渋谷駅の雑踏を抜けた先、「裏渋」エリアにある隠れた人気小料理店。大将の井上隆之が提供する旬のおまかせコース(8品〜)は、本格的な割烹を下敷きに洒脱な工夫を凝らした家庭的な日本料理である。酒の名産地である秋田出身の女将・井上仁美が選別した日本酒とのマリアージュは、日本食のセンスとレベルの高さの証明に他ならない。
中でも「アジフライ」は絶品だ。なめろうを挟んで揚げてある変わり種で、衣のサクサク感とふっくらとしたアジ、なめろうの粘り気という食感が楽しさもさることながら、混ぜ合わさっている薬味類が絶妙で何枚でも食べたくなる。骨せんべいが添えてあるのが「日本酒と季節のおつまみ」というコンセプトを体現している。この一皿だけでも酒が進んでしまう。
実は「アジ釣りが趣味」だと語る女将が釣り上げたものも多いのだとか。今日のアジフライはどうなのか聞いてみると良いつまみ話になるかもしれない。
なお、ひげ文字で「はろう」と描かれた看板は上堀内浩平によるもの。店内もよく見ればコートかけはこけしなど随所に遊びが込められているのも良い。