正月・冬休みに観たい日本映画7選
イラスト:Lee Yuni正月・冬休みに観たい日本映画7選
イラスト:Lee Yuni

正月・冬休みに観たい日本映画7選

冬の情景も美しい岩井俊二作品や、天才アニメーター湯浅政明のデビュー作、クレイジーすぎる時代劇など

Mari Hiratsuka
テキスト:: Rikimaru Yamatsuka
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あれよあれよで気がつきゃ師走、いよいよ来たる年末年始。猫も杓子もチルアウト、諸人こぞりてリラックス・ムードに包まれるこの時節、 たこ揚げやこま回し、相撲や羽根突きに興じるのも大いに結構だが、 「クソ寒いのに外なんか出たかねぇよ!」というインドア主義の人に勧めたいのはやはり、映画鑑賞である。 つーワケで今回ワタクシ、「正月・冬休みに観たい日本映画」をセレクトした。

ダラダラしながら観るのにうってつけのユルいコメディや、 新年に向けて気合いを注入するためのパワフルな時代劇など、多様なジャンルを取り揃えてみたので、ぜひ各々のモードに合わせて鑑賞してみてほしい。

おひとりさまで、あるいは友達や家族、もしくはパートナーと、コタツに入ってミカンを食べたり、部屋を暗くしてブランケットを頭からかぶったりしながら映画を観る。これほど楽しいことはない。

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Love Letter(1995)

監督:岩井俊二

映画「花とアリス」「キリエのうた」などで知られる監督、岩井俊二の長編第1作。

事故で婚約者を喪った主人公が、亡くなった彼が子どものころ住んでいた家に、届くはずのない手紙を出す。すると、その手紙は、彼と同姓同名の女性のもとへ届き、ふたりの不思議な文通が始まる……。というあらすじを一見して分る通り、岩井特有のウットリするほど小っ恥ずかしいリリカルな少女マンガ的世界観は既に確立されている。

ストーリーは冷静に考えるとツッコミどころ満載なのだが、それを補って余りある幻想的な映像美とセンチメンタルなセリフ運びが素晴らしい。気だるげで浮遊感あふれるムードが心地良く、主人公が風邪をひいているという設定がまたそれに拍車をかける。

舞台である小樽と神戸の雪景色もなんとも印象的。真冬の夜に、毛布をかぶってぼんやりと眺めたくなる、アンビエント・ラヴロマンスの傑作だ。

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茶の味(2004)

監督:石井克人

「1本満足バー」のコマーシャルでも知られる、石井克人の最高傑作との呼び声も高い作品。

田舎の風変わりな一家の日々を描いた、いわば「日常系」映画であるが、もうとにかく信じられないぐらいユルくてダルい。「このシーン、こんなに尺いらなくない?」としか思えない冗長なシークエンスの数々が含み笑いを誘う。

最短時間で刺激を得ることを是とする、即効性重視のクリエイティビティが蔓延する現代においてもはや絶滅した、すさまじいまでのスローなタイム感は、加速主義に毒された貴方のBPMをやんわりと落ち着けてくれるであろう。

異様に豪華な役者陣と異様にキマりまくってる構図、異様に美しい音楽が目にも耳にも心地良い。 正月にピッタリな、なんとも縁起の良いオーガニックでサイケデリックなチルアウト・コメディ。

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極道めし(2011)

監督:前田哲

グルメ漫画のレジェンド・土山しげるの同名漫画の実写化作品。 監督は映画「そして、バトンは渡された」「水は海に向かって流れる」の前田哲。

とある刑務所の5人の囚人が、年に一度のゴチソウである正月のおせち料理を賭けて、「今まで食べた中でいちばんおいしかったもの」を語り合うフードトークバトルとでもいうべき映画。まぁあらすじから想像できる通りヒジョ~に地味で低予算感漂う作品なのだが、演技派揃いの役者陣が魅せる熱演や、チープなサイケデリック感あふれる回想シーン、ドラマと呼応する巧みな音楽センスなどの工夫をこらした演出によって、意外や意外の味わい深さとコクがある。

切なくてホロ苦いエンディングもナイスな、年末年始のダルな空気にピッタリなヒューマンコメディ。

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マインドゲーム(2004)

監督:湯浅政明

「ピンポン THE ANIMATION」「映像研には手を出すな!」で知られる天才アニメーター・湯浅政明による長編デビュー作。

主人公が借金取りから好きな女の子を逃すべく、いっぺん死んでも気合で生還してカーチェイスを繰り広げるも巨大なクジラに飲み込まれてしまうという、「何言ってんの?」って感じの支離滅裂なストーリーなのだが、本当にそうなのだから仕方ない。

ラブ&サイケな作中で一貫して描かれるのは「この世界はすべてが完璧なのだ。己を解き放ち楽しく自由に生きよ」という力強すぎるテーマ。とにかく全編ポジティブで生の躍動感に満ちているので観るとムチャクチャ元気が出る、新年の門出にふさわしい一作だ。

