新宿から中央線で約30分のところにある街、国立。一橋大学や国立音楽大学をはじめとした学校も多く、落ち着いた雰囲気が魅力の街だ。今回紹介するのは、国立駅北口から徒歩12分の住宅街にたたずむヴィンテージ古着店の看板猫、くうちゃん(9歳)。古い一軒家をリノベーションしたという、味わい深い店が彼の職場だ。
名前:くうちゃん(♂)
チャームポイント:くるんとした耳、大きな足
性格:甘えん坊で人懐こい。自分が話の中心にいたいタイプ。ご機嫌のときは尻尾を床に「トンッ」と叩きつけ、尻尾で会話をする
好きなもの:鰹節。すぽんとはまれる場所(最近は洗面台にはまるのがお気に入り)
彼がヴィンテージ古着店で働き始めたのは、生後約6ヶ月から。くうちゃんを保護していた知人より、店主の黒田ひろみが引き取ったことがきっかけだった。くうちゃんを初めて見たときは、思っていたよりも体が大きくて少々戸惑ったとのことだが、黒田に近づいてきて、スリスリと体をすり寄せてきたことに運命を感じ、迎え入れたのだという。
くうちゃんは驚くほどに人懐こく、甘えん坊。自分が話の中心にいられないと嫌なタイプのようで、数人で話をしているときに会話に入れないと、ちょっと席を立った人の椅子にすかさず座って話の輪に入ろうとすることもあるそうだ。また、目の前でごろんとしてきたら、「なでて~」の合図。そんなくうちゃんを見かけたら、優しくなでてあげよう。
なでられて気持ちが良いときに、前足をぎゅっとするのはくうちゃんの癖。はたから見るととても愛らしい姿なのだが、膝の上でこの状況になると爪が食い込んでしまい、かなり痛いのだとか……。また、くうちゃんには負けず嫌いな一面もあり、怒られると5分後くらいに仕返しとして必殺技を見舞ってくる。それがなんと、猫パンチではなく飛び蹴りだというから驚きだ。背中に飛び蹴りをした後は、すぐさま逃走するのがくうちゃんスタイル。
ちなみに、何かに飛び乗るときは2回飛ぶふりをしてからジャンプをする
取材を進めていると、どこからともなく「トンッ、トンッ」という床を叩く音が聞こえてきた。何事かと思って辺りを見渡すと、くうちゃんが自分の尻尾で床を叩き、音を鳴らしているではないか。写真を撮られるのが嫌で音を鳴らしているのかと心配になり店主に尋ねると「これは、ご機嫌のときにやるんです」とのこと。なんとくうちゃんは、嬉しいときにこうして尻尾で喋るそうなのだ。この日は多くの人に囲まれていたため、終始機嫌良く音を鳴らしていた。
人懐こいという部分で筆者が一番驚かされたのは、歩いてくるくうちゃんに手を差し出したときのこと。多くの猫の場合、ペロペロと指をなめることはあっても、ふいっとそっぽを向いてしまう。しかし彼の場合は、まるでそこに何もないかのように、鼻や額をぴったりと手に押し付けながらぐんぐんと通り過ぎていったのだ。予想外の行動に驚きはあったものの、同時に愛情が生まれたのも確かである。都心からは少々離れるが、国立は質の高いカフェが多いエリアとしても知られる街だ。ゆったりと散歩や休憩をしつつ、くうちゃんに会いに行ってみてはいかがだろう。
名前:くうちゃん(♂)
勤務先:caikot
看板猫になるまでの経緯:店主に引き取られたことがきっかけ。くうちゃんを初めて見たときは、思っていたよりも体が大きく少々戸惑ったものの、近づいてきてスリスリと体をすり寄せてきたことに運命を感じ迎え入れた
—ある1日のスケジュール—
13時ごろ 出勤
店の2階で休憩していることも多い
国立駅から徒歩12分ほどの住宅地に入ると現れる、一軒家をセルフリノベーションしたヴィンテージ古着ショップ。店名『かいこ』の由来は、古きを懐かしむ「懐古」と、絹糸を生み出す「蚕」から。天井が高く、趣ある木の梁(はり)が特徴的な店内は、店名の通りどこか懐かしく、穏やかな雰囲気が流れる。取り扱うのは、店主自らがヨーロッパ各地を旅して買いつけた1930年代から1970年代のヴィンテージ古着や靴、小物など。ドイツ農民のワークウェアであるグランパシャツや、小花柄が特徴のチロリアンスカートなど、クラシックからタイムレスなデザインまで、現代物とも相性の良いアイテムを幅広く取り揃える。丁寧に手入れされ、何年にもわたって着られてきた洋服には、少し不恰好な繕いが施されたものもあるが、そういった繕い跡のひとつひとつが、かつての持ち主によって大切にされてきた歴史を伝える愛おしい個性だと店主は語る。着心地が良く、愛すべき一点物を求めるなら、足を運んでみるといいだろう。
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