二丁目の人はレインボー・プライドをどう思う?聞いてみた

多様性あふれる街の人々が考える、LGBTの祭典

Mari Hiratsuka
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性の多様性や、性的マイノリティ(LGBT)の人々への理解を深めるイベント『東京レインボープライド』が4月28日(土)〜5月6日(日)に行われる。毎年、LGBT当事者からノンケ(異性愛者)、親子連れなど幅広い人々が参加し、すっかり恒例のイベントとなった。昨年には参加者が10万人を突破し、規模は年々拡大、企業の参加も増えてきた。LGBTの聖地・新宿二丁目の人々は、どんな思いでこのイベントを見つめているのだろう。夜の二丁目で聞いた。

『東京レインボープライド』の詳しい情報はこちら

真っ昼間から友人と飲む酒は最高で、そんな雰囲気がいい

カフェ店員:きよゑ(21)=ゲイ=

「レインボープライドには19歳で初めて参加して、今年で3回目です。最初はどんな人が来るのだろう、どんな感じなんだろうと不安で、参加には勇気がいりましたが、単純に楽しかったです。

二丁目は夜の街だから、真っ昼間にこんなにマイノリティの人がいるんだと安心感を感じました。ノンケの人もたくさんいて、みんな応援してくれているんだと思いました。

自分は親にゲイであることがバレて、大げんかをして家を飛び出して来たんです。あのイベントはLGBTであることをカミングアウトした人たちが多く参加していてポジティブに見えますが、カミングアウトすることで、僕のようにマイナスに出ることもあるんです。

結婚もしたいなと思いますが、権利とかはどうでもいい。そのための主張を(レインボープライドの場で)する時間があるなら、もっと別のこともできるのではと思うこともあります。なので、あのイベントに政治的な何かを求めているわけではありません。真っ昼間から友人と飲む酒は最高で、そんな雰囲気がいいんです。そこで出会った友人もいますよ。

最近は企業の参加が増えています。お金が回るのはいいことですが、LGBTの人たちが客寄せパンダみたいになってほしくはないです」

企業の参加、私はいいことだと思う

カフェ「anchor」店長:高山(40)=レズビアン=

「レインボープライドには、一昨年にブース出展しました。会場にはおじいちゃんもおばあちゃんもいて、いい雰囲気でしたよ。

企業の参加が増えていますが、私はいいことだと思います。いろいろあった方が楽しいじゃないですか。新しいものが入ってくるのを嫌がる人もいるかもしれませんが、頭が固い人はいなくなってきた気がします。お祭りだから大きくなれば良いと思います。

今ではゼクシィ(女性ファッション雑誌)でも女の子同士の結婚式を特集したりしていますよね。そういうのは、レインボープライドのようなイベントがもたらした変化じゃないでしょうか。

日本だと、まだサングラスをして参加している人もいますよね。そのあたりが海外のイベントとはまだまだ違うなと思います」

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「ゲイはああいうものなんだ」とキャラ化されると…

アダルトショップ店員:古瀬(38)=ゲイ=、北村(40)=ゲイ=

古瀬
「レインボープライドには参加したことはないです。興味がないわけじゃなくて、仕事があったりしてタイミングが合わないんですよね。あと、友だち同士で参加する人が多い、内輪なイベントの感じがして、1人だと参加しづらいんです。

台湾のLGBTパレードには参加しました。たぶん、(台湾だと自分が)外国人なので、開放的になっていたんですね。人の多さや、人と人との距離の近さが印象的で、規模も全然違いました。

各地でパートナーシップ条例が制定されるなど、LGBTへの理解はだいぶ広がってきたと思います。ただ、(結婚のような)何かが確実に認められるのは無理じゃないかと思っています。少なくとも自分が生きているうちは。結婚できたら素敵ですけどね。

昔の二丁目はひっそりしていましたが、今ではノンケの人も当たり前に来るようになりました。それはやっぱりレインボープライドのような活動のおかげだと思います。

レインボープライドに参加している人の多くは、きっとLGBTの権利などに関心がある人だと思うんです。だからこれからは、無関心な人にどう届けるかが重要になってくるんじゃないでしょうか。地方の田舎でもこういうイベントができるといいですね」

北村
「5年以上前に2回参加しました。自分が気になったのが、露出の多いファッションの人が目立っていたこと。どうしてもそういうゲイの人が目立っちゃうんですよね。世間で『ゲイはああいうものなんだ』とキャラ化されると、逆にカミングアウトしづらくなる人も出ると思います。

でもいろいろなものを受け入れようというイベントなのだから、こういうことを言っている自分がダメなのかな...

