昔のヒット曲をステージで披露しているバンドもいるけど、俺には楽しそうに見えない
ー約2年ぶりの来日公演がいよいよ10月に開催されますね。前回来日した際のライブもかなりの盛り上がりでしたが、今回はどのようなライブにしたいですか。
Nic Offer(以下、Nic):盛り上がるライブにしたい(笑)!俺たちのライブでは毎回そうしたいと常に思っていることだけど、同時に毎回が新しいライブであってほしいと思うんだ。同じライブを見せたくないから、ツアーごとにしても、数年ごとにしても、常に新しいライブをしたいと思っているよ。
ーこれまでも何度か日本でライブを行っていますが、日本のファンはどのような印象でしょう。
Nic;日本のファンの印象は、曲が終わって拍手し終わるとすごく静かになること。かなり変な感じだね(笑)。
ー次の曲を待っているんですよ。
Nic:そうなんだろうけど、他の国では喋ってる人がいたり皆ざわついている。でも日本は、拍手が終わると沈黙する。不思議だよ。でもまあ、とにかく日本のファンは素晴らしいから関係ないけどね。みんな興奮して踊りまくってくれるから最高だよ。
ーニューアルバムをリリースした直後のライブということで、アルバムについても少し伺いたいと思います。4作品目まではジャムセッション、前作『THR!!!ER』はジム・イーノをプロデューサーに迎えての制作となりましたが、今回はどのように制作されたのですか。
Nic:今回は、各自が自宅で作ったデモを持ち寄ってそれをベースにしていった部分が多い。そのベースとなるものと、ライブセッションを組み合わせて作っていったんだ。あるクラブを1週間おさえて、1週間ぶっ通しでギグをやったりもしたよ。毎晩、同じ新曲を演奏してその後スタジオに直行したから、いい感じの荒削りな音が出せたと思う。荒削りのデモと荒削りの音を組み合わせた感じかな。今回は、より荒削りな感じを試みたけど、短い曲はジムと作った曲のようにきれいにまとまっていると思う。
ーどうしてそのような制作スタイルをとることになったのでしょうか。
Nic:アルバムを担当する人で、安心して任せられると思う人がいなかったから。スプーンのアルバムが去年出たけど、ジムはその仕事があったから非常に忙しくて、彼とは1週間くらいしか一緒に仕事ができなかったんだよ。他に一緒にできる人がいなかったから、自分たちでやったんだ。あとは、パトリック・フォード。彼も、今回のアルバム制作に大きく貢献してくれたよ。
ー今作の『As If』は前作の『THR!!!ER』とはまた違った雰囲気のアルバムですね。3曲目の『Every Little Bit Counts』からはこれまでにないポップさのようなものも感じたのですが、制作をするにあたって何か意識したことはありましたか。
Nic:意識したのはとにかくすべてをやってみること。「モータウンみたいな曲をやろう」とか「ニーナ・クラヴィッツみたいな曲をやろう」とアイデアを投げ合って、自分たちにチャレンジさせるんだ。それで何ができるか、何が達成できるかというところに挑戦し続けたところが今回のアルバムに反映されていると思うよ。
ー今回の公演ではこのアルバムより多くの楽曲を披露すると思うのですが、新曲を披露する際に心がけていることはありますか。
Nic:正しく演奏することかな(笑)。新曲はいつもそれが課題だ。新曲は、!!!にとっても新しい体験になるように作られた曲。だから、観客も新曲を聴いて俺たちの新しい面を感じ取ってくれたら嬉しいな。ステージで起きる新しいことを見てほしいよ。
ー過去のレパートリーはあまりやらない、と。
Nic:イエス(笑)。新しい曲をやる方が、古い曲をやるよりエキサイティングだもの。昔の曲の中には、俺じゃないほかの誰かが作った曲のように聴こえるものもある。以前感じられたような曲との結びつきが、今では感じられなくなっていたりするんだ。過去のレパートリーをリクエストされることもあるけど、俺たちはライブパフォーマンスが評判のバンドだ。なぜ、ライブの評判が良いかというと、ステージに上がって好き勝手やっているからだろ。それはステージを満喫して楽しんでいる証拠なんだ。昔のヒット曲をステージで披露しているバンドもいるけど、俺には楽しそうに見えない。そういうバンドは俺たちみたいなライブの評判はないよ。俺たちも、自分たちにとってどうでもいいような昔の曲ばかりライブでやっていたら、バンドとしてここまで来れなかったと思う。でも、昔の曲はしばらく時期を置くと演奏するのが再び楽しくなったりもするんだ。だからもし20周年記念ツアーをやるとしたら、昔の曲を引っ張り出して披露したら楽しいかもしれないな。