ちなみにロビン西による原作漫画は監督本人も認めている通り、よりディープでコア。

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ブルークリスマス(1978)

監督:岡本喜八

クリスマス映画は洋邦問わず無数にあるが、その中でも最もクリスマス濃度の低い映画。 当時大ヒットしていた「スターウォーズ」に対抗して、特撮映画の大家である東宝が「じゃあ俺らは逆にいっさい特撮使わないでSF撮ってやるよ!」つって制作された異形のSF映画で、かの庵野秀明にも影響を与えまくった一作である。

世界各地でUFOが目撃され、しかもそのUFOを見たものは全員血液が青く変色するという怪現象から端を発する、一筋縄ではいかないサスペンスぶりは見応えタップリで、岡本喜八のケレン味あふれる演出はすげえクールだし、「北の国から」で知られる倉本聰の風刺と皮肉に満ちたブッ飛びまくりの脚本も強烈。

「いや、これエヴァンゲリオンじゃん!」と叫びたくなるエンディングは必見。

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ベイビーわるきゅーれ(2021)

監督:阪元裕吾

日常系×バイオレンスなアクションコメディの傑作。

ある組織の下で殺し屋として働くふたりの少女が、「就職活動をしてオモテ向きはフツーの生活を送れ」という命令を受けてルームシェアを始めるも、ある事件をきっかけとしてヤクザと闘うハメになる……。という筋書きで、ダルい日常劇と超絶アクションの2要素で構成されているのだが、このどちらもが大変に魅力的で、双方が互いを引き立てている。

初期の宮藤官九郎を彷彿とさせるモラトリアムな会話劇は実に楽しいし、将棋の早指しのような知的な瞬発力に満ちた格闘シーンはスリリングかつアイディア満載。

続編もヒットを飛ばし、2024年には「3」も公開される予定なので、未見ならば是非このタイミングで鑑賞あれ。

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子連れ狼 地獄へ行くぞ大五郎(1974)

監督:黒田義之

原作・小池一夫、作画・小島剛夕の漫画「子連れ狼」を映画化した、若山富三郎主演の映画シリーズの最終作。

マシンガンを搭載しソリになった乳母車でスキーに乗りバズーカを撃ちまくるった軍団と雪山で闘うわ、死者が蘇って地中から襲ってくるわ、時代劇のイメージを根底から覆すクレイジー極まりない作品。

マニアの研究によれば、一つの作品中において主人公が最も多く人を殺している映画らしい。そう、「ランボー」や「コマンドー」さえ差し置いて、史上最多のキル数を誇る作品なのだ。

ちなみに若山は勝新太郎の実兄であるが、その勝新をして「殺陣はお兄ちゃんには敵わない」とシャッポを脱ぐほどのスピード感と重厚感を兼ね備えた若山の殺陣は、いま見ても強烈。身体能力エグすぎ。

年末年始といえば、やはり時代劇。忠臣蔵も大いに結構だが、このスーパークール&ハイパーカルトなバイオレンス時代劇を観てはいかがだろう?

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イラストレーター

Lee Yuni(李 潤希)

大学在学中から、イラストレーションやグラフィックデザインを用いたアートディレクションを始める。近年では映画や舞台などの宣伝美術、映像制作などアートディレクターとして活動する傍ら、映画、女の子やファッションをモチーフにしたイラストや漫画を制作。


公式ウェブサイト

もっと映画を楽しむなら

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今回「史上最高のセックスシーン」のランキングを作成するにあたり、映画における肉欲の知識を総動員した。タブーを押し広げるような挑発的な作品から、時代の流れを変えるような重要な作品、エロティックなものから不快なものまで、バラエティー豊かに紹介する。

また、アカデミー賞を受賞したものも少なくない。中には古典的なフェミニズム映画もある。多くの作品には賛否両論がつきまとうが、これらは全て映画史に置いて欠かせない作品だ。

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クリスマスなんて嫌いだ。キラキラと輝くイルミネーションの「光」。その影で「闇」に身を潜め、独りポツリとつぶやいた。

今回、クリスマスが苦手な私が映画を選定した。それは、欧米ほどクリスマスが重要視されていない日本において、「闇」の側面からクリスマスという「光」にスポットを当てることによって、日本のクリスマスに新たな発見を得ようという試みでもある。

新たな発見とともに送る珠玉の10本を、今宵あなたへ。

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クリスマス映画 50選
クリスマス映画 50選

タイムアウトロンドンが選ぶ『クリスマス映画50選(The 50 best Christmas movies)』を紹介しよう。『クリスマスキャロル』や『ホーム・アローン』などの定番作品から、コメディやラブストーリー、アクション作品などまで幅広く網羅している。リストをチェックして、クリスマス気分を盛り上げよう。

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