナ禍で客足が減っていたこのホーカーのような店は息絶えていたかもしれない。2019年にオープンしたばかりのシンガポール初の屋外アートギャラリー、グラム・ギャラリーは、周辺に点在するほかのストリート系や独立系のアートギャラリーをタイムリーに補完している。

アートは、料理の皿の上やグラスの中でも感じることができる。このエリアには、多くのナシ・パダン屋台があり、アトラス(Atlas)では、そのアールデコ風の空間と同じぐらいに息を飲む素晴らしさのカクテルが楽しめるのだ。ブギスのような場所は、シンガポールの良さが高層ビルだけはないことを証明している。

30. 公館、台北(台湾)

2020年は、世界の多く場所で都市生活が止まった奇妙な年だが、公館(コングァン)の学生街は、今までで最も活気を帯びている。台湾は、政府の迅速な行動と一般市民が「ステイホーム」やマスク着用に協力的だったことが功を奏し、早い段階での新型コロナウイルスの感染状況把握と封じ込めに成功。ロックダウンをする必要がなかったのだ。

当然のことながら、屋外で楽しめることに注目が集まった最近6カ月間、公館は人気のエリアだった。東には日本統治時代の建物が残る、緑豊かな国立台湾大学のキャンパス。西には川沿いの公園で、サイクリングや犬の散歩を楽しむ人、バーのテラス席で飲んでる人たちなどので賑わっている。ちなみに、ザ・プーティン&スナック・シャック(The Poutinerie & Snack Shack)は、最高のキャプテンモーガンコークを飲むことができる。

タピオカティーが飲みたければ、モーチャオ(Mo Chao)へ。小さい店だが行列ができるほど人気。大勢での食事なら、メインストリートから少し入ったところにある火鍋店やタイ料理店がおすすめだ。もし選ぶのに苦労しているのなら、紫の看板が目印のサラタイ(Sara Thai)にするといいだろう。台北で一番おいしいココナッツカレーが食べられる。また、日沈後、地下鉄の公館駅周辺に立つ、賑やかな夜市へ行くのを忘れずに。

31〜40位

31. ソーホー、ロンドン(イギリス)

ロンドン中心部では、再びソーホーの通りにテーブルがあふれ出ている。突然昔のような光景が復活した理由は? パンデミックが悲惨な運命をもたらしたからだ。

ロンドンでソーホーほど苦しんだ所はないかもしれない。かつてはいかがわしい店が並び、最近ではメディア企業やレコードショップがあることで知られていたこのエリアは、ロックダウンから2カ月が過ぎた頃、活気を失い、消滅の危機に瀕していた。しかし、外にテーブルが置かれ始めるのと時期を同じくして、ロンドン中心部にいる華やかで、根性のある人たちの自由奔放なマインドも再び感じられるようになった。

今のソーホーには赤線地区で見られるようなネオンサインは見られない。全盛期はとうの昔で、もちろん、フランシス・ベーコンのような人物が、長いランチの後ふらついていることもない。2020年のソーホーでは、この街を欠かせない場所にしているレストラン、バー、ショップ、そして個性的な人たちに対して、ロンドン市民が「大きな愛」を感じていることが垣間見れた。オールド・コンプトン・ストリートのゲイバーは、屋外席で営業再開。老舗パブ、ザ・フレンチ・ハウス(The French House)には、これからもハーフパイントのビールを注ぎ続けられるようにと、地元の人や観光客からは8万ポンド(約1,100万円)の支援金が集まった。伝説的なジャズクラブ、ロニースコッツ(Ronnie Scott’s)も、(ソーシャルディスタンスを確保しながら)公演を再開した。

ソーホーで生き抜くためには、法外なほどの資金が必要だ。しかし、ロンドンにおいては、ソーホーがなければ、「クールな街」の概念さえ持つことが難しかっただろう。このリストにあるほかの都市でも同じようなことが言えるはずだ。移民とその影響が積み重なり今に至るこのエリアは常に、ほかとは違う存在だった。ソーホーの魅力は、今、再発見されるべきだろう。

32. ビンタン、ホーチミン(ベトナム)

魅力的で、地元を感じられる場所でありながら、便利な街の中心地に位置しているビンタンは、熱狂的なホーチミン市の中でもひときわ目立つ場所だ。すぐ迷路のように入り組んだ路地に迷い込んでしまう。このエリアには、熱狂的な雰囲気があり、地元の人はフレンドリーで、観光客が少ない場所だからだ。

