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東京メトロは2020年3月18日に、ゆとりと潤いのある文化的空間の創造を目的に、駅の新設やリニューアルを機にパブリックアートの設置を進めており、銀座線京橋駅、銀座駅、虎ノ門駅、青山一丁目駅、外苑前駅への設置を10月16日完了した。当初2020年6月の公開を予定していたが、コロナ禍の影響でこの時期にずれ込んだかたちだ。
東京メトロのうち、商業エリア(三越前駅~京橋駅)、銀座エリア(銀座駅)、ビジネスエリア(新橋駅~赤坂見附駅駅)、トレンドエリア(青山一丁目駅~渋谷駅)にバランス良く置かれている。作品は以下の通り。
京橋駅(3番出口付近):『Stripe Drawing - Flow of time』(中西信洋 原画)
縦のストライプに配置されたガラスは吹き抜ける風や空気の流れを表す。照明の明るさが変化し、さらにガラス面を通した光は角度によって色彩を変化させ、時とともに移ろう。この光が作り出す色彩の空間によって、この場所を流れる時間に安らぎがもたらされることを願ったという。
なお、AGCは本作品を制作、寄贈しており、それを記念してAGCスタジオ(AGC studio)で展覧会『TiME to RESONANCE』の開催を予定していた。現在は新型コロナウイルス感染症のために休館しており、ウェブギャラリーで展示を公開している。
銀座駅(B6出口付近):『光の結晶 / Crystal of Light』 (吉岡徳仁 原画)
クリスタルガラスにより放たれた無数の光彩が一つの大きな光となる。その光は、世界の平和と輝く未来を映し出すという。反射する光で幻惑させられるような気持ちになり、遠くから見ても駅構内の殺風景な景色の中でひときわ存在感を放つ作品となっている。
行き交う人々に輝きを与え、銀座駅の新しいシンボルとなることを目指して設置された。協賛は資生堂。ギンザシックス(GINZA SIX