誰かがのれんをくぐるたび、店内に響く「まいど」の声。大阪人の多くはこの言葉で出迎えられることが大好きである。「いらっしゃいませ」とほぼ同義で使われる場合もあるが、元々は「毎度ありがとうございます」が省略された言葉。つまり、店に顔を覚えてもらっている証拠として機能する一面もあるのだ。
船場センタービル地下2階で50年以上営業を続けている「天友(てんとも)」は、そうした「毎度」足を運ぶ常連に愛される店だ。中にはウン十年前の現役時代からずっと通っているという、「元・会社員のおじさま」たちの姿も見られる。
ランチは11時から、オープンすると同時に人が入り始める。名物は「豆ごはん定食」(730円、以下全て税込み)。白に黄緑が映える鮮やかな豆ごはんは、かめばかむほど深い味わい。セットの天ぷらや冷奴、味噌汁と合わせて、ホッとできるランチライムが過ごせるだろう。
お造りや揚げ物など、日によってメニューが変わる「日替わり定食」(750円)も人気だ。冬季(11〜5月ごろ)限定で登場する「粕汁」を心待ちにするファンも多い。
15時からは居酒屋モードに変わる。店主におすすめを尋ねると「これ、といった商品があるというよりも、総合力で勝負」と一言。言葉通り全70種類以上という豊富さで、よく味の染みた「おでん」(1品100円から)といった定番ものから、サバのきずしを千枚漬けで挟んだ「かぶらきずし(しめサバ)」(550円、冬季限定)のような珍しいものまでバランスよく並ぶ。
ランチとともに、毎日食べても飽きのこないおいしさ、そして何が出てきても間違いないという安心感が長く愛される理由だろう。