1区との境目にある賑やかな通り、パン・バン・ハン(Phan Van Han)には、ストリートフードの屋台とスシ・ニー(SuShi Nhí)、キャプテン・フック(Captain Phook)、ヒア・アンド・ナウ(Here and Now)などの高級店が軒を連ねている。コーヒーカルチャーにおいても同様で、昔ながらの「ストリートコーヒー」を提供する店がある一方、カフェ・タルティーン(Café Tartine)、カフェ・コー(Café Cơ)、ニャー・サイゴン(Nhà Saigon)といったハイエンドな店もある。

ナイトアウトであれば、ホーチミンで最も高いビル、ランドマーク81にある75階にあるカフェバー、ブラック・ラウンジ(Blank Lounge.)をはじめ、バーディー(Birdy)やファンビッチャンの一角にあるノン・チャイ・コアイ(Nong Trai Khoai)、雰囲気のあるカクテルバーのコー(Cọ)がおすすめ。次の日の朝は、ヴァン・タン公園へ行けば緑のオアシスが迎えてくれる。

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33. メルヴィル、ヨハネスブルグ(南アフリカ)

ヨハネスブルグ市中心部のすぐ北に位置するメルヴィルは、陽気な雰囲気で、住民の誰もがお互いを知っているようなエリアだ。この住宅地エリアにある木が並ぶメインストリートには、コーヒーショップやレストラン、バーが軒を連ねている。家族経営の店の前には骨董品が並び、街角ではアーティストが作品を売り歩く。このエリアの商業の中心地である27ボックシーズ(27 Boxes)は、ヨハネスブルグ全域の中でも最もカジュアルなショッピングが楽しめる場所だろう。ここはかつては、ファーン・スミット・パークだったが、今ではカラフルな輸送用コンテナで作られた店舗スペースに、51店のショップが入っている。

ロックダウン後、近所の名店であり我々の個人的なお気に入りであるサイ・サイ・サイ(Xai Xai Xai)とヌーノズ(Nuno's)が合併し、ポルトガル料理とモザンビーク料理にインスパイアされたユニークな料理を提供するようになった。もちろん、どのメニューもとてもおいしい。この街で一番のコーヒーを提供しているコウヒーショップ(Kwoffee Shop)もおすすめだ。

しかし、実にフレンドリーで、コミュニティー意識の高いこの地域をクリアに感じたいのであれば、ビバファンデーション(Viva Foundation)による、メルヴィル・フード・パーセル・プログラムのことを知るのが早いだろう。メルヴィルの住民であるガーディナー夫妻が始めたこの素晴らしい取り組みでは、4カ月もの 「厳重なロックダウン」 の間、地元のボランティアが貧しい人々に30万食分の食事を配っていたのだ。これがまさに、社会的で連帯を大事にするメルヴィルの人たちの精神だ。もしあなたがここに住んでいたなら、きっとはまってしまうだろう。

34. 日本橋兜町、東京(日本)

日本橋はこれまで脚光を浴びたことがないわけではない。20世紀半ばまでは、にぎやかな商業の中心であり、東京の文化の中心だった。数十年にわたる衰退の後、今の日本橋は、伝統と近代性が融合した日本らしい街として復活を遂げている。

このエリアの路地の迷路の中には、重厚なネオバロック様式の建物と質素な伝統商店が点在。幾何学的な黒い外観のたたずまいをした伝統の和紙店、長年親しまれてきたうなぎ屋の店舗を改装したクラフトビールバー、デパートの陰で静かに鎮座する1200年ほどの歴史を誇る神社などがある。毎年夏には東京で最も活気ある祭りの一つである日本橋京橋祭りが行われ、中央通りをきらびやかな衣装をまとったダンサーが練り歩くのを目撃できるかもしれない。

しかし、今の日本橋における再開発の中心は兜町エリアにある。かつて 「東京のウォール街」 として知られたこの地域では、再活性化プロジェクトが始まり、刺激と新鮮な風が吹きこまれている。日本最初の銀行の本店だった建物には、新しいレストラン、カフェ、バーも入るブティックホテル、K5がオープンした。日本橋兜町は、このような新しいエネルギーに満ちているとはいえ、まだまだのんびりとした雰囲気を保っている。これ見よがしにならずに格好良くなるのはなかなか難しいが、兜町は(日本橋全体も含めて)それを難なくこなしている。

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35. ポルタ・ヴェネツィア、ミラノ(イタリア)

ミラノはヨーロッパの中で、新型コロナウイルスの影響を早く、そして最大に受けた都市だろう。しかし、今、ポルタ・ヴェネツィアで見られるポスト禍で起きたことといえば、新たに合法化された飲食店の屋外席ぐらいかもしれない。夕焼け時から食前酒を飲む人たちで賑わうこのエリアは、ミラノのLGBTQ+地区になっていて、地下鉄駅では巨大な虹が出る人を迎える。ここ数カ月間、以前のような派手な盛り上がりも戻ってきている。

