「ソウルフードを食す」とは、その土地が持つ記憶、生きてきた人々の日常の記憶に舌で触れるということではないだろうか。
現店主の母がおよそ70年前に始めたという「お好み焼き 福島」。経済的にも苦しい家庭が多かった当時、手軽に腹を膨らせることのできる「洋食焼き」が人気だった。そのため、この店の「お好み焼き」は、生地とキャベツを混ぜてから焼く「大阪焼き」とは違う。薄く引いた生地の上に具材を「乗せ焼き」していくスタイルは、洋食焼きを基礎としている。
店主が「先代の時代から焼き方もソースも味も変わってへん」というお好み焼きは、「豚玉」「イカ玉」ともに450円(以下全て税込み)、「ミックスモダン」が700円という「庶民の味方価格」で味わえる。
長い間守り続けてきたからこそ、相当なこだわりがあるのでは、と店主に問うてみるも「なんもない!」とおどけて常連客の笑いを誘う。「大阪焼きにしてくれと言われたらするし、トッピングの持ち込みにもプラス100円で対応してるしね」と変幻自在っぷりも魅力だ。
トッピングといえば外せないのが、店のある此花エリアならではの具材「まめ天」(150円)だ。かき揚げのような丸い形をした豆の天ぷらがお好み焼きに入ると、油の甘さがプラスされてコクがグッと深まる。
ああでもないこうでもない、と常連客との間で繰り広げられる大阪弁のトーク、それもまたおいしさ倍増の裏トッピングなのである。