大阪寿司の代名詞的一軒として知られ、「箱寿司」発祥の地としても畏敬される本町の老舗が「吉野寿司」だ。創業1841年、170年を超える歴史を誇る。今ではオフィス街の一等地になってしまった当地だが、ビル風になびく趣あるのれんをくぐる客は後を絶たない。
7代目となる店主、橋本卓児は大阪寿司の魅力をこう語る。「それは時間をかけた下仕事の芸術です。タイは塩締めし1日寝かせてうま味を引き出す。シイタケは5時間ゆっくりと炊いた後、1日寝かせて味を馴染ませる。そんな無数の手間と、長い時間が小さな箱に凝縮されているのです」
名物である「箱寿司」(1,760円、税込み)は、 戦前から継ぎ足されるたれで焼く「活け穴子」、瀬戸内の小鯛(こだい)、厚焼き卵、エビ、シイタケ、焼きのりなどを木枠の箱に入れて押した寿司。心華やぐ色鮮やかさに加え、かみしめるごとに寿司飯とネタが口で一体化し、深々と響くうま味は、まさに歴史に磨かれた、至高の名人芸のたまものである。
難波、新大阪の支店も含め、テイクアウトスタイルで営業している。「箱寿司」のほか、「棒寿司」(タイ、サバ、カニなど)、「蒸し寿司」といった多彩な大阪寿司の世界を楽しみたい。