儀式としての身体改造
ー世界中を飛び回っているケロッピーさんですが、現在の活動を始めたきっかけはありますか?
昭和40年(1965年)生まれのオカルト少年で、1970年にオカルトブームを体験してカウンターカルチャーに興味を持っていました。中学1年生の夏、イギリスに住むおばの家を訪ねた時、未確認動物ネッシーを探しにネス湖を目指したこともあります。結局、たどり着けずにエジンバラで引き返し、無念の帰国となりましたが……。それほど好奇心旺盛な子どもでした。
とにかく現場に行きたいという気持ちは今もまったく変わっておらず、気づけば世界中のカウンターカルチャーを現地レポートするジャーナリストになっていました。
ー身体改造に興味を持ったきっかけは何でしょうか?
1989年に出版された身体改造実践者たちを紹介する本「Modern Primitives」を読んだことがきっかけです。主に性器ピアスを含むボディピアスと、民族起源のある黒一色の文様が印象的なトライバルタトゥーについて紹介されていました。
その本の最初のページには、フックを身体に貫通してつり下げるボディサスペンションが載っています。それはファキール・ムサファーさんがアメリカ先住民の儀式を現代的に再現したものでした。
僕はこの本を手に入れた1991年には出版社に勤めて編集者として雑誌を作っていました。翌年には自分でピアスを入れて、その体験レポートを自分が担当していた雑誌に掲載。そして1994年にはファキールさんに会うため、サンフランシスコへ取材に行きました。
V Vale, Andrea Juno「MODERN PRIMITIVES」(RE/Search Publications)
ーこの本のどのような点に惹かれたのですか?
タトゥー、ピアスを含む身体改造は、現代においては確かに「過激なファッション」ですが、実は人類の太古から世界各地に民族儀式や通過儀礼として存在する、全人類に共通するカルチャーであることに面白さを感じました。現代の流行は、そんなプリミティブな行為が現代的に復活したものなのです。
ー痛みを伴う通過儀礼や儀式もあると聞きましたが、なぜ必要なのでしょうか?
一般的には、子どもから大人になる通過儀礼として痛みをともなう行為が行われていたと言われています。実際、アフリカや南米、東南アジアの先住民などではごく最近までそのような儀式が残っています。タトゥーやピアスなどがイメージしやすいですが、その儀式を行った証に身体に文様やピアス穴が残ることで大人とみなされるのです。
以前、アムステルダムにあったタトゥー・ミュージアム(Amsterdam Tattoo Museum)では、来訪の記念にタトゥーを彫ってもらえました。そこを訪れたタトゥー愛好者たちは皆、同じ図柄を入れているので一種の巡礼の証となるのです。その図柄は古いキリスト教の巡礼に起源があり、過去に行われていたことが、今に通じているのは面白いですね。