自分の内側に祭りを作る
山口に話を聞きに行った数日前、Twitter上ではイベント会場での感染対策について参加者から苦言を呈された地方フェスが一部で「炎上」と騒がれていた。世間の警戒心がようやく緩み小、中規模の野外イベントがぽつぽつと開催され始めた矢先の出来事に、イベント主催者たちの間には再びの緊張感が漂っていた。
2020年の『FESTIVAL de FRUE』は、1月に早くも第1弾ラインナップとしてThe Master Musicians of Joujouka & The Orbの出演情報を発表し、そこから毎月3組ずつ10月までじっくりとラインナップを紹介していく予定だった。春から夏にかけて感染状況が拡大し、その計画は総崩れになってしまった。だが、それでも山口のなかで「中止」という選択肢はなかったという。
「まだ6月ぐらいまでは、10月には事態も収まって『FRUE』はやれるんじゃないかとなんとなく思っていました。しかし、9月の『SUPERSONIC 2020』の中止によって、これは無理かもしれないという空気に変わった。みんなそうだったと思うんですが、夏の第2波がきつかった。
コアスタッフの中でも皆それぞれ考え方が違っていて、最初は『本当にやるの?』という感じでした。まず、コロナ対策をどうするかというところから話がスタートしました。ただ動き出さないと腐って鬱々するし、緊急事態宣言の最中の4月と5月にライブ配信にチャレンジしたりして、友達と実際会ったりすると、音楽の現場って大変だけど、やっぱり楽しいなって当たり前の感覚が思い出されてくる。
コロナ禍で鬱(うつ)っぽくなってしまっている人の気持ちを、少しでも晴れ晴れさせるのは、やっぱり音楽なんじゃないかという気持ちが湧いてきました。生のライブを、みんなで一緒に見たいよねと。
今、太陽が隠れ、世の中が闇に包まれていた、疫病が流行ったという神話『天岩戸伝説』の世界を生きているんじゃないかという気がしています。今回は、疫病が流行り、流言飛語が飛び交い、暗く深く閉じてしまったという逆のパターンですが。
神話にならえばこの後、岩戸の前で宴が開かれ、ダンサーのアマノウズメが踊り、どんちゃん騒ぎしていたら、アマテラスが外の様子が気になって顔を出して、その機会を逃すまいと力もちの神様が、固く閉じた岩戸を開け放ち、アマテラスを表に引きずり出します。そうしたら、世の中が再び明るい世界が戻って、めでたしめでたしとなります。
その宴を、『FRUE』にしようというわけではないですが、遅かれ早かれ、このコロナ禍で閉じてしまった心は開かなきゃいけないと思います。そして、開いて外へ出れば、あとは明るい世界が戻ってくる。 そのタイミングがいつなのかって話ですよね。 自分の心の中でアマノウズメを躍らせて、そろそろ出てもいいじゃない?と僕は思っています。
そして、この状況下で表現者たちが何を表現するのかは見ておきたいですよね。GEZANや折坂悠太がなにを歌うのか、やっぱり気になるじゃないですか。
ある意味、事件が起こりそうな気がします。ただモッシュやダイブは本当に控えてください。公演自体が中止になってしまう可能性があります。ディスタンスを守りながら、精神を思う存分に踊らせ、暴れさせてくれたらなぁと。
今年は、じゃがたらに出演してほしくてオファーをしていましたが、さまざまな事情で出演はかなわなかったのですが、本当に出てほしかった。『君と踊りあかそう日の出を見るまで』というアルバムタイトルを、今年の『FRUE』のテーマにしていて。掛川では、転換の時にかけようと思っています笑」