開業から8年を迎えた九段 おおつかは、夫婦で切り盛りしてきた本格懐石料理店だ。靖国神社から通りを隔てた場所に位置し、静かで趣あふれる空間となっている。新鮮さを保つため、メニューは月変わりで提供している。伝統的だが独創的な方法で、季節の食材を主役にした料理が提供される。ユニークな食材を使った驚嘆の料理を期待してもらいたい。
お椀から始まる食事は、柔らかいトウガンの厚切りと絹のように滑らかな素麺が透明なだし汁に浮かび、オクラとジュンサイがアクセントとなっている。その後、美しい扇形の皿に盛り付けられた4種の前菜が続く。酢仕立てのゼリーで和えられたイチジクには驚きだ。ダイコンとタコの煮付けは風味豊かな醤油だしで、柔らかくなるまで煮込んである。選り抜きの夏野菜が信じがたいほど軽い衣で揚げてあり、ワサビでアクセントをつけた、湯葉と生シロエビの料理は見事だ。
おそらく唯一の懐石料理店だろうと思うが、新潟米、鳥取の鶏肉、滑らかな卵といった、最高の食材で作った看板料理の親子丼が1,080円という驚きの価格で楽しめる『親子丼ランチ』を提供している。味噌汁と自家製の漬物と一緒に出される。同店をディナーで利用する前に、ランチで気軽に足を運べるのが嬉しい。