3ユーロ(約370円)でスプリッツ(ワインのカクテル)で楽しむなら、家族経営のタバコショップ兼ビリヤードバーであるピッキオ(Picchio)しかない。流行りもの好きのミラノ人たちが、トラットリア・サッビオネーダ・ダ・ロモロ(Trattoria Sabbioneda Da Romolo)でミートボールパスタ、もしくはアルハンブラ(Alhambra)のベジタリアンメニューを食べた後に向かうのが、バー・バッソ(Bar Basso)だ。ここの魅力は、60年代テイストの内装と、現オーナーのマウリツィオの父親が考案し有名になった、ネグローニ・ズバリアート。

ミラノを代表するショッピング街はすぐ近くだが、ポルタ・ヴェネツィアでは、車のクラクションより、人の笑い声や自転車のベルの方がよく聞こえる。地元の人がこの辺りに探しに来るのは古いもの。アンティークならセコンダ・ヴィータ(Seconda Vita)、ビンテージ古着ならビヴィオ(Bivio)がおすすめ。買い物の合間のティータイムには、ラ・テイラ・エクレティカ(La Teiera Eclettica)、アイスタイムにはアウト・オブ・ザ・ボックス(Out-of-the-Box)で過ごすといいだろう。

36. タマン・パラマウント、クアラルンプール(マレーシア)

ダマンサラやタマン・トゥン・ドール・イスマイールといったクアラルンプールのセレブな地域は、高層ビルや超スタイリッシュなスポットで人々を魅了しようと、懸命に努力している。しかし、クアラルンプールでもっとクールなのは、タマン・パラマウントという小さなエリア。趣のあるこの場所は、都会の喧騒から離れ、リラックスしたい地元の人に人気だ。

都心から遠く離れているにもかかわらず、多くの人がノスタルジーを求め、このエリアへ足を運んでいる。四角い形をした大きなランドマークは、最近までジャイアントというスーパーマーケットが入って、かつては人々に愛された映画館だった建物だ。何十年も続いている人気のレストランや屋台では、食べるべきマレーシア料理である、ナシレマッやサラワクラクサが味わえる。また、家族経営の小さな雑貨屋には、子どもの頃に親しんだお菓子や乾物、生活用品などが並び、心を和ませてくれる。

目の肥えた若いクリエーティブ系の人たちや起業家の支持を得ているのが、地元の通りの一つであるジャラン20/13。ここ数年、地元のデザイナーやメーカーによる 「ランダムで美しいもの」 を集めたコンセプトショップであるイライカ(Ilaika)、クラフトビールバーのモンスター・アンド・ビア(Monster and Beer)、フィルム現像関連のサーボスをワンストップで提供するゾンティガ(Zontiga)などのニューオープンが相次いでいる。この辺りには、展示やマーケットイベントも開催するギャラリースペース、もちろんカフェ、レストランも点在している。

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37. オールストン、ボストン(アメリカ)

アメリカから海外旅行へほとんど行けなくなってしまった今、ボストンの人々は、活気のあるオールストンに行くだけで、世界を感じられるのは幸運なことかもしれない。このエリアは、学生や新卒者の人口が多く、これまでも若々しくて活気に満ちていたが、近年では市外から引っ越してくる移住者が増加。この動きは、地域に新しい風を吹き込んでいて、さらには、移民の人たちが経営する飲食店も毎年のようにオープンしている。

チープイートの天国となったこのエリアには、あなたの食べたいものが何かしらあるだろう。例えば、中東料理では、ガーリック・ン・レモンズ(Garlic ’n Lemons)、韓国料理ではコリアノス(Coreanos)がおすすめ。ヒップな場所が良ければロン・スター・タコ・バー(Lone Star Taco Bar)、留学生と冷たいビールを飲みながら鍋をつつきたければしゃぶ禅(Shabu-Zen)もいいだろう。

一つ確かなことは、この古き良き、途絶えることのないオールストンには、この場所ならではのものもが常にあるということだ。シルエットラウンジ(Silhouette Lounge)、モデルカフェ(Model Café)、カルロズ・クチーナ・イタリアーナ(Carlo’s Cucina Italiana )など、長年愛されてきた店に立ち寄って見るとこのエリアの魅力が分かるだろう。

38.  バンドラ・ウェスト、ムンバイ(インド)

2020年の大半、ムンバイでは全ての不要の移動が禁止となった。いつも賑やかで交通量が減ることのないバンドラ・ウェストも、格段に静かに感じられた。しかし歴史があり、17世紀のエレガントな建築物と超シックなレストランで知られるこのエリアでは、奇妙なニューノールを自分たちのやり方で生き抜いていた人たちがいた。

例えば、レストランが閉店している中、シェフたちは自宅を当座しのぎの調理場として活用、料理を作り続けたのだ。ヘナ・ウィッドハニは、自宅で作ったたくさんの料理を販売し、収益を慈善団体に寄付。シーファ(Seefah)のシーファ・ケチャイヨ、パッカパウ(Pack-A-Pav)のロハン・マンガロオカー、そしてビュリューボット(Brewbot)のアナン・モルワニは、苦しい時代にあっても料理の創造性を維持しようと、コラボ企画を実施した。また、ビールの醸造所では、近所のバーやパブが休みで困っていた酒好きのため、グロウラーを用いて量り売りでクラフトビールを販売。急激なニーズの増加を捉えて、困難に立ち向かったのだ。

路上は空っぽになってしまったかもしれない。しかし、多くが家の中ではあるが、バンドラの人たちのように、陽気に過ごすのは意外と簡単なのだ。

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39. アルナヴトキョイ、イスタンブール(トルコ)

イスタンブールの慌ただしい都心部から離れた、ウォーターフロントの村、アルナヴトキョイは、2020年になって注目され始めた。しかし数年前、このエリアのコミュニティ精神が知られたことがある。新しく大きな橋を架ける計画を住民運動で阻止したのだ。同じように強い精神力は、2020年の難局も比較的無傷で切り抜け、ここ数年で裏通りにオープンしたレストランやショップも営業を再開している。

地元の人気店であるアンティカ・ロカンダ(Antica Locanda)は、常連客にイタリア料理を提供。ア・ビット・オブ・エッゴ(A Bit of Eggo)は、イスタンブール市民においしい朝食が食べられる場所として知られている。アフタヌーンティーは、チャド・ティー・ショップ(Chado Tea Shop)へ。台湾のフォルモサ・ウーロンから日本のほうじ茶まで、世界の茶葉が集まる店だ。一杯やりたければ、エキサイティングなカクテルメニューとすてきなテラスが魅力のアレクサンドラ・カクテル・バー(Alexandra Cocktail Bar)へ行くといいだろう。

ただ、2020年のアルナヴトキョイの最大の強みは、いつの時代も変わらない水辺の静けにある。イスタンブールのロックダウンが明け、健康に気遣ってボスポラス海峡沿いを散歩することは、かつてないほど楽しく感じられる。

40. バンジャール・ナギ、ウブド(インドネシア)

起伏に富んだ水田があり、コオロギの鳴き声が響くウブドのバンジャール・ナギは、静かではあるがヒップなエリアだ。流行っているクタのビーチクラブに飽きた人が次に向かうべき場所と言えるだろう。

バリの経済が観光客に大きく依存していることは周知の事実。ウブドの中心部から数分離れたところにあるこの小さなエリアは、観光客が来なくなると何が起こるだろうか? 地域の人がお互いを大切にして生き抜いているようだ。

旅行制限を受け、このエリアのヴァイスロイ・バリ(Viceroy Bali)のようなリゾートは、地元の人々を雇うことで地域社会を経済的に支援している。同リゾート内にあるヨーロッパ風インドネシア料理店、アペリティフ(Apéritif)は、仕事を失う人がいないように、スタッフをガーデニングや改装に従事させた。

米、卵、インドミー(インスタント麺)、石鹸を必要な人へ届ける寄付活動には、地域の大勢の人が参加した。また、地元の人たちは、自分たちの好きなワルン(家族経営のカジュアルな飲食店)も支援。カレドック(ピーナッツソースで食べる生野菜サラダ)ならワルン・スンダ(Warung Sunda)、アヤム・バカール(インドネシア名物の炭火焼きチキンとライス)ならワルン・スラバヤ(Warung Surabaya)などが、廃業の危機を乗り越えた。

バンジャール・ナギは、バリの中でも静かで、秘密にしたいエリアだ。しかし、それよりも、そこに住民にとって安全なオアシスであり続けているということが、魅力なのだろう。

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海外旅行で行くべき100の場所
海外旅行で行くべき100の場所

ロンドンやロサンゼルス、香港、メルボルンなど、108都市39カ国で展開するタイムアト。ここでは海外のタイムアウトの記事をから、2019年のニューオープンや注目のレストラン、レコードショップ、珍スポットなど、ジャンルを絞り、100カ所をピックアップした。

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