僕らLGBT当事者が隠れていていいとは思いません。言いたいことは言わなくちゃいけないとは思います」 

若い世代が楽しんでいれば、ちょっとずつ変わってくるはず

短大1年:高島彩花(18/右)=ノンケ=、専門学校1年:伽野(18)=ノンケ=

高島
「私たちは小学校からの幼なじみで、つい先日、長野県から東京に出てきました。レインボープライドの存在は知らなかったけど、すごくいいと思います。相手が男でも女でも、好きになっちゃったら関係ないですよね」

伽野
「レインボープライドのことは知りませんでした。でも、そういうイベントは大賛成です。誰であろうと、みんな恋愛すればいいと思います。

自分の親はそういうのにすごい否定的です。私は腐女子で、ボーイズラブ(男性の同性愛が題材の小説、漫画)が好きなんですが、親には『気持ち悪い』って言われました。

でも若い世代がそういうイベントを楽しんでいれば、ちょっとずつ(社会の空気が)変わってくるのではないでしょうか。長野のような地方にも、LGBTパレードや、二丁目のようなエリアがあるといいなと思います。でも抵抗ある人も多そうですね」

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デモよりお祭りの方が楽しみやすい

バー店員:みるく(アラフォー)=ニューハーフ=

「私の出身は神奈川県で、二丁目に来て1年ちょっとです。レインボーパレードは、去年の夏にここで見ました。にぎやかで楽しそうにやっていましたね。今年は参加してみたいなと思います。朝起きれたら。

政治的なデモよりもレインボープライドみたいなお祭りの方がいいよね。みんなが楽しみやすいと思います。

でもレインボープライドが(全国に)広がるのは難しいと思います。みんな頭が固いから。今は二丁目は観光地のようですが、『日本のLGBT発祥の地』みたいになって、ここの空気が広まればいいなと思います。

今は、二丁目に来てよかったと思っています」

LGBTを公表したくない人もいるというのは知ってほしい

ジュエリー卸業社員:和雅子(25)=レズビアン=

「あのイベントは、どこか自分たち(LGBT)を差別化している意識がある気がします。私は自分を(LGBTだと)特別視はしないので、そこまで興味はないかな。もっと海外のようにお祭りっぽくした方がいいんじゃないでしょうか。

でもレインボープライドのように、自分の仲間に出会える場はあった方が絶対いいと思います。イベントに参加したい人は参加して、飲みたい人は飲むみたいな、いろいろな楽しみ方ができるといいですね。

参加しているLGBTの人たちは開放的に見えますが、LGBTであることを公表したくない人もいるというのは、みんな知っておいてほしいなと思います」

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最近はしっかり掃除もしていて偉いなあ

バー「びきたん」店長:男(63)=ノンケ=

「このバーは、先代からの時代も含め、今年で56年目です。レインボープライドのようなお祭りは、外国人のお客さんも多いし、良いんじゃないかな。みんな楽しそうですよ。

昔のパレードは騒がしかったんだけど、最近はしっかり掃除もしてくれているし、みんなに迷惑をかけないようにやっていて偉いなあと思います。それで楽しむ分には全然いいよね。イベントの後にお客さんが二丁目に流れて来てくれるしね」

子どもたちが参加するのはいいこと

レズビアンバー店長:じん(39)=レズビアン=

「レインボープライドは、ブース出展という形で2回参加しました。いろいろな人と食べて飲んで触れ合えて、楽しかったです。会場には、家族連れも多く来ていました。子どもが小さいうちからそうしたイベントに触れるのはいいですよね。

イベントが大きくなっているのはいいことだと思います。LGBTへの理解が広がったんじゃないでしょうか。この店は9年やっていますが、二丁目の雰囲気も、昔に比べれば明るくなってきました。これからはカミングアウトする人も増えると思います。

ただ海外のLGBTイベントに比べれば、日本はまだまだ規模が小さいし、理解は少ない。ただのお祭りじゃなく、世間にちゃんと浸透すればいいなと思います。私も機会があれば(個人で)参加したいです。

会場での出展は宣伝にもなるし、お客さんがイベント後にも二丁目に流れてきてくれるんですよ」

LGBTフレンドリースポットに行く……

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東京、LGBTフレンドリースポット10選
東京、LGBTフレンドリースポット10選

Text by カイザー雪 海外では、ロサンゼルスのウェストハリウッドや、パリのマレ地区などがLGBTエリアとして知られており、トレンド発信地としてもセクシュアリティを問わず人気だが、日本では新宿二丁目をはじめ、LGBTフレンドリーなスポットは一般的にはまだあまり知られていない。タイムアウト東京では、東京で5月6日(水)まで開催中のレインボーウィークに合わせて、LGBTフレンドリーなスポット10選をピックアップする。

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