江戸時代に森田久造が開いた寿司店からその歩みをスタートさせた、「おかげ横丁」の「すし久」。明治から昭和初期には料理旅館として最も繁栄し、天皇の命を伝える使者・勅使(ちょくし)の宿を務めたことでも知られている。
現在は、料理店として伊勢志摩の郷土料理「てこね寿し」を中心に提供。もともとは、とれたてのカツオを船上でさばいて醤油に漬け、白飯の上に乗せて豪快に手で混ぜて食べる漁師飯として知られるてこね寿しだが、同店では、天ぷらや季節の小鉢とともに楽しめる(内容は松竹梅によって異なる)。肉厚にカットされたカツオが乗った酢飯には大葉が混ざっており、想像以上にさっぱりとした味わいだ。
建物は、江戸時代当時の面影を残す形で1989年に復元改装されたもの。吹き抜けの梁(はり)には、1869年の遷宮時に下賜された宇治橋のケヤキ材が使われているのも珍しい。毎月末日の「みそか」には、三重県松阪市出身の落語家・桂文我を中心に、若手の噺家(はなしか)も多く出演する落語会を開催しており、この空間で落語を楽しめるとあって毎回人気を博している。
もう一つ、同店を訪れた際に欠かさずチェックしたいのが店の外に掲げられた看板だ。この看板は江戸時代から使い続けられているもので、片面は漢字で「鮓久」、もう一方には平仮名で「すし久」と書かれている。なぜこのような仕掛けになっているのかというと、「自分はどの方向から来たのか」が分かる目標として、当時「お伊勢参り」にやって来た人々の手助けをしていたから。一枚の看板を通して、当時の文化を体感してみるのも面白い。
営業時間は季節によって異なるので、訪れる際は店に確認しよう。
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