※2022年閉店
店主の宮園は、鮨の夢を見る時間もない。たいていの夜は、最後の客が朝4時ごろまでいるので、その後1時間店の掃除をしたら、もう築地にその日のネタを買いに行く時間だ。そのあと、少し寝たら、昼過ぎには店に戻ってくる。驚くことに(そして少し心配になる)、店に定休日はない。自衛隊にいたこともあるが、板前の生活の方がよっぽど大変だ、と宮園は笑う。大変な仕事量にもかかわらず、元気で明るい男なのだ。
さらに、たまにしかない休みの日には、他店の鮨を食べに行く。これだけの苦労とこだわりには、常連になる価値がある。そして期待は裏切られない。夜に店を訪れると、舞台装置のように美しい店内、親密な空間、見事な陶器、そして思わず息を吞む鮨を堪能できる。海老の刺身は濃厚で、米酢と穀物酢をネタによって使い分けたにぎりは、東京トップクラスの美味しさだ。夏に行くなら、忘れずにアワビを注文しよう。6〜7時間かけて蒸されたアワビを生わさびと一緒に味わえる。
席は9席しかないので、前もって予約するか、遅い時間に行こう。ただしラストオーダーは25時なので、あまり遅くにならないように。宮園にも寝る時間は必要だ。