「天国にいちばん近いBAR」と呼ばれる隠れ家が静岡県にある。モルトウイスキー愛好家なら一度は足を運びたいと願う店であり、そのコレクションの数々は、スコットランドの愛好家から「珍しいスコッチを飲みたければ日本へ行け」と揶揄(やゆ)されるほど。
オーナーは、世界でその名を知られるモルトコレクター。そもそもモルトの蒐集(しゅうしゅう)を始めたのもシンプルに自身が愛飲するため。本人曰く「狂気にかられ」集めた品々だそう。そんなウイスキーたちに陽の目を浴びせてやりたい......。そんな願いから開いたバーだ。
よって、メディアの取材を受けることはほぼない。僥倖(ぎょうこう)にも、メディアとして初めて取材を許されてから2018年で15年が経った。それ以来、ほぼ取材を受けていなかったことを今回足を運び、初めて知った。
満を持し、東京にそのコレクションを持ち込んだのが2007年11月。一部のモルト愛好家に「そんな幻のウイスキーが実在するわけない」「あれは偽物に決まっている」と陰口もされた。だが、そんなクリーピーな輩もすっかり姿を消した。静岡まで足を運ばなければ拝めなかった数々の逸品を気軽に銀座で味わえるなど、至福とせずしてなんと呼ぼうか。
もちろん、コレクターものに近いため、廉価(れんか)ではない。しかし、それほどの品々をハーフショットからテイスティング可能であり、価格はボトルの後ろに明記してある。明朗会計。
さて、薀蓄(うんちく)はもう十分だ。ギネスブックに記載されるほどのモルトコレクター、故エドワード・ジャッコーネに匹敵するほどの逸品たちを素直に愉(たの)しみたい。