ジョンティは非常に珍しいレストランで、アルザス地方料理を専門とする。ドイツとスイスに隣接したフランス北東部のアルザス地方の料理を出す、家庭的なブラッスリーだ。ピンとこない人も多いだろうが、パリですらアルザス料理の店を探すのは難しいのだから、東京で知られていないのも当然だ。店のテーブルにはフランスの地図が敷いてあるので、料理が運ばれてくる前にアルザスの場所を確認したい。察しの通り、アルザス料理は素材にも料理にも立地的な影響が見られる。ほとんどのフレンチビストロがエスカルゴやクレームブリュレを出す一方、ジョンティでは、たくさんの豚肉料理や、スペッツェルと呼ばれる卵麺のパスタ、イタリアのパネトーネに似たクグロフというケーキ、「黒い森」と呼ばれるケーキなど一般的にはドイツ料理とされているメニューを食べることができる。
店の看板メニューの『タルトフランベ』は、発酵させないで作った白チーズのフロマージュフレを使った薄い四角いピザで、アルザスとそこに隣接するドイツ諸州以外ではほとんど食べられない。ジョンティの『タルトフランベ』は、手作りの生地にクリーミーなチーズ、細切りにしたベーコンとオニオンが乗っていて、絶品だ。どの料理もアルザス流にボリュームたっぷりだが、もっとガッツリいきたければもう一つの地方料理を試してみよう。豚肉のソーセージ、脂たっぷりのベーコン、ポテト、ザワークラウト、マスタードが皿に山盛りの『シュークルートガルニ』を食べれば、その日1日は満腹で過ごせるだろう。
素朴で腹にたまる料理のほとんどは1,200~1,400円で、ランチは800円から食べられる。店内は可愛らしく、赤白チェックのテーブルクロス、黒板の手書きメニュー、少ないが厳選されたフレンチワインのリスト、飾られているアルザス地方の絵や写真が印象的だ。ジョンティでアルザスの料理とサービスを味わったら、そのあと何日も、現地に行って美しい村々やワイン畑を巡ることを夢見るに違いない。