Love Letter(1995)
監督:岩井俊二
映画「花とアリス」「キリエのうた」などで知られる監督、岩井俊二の長編第1作。
事故で婚約者を喪った主人公が、亡くなった彼が子どものころ住んでいた家に、届くはずのない手紙を出す。すると、その手紙は、彼と同姓同名の女性のもとへ届き、ふたりの不思議な文通が始まる……。というあらすじを一見して分る通り、岩井特有のウットリするほど小っ恥ずかしいリリカルな少女マンガ的世界観は既に確立されている。
ストーリーは冷静に考えるとツッコミどころ満載なのだが、それを補って余りある幻想的な映像美とセンチメンタルなセリフ運びが素晴らしい。気だるげで浮遊感あふれるムードが心地良く、主人公が風邪をひいているという設定がまたそれに拍車をかける。
舞台である小樽と神戸の雪景色もなんとも印象的。真冬の夜に、毛布をかぶってぼんやりと眺めたくなる、アンビエント・ラヴロマンスの傑作だ。