── 「三千年の願い」は、A.S.バイアットの「The Djinn in the Nightingale’s Eye」という短編小説を原作としています。いつ頃この作品に出合い、どのような印象を持たれましたか?
1990年代後半に出合いました。A.S.バイアットは、自分が話した童話を集めたアンソロジーを出版していました。彼女は文学の研究者で純粋に学問として文学に取り組んでいるのですが、物語や語りへの関心も強く、「アラビアンナイト」の大ファンであったことから、大人のおとぎ話をいくつか書いたのです。
原作を読んだ瞬間に、物語に引き込まれました。彼女は、なぜ私が他の作品ではなくこの物語に引かれるのかと聞いてきました。私は「本物だと感じたから」と答えました。すると彼女は、「それはきっと、この物語に登場するジン以外のすべてが事実だからなのでしょう」と言ったんです。実際に彼女は物語学の研究者として、(物語と同じように)イスタンブールの学会に行っていましたし。 彼女が興味を持ったことは、すべて私と大きく共鳴するものでした。
例えば、登場人物たちの相反する性質。アリシア(ティルダ・スウィントン)は、理性的な人物で、ジン(イドリス・エルバ)は感情に突き動かされるタイプです。アリシアには寿命がありますが、ジンは事実上不死身です。
また、欲望や愛の本質を見つめることができる物語でもあり、物語を語ることについての、そして、なぜ私たちは物語を語り、それが私たちにどのような働きかけをするのかについての物語でもありました。こういったことすべてが、私にはたまらなく魅力的だったのです。