アンティークな、ろ過装置付のコーヒー沸かし機のほかに何もない内装。店名が示すように調和の取れた店だ。店内は小さく、7人分の座席しかない。しかし、でしゃばったサービスもどこにもない。コーヒーと向き合う自分だけの時間がここでは確保されている。もちろん会話を楽しむことも可能だが、狭いゆえに店主と向き合った会話となる。コーヒー好きにはこのような親密な関係は好まれるだろう。自分の選んだ豆が測られ、挽かれ、ネルの中で形が整えられるその工程は、どれをとっても丁寧すぎるほどだ。しかもカップまで自分で選ぶことが出来る。店主は、マシーンを使うコーヒーメニューを作る際には古いビバ レネカを高々と鳴らし始める。この機械は非常に古く、エルビス プレスリーが軍隊に入隊したころに初めて使われたのではないかと疑ってしまうほどだ。我々が注文したタンザニア産のコーヒーは軽いボディーの味で、その繊細な香りはあたかもカーテンの隙間から朝日が差し込んでくるかのようだった。しかし、しっかりとした青臭みのような後味とさわやかな草のような苦味がこの競争社会で生きる自分をあきらめさせ、バリスタの道に進んでしまおうかと思わせるようだった。人里はなれた立地という難点を除けば、非常にいい小さなカフェだが、その難点ゆえに名所でいられるのかもしれない。
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