祭礼都市としての江戸、東京
東京という大都市は、江戸の時代から巨大な祭礼都市で在り続けてきた。「江戸三大祭」といえば、山王祭と神田祭、そして深川八幡祭り、あるいは三社祭。日枝神社の祭礼である山王祭と、神田明神の祭礼である神田祭は「天下祭」とも呼ばれ、盛大に執り行われている。
江戸時代から東京の地で行われる祭りとは、そうした神社の祭礼だけではない。東京における花火大会の源流とされているのが、江戸の中心を流れる隅田川(大川)で開催された「両国川開き花火」、現在の『隅田川花火大会』だ。花火の打ち上げは飢餓と疫病による死者の慰霊と悪病退散のため始められたという説もあるが、両国で屋台の出店が許される納涼期間の初日を知らせるものとして定着した。
戦後の一時期は中断していたものの、1978年には『隅田川花火大会』として復活。立川の昭和記念公園や足立区千住大川町の荒川河川敷など都内各地で大規模な花火大会が行われるようになった。
佃島(中央区)など一部の例外を除き、東京で盆踊りが定着したのは戦後のことだ。7月から8月にかけては都内のあらゆる場所で「東京音頭」や「炭坑節」が鳴り響き、さまざまな縁日でにぎわう。そのほかにも東京ではあらゆる場所で酉(とり)の市や七夕祭り、寺社の年間行事などが行われる。夏はそうした歳時行事のピークに当たり、いずれも多くの人でごった返す。
だが、2020年の春以降、そうした祭りや盆踊りのほぼすべてが中止になった。例年5月に開催される三社祭も、昨年は10月に延期。三社祭では多くの人が詰め掛ける神輿(みこし)の巡行が祭りの華となってきたが、昨年は神輿1基をトラックに積んで町内を回るという縮小版で執り行われた。今年はその神輿の巡行自体が中止となり、例大祭式典やびんざさら舞の奉納のみがひっそりと行われた。