SUGAIの新作『Tone River』は、オランダを拠点とするField Recordsから2020年11月にリリースされた。オランダ大使館からの助成を受けた同レーベルが、SUGAIに制作を発注して実現に至ったものである。
一国の大使館が異国の河川をテーマとする企画、それもエクスペリメンタルな電子音楽作品を経済的に支援したというのだから、日本ではちょっと考えられない話である。
SUGAIによると、「Field Recordsは日本人アーティストの作品も出していて、数年前にEnaさんの『Bridge』という長崎の出島にかかる橋をテーマにした作品も出しているんですよね。そこから今回の着想を得たみたいで」という。
RVNG Intl.からリリースされたSUGAI KENの2017年作『UkabazUmorezU 不浮不埋』収録曲「Doujiri(堂尻)」のMV
「音楽に限らず、ヨーロッパでは創作する人たちが自信を持って活動しているんですよね。日本で『音楽をやってます』と言うと、その後に『本業は何をやられているんですか?』と聞かれることが多いんですが、ヨーロッパで『僕はアーティストをやっています』と伝えると、それ以上聞かれることはあまりないように感じました。
歴史的なパトロン文化の影響もあると思うんですけど、日本とは表現者を取り巻く環境が圧倒的に違うと感じました。純粋にうらやましいな、と。 たとえ実験的な電子音楽をやっていても、ヨーロッパだと何とか生活できるようなんですよね。助成金がしっかりしているので、ゆっくり制作に向き合える。ロンドンのCafe OTOという有名なヴェニューでやらせていただいた時は、自分の親世代のお客さんも多かったことに驚きました。仕事帰りにお茶をしにいくような感じで、先鋭的な音楽に触れて帰る。そういう習慣が根づいているんです」