仕事帰りに一杯ひっかけて帰る。それが褒美たるのは、そう簡単ではないとしみじみ思う。地下鉄の北加賀屋駅から徒歩1分。ちゃんと「その日」をすてきに締めくくってくれるのが「豚珍巻(とんちんかん)」だ。
コンパクトな店内を満たす香りに「おいしい餃子が食べられる」と確信しつつ、まずはニンニクがしっかりきいた自家製の「みそキュウ」(450円、以下全て税込み)で「生ビール」(中、480円)を一杯。注文した料理を待つ間も、一見少し強面な大将と世話好きで明るいおかみとのやり取りが耳に心地よい。
聞けば、本格中華料理店で修行をしたという大将。一度別の仕事に就いたものの、料理への愛情は衰えることなく、この店を開くに至ったのが2008年だという。そこからずっと夫婦二人三脚で切り盛りしてきた。
と、ここで看板メニュー「とんちん餃子」(400円)が熱々の鉄板に乗って登場。ハフハフ言いながら薄い皮をパリッとかめば、ジューシーな肉感に青森県産ニンニクと高知県産ショウガの豊潤な香りが相まって、またもビールが進む。ちなみに、ラー油もたれも全て自家製だ。
もう一つの人気メニュー「海老餃子」(500円)は塩で。これまた塩に引き出されたエビのうま味とプリプリの食感に思わず顔がほころぶ。トロッとしたあんの「とんちん春巻き」(560円)も、具材たっぷりで食べていて楽しい。
「好きだからやってる、それだけ」と大将は語る。その純粋な思いから生まれるおいしい料理、そして店の空気感。こういう店があるからこそ、我々は明日も働けるのだ。