タイムアウト東京 > ローカルレジェンド> #21 暗黒アイドル ネクロノマイドル
「サンリオが大好き。サンリオピューロランドの年間パスも持っている!」と、流暢な日本語で話す、アメリカ出身のリッキー・ウィルソン。女性5人のアイドルユニット、ネクロノマイドル(NECRONOMIDOL)、通称「ネクロ魔」のプロデューサーだ。
ネクロノマイドルのテーマは「暗黒」。ブラックメタル、ダークウェイブ、ニュー・ウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルなどのハードな音楽を取り入れた楽曲、黒を基調とした衣装、エンターテイメント性の高い振り付けなどで、独自路線をひた走る、今注目のグループである。活動は日本国内にとどまらず、アメリカやヨーロッパでも、ライブを行う。
ところでなぜ、アメリカ出身のリッキーが、日本で日本人のアイドルをプロデュースすることになったのだろうか。
2018年12月2日、下北沢Shelterでのライブより
リッキーは、高校生の頃からアメリカで日本語や日本文学を学び、大学卒業と同時に来日。当初は熊本県で英会話スクールの講師をしていたが、その後、「活動の幅を広げたい」と上京。東京に来てからは、ホビー用品やフィギュアを扱う通販サイトの仕事をしつつ、バンド活動も行い、パンクやメタルを演奏していたという。その通販サイト会社が企画したイベントで、日本のアイドルと一緒になる機会があった。リッキーが日本のアイドル文化に接触したちょうどその頃は、BiSやでんぱ組.incなど、それまでのアイドルのイメージを覆すグループが、話題となった時期。
「ただ可愛いだけではなく、曲も良い、日本のアイドルに興味を持った」というリッキー。知人の勧めもあって、自身でアイドルグループを立ち上げることになった。
コンセプトである「暗黒」の世界観を表現したステージ
「東京のアイドルシーンははやりものが多く、似たようなグループが乱立していた。絶対にほかのグループとは被らない楽曲で挑戦したかった」という思いから、「暗黒」というコンセプトや、ブラックメタルを押し出した曲を作り上げていった。
オーディションにて、現在もリーダーとして活躍する柿崎李咲(かきざきりさき)や、「元々、ファッションとして白塗りをしていた」という瑳里(さり)などのメンバーが集まり、2014年3月に結成。数回のメンバーチェンジを経て、現在は、柿崎李咲、瑳里、夜露(よつゆ)ひな、今泉怜(いまいずみれい)、月城(つきしろ)ひまりの5人で活動している。
Photo by Kisa Toyoshima
東京での活動を中心にスタートしたが、ここ数年は、海外での公演にも力を入れ、現地での評価も高い。「YouTubeで私たちの楽曲を知っている人も、生のライブでは、すごく新鮮な反応をしてくれる(月城)」、「現地のファンが本当に喜んでくれて、オリジナルの振り付けで踊って、楽しんでくれる人もいる(柿崎)」と、メンバーも海外公演の手応えを感じているようだ。
海外での活躍には、もちろん、プロデューサーであるリッキーの存在が大きい。
「もしリッキーさんが日本人だったら、同じようなコンセプトだったとしても、私たちは全く違う道を歩んでいたし、海外にも行けなかったと思う(今泉)」
2019年1月7日でメンバーの瑳里と夜露ひなの2名が卒業し、新メンバーの加入も決定している。さらに新たなステージへと向かうネクロノマイドル。リッキーは「ネクロノマイドルは歩みを止めずに、突き進んでいきたい。まだまだネクロ魔で、出来ていないことが沢山ある。僕自身は元々、映画が好きだったので、将来的には、ネクロ魔出演の映画を作りたい」と夢を語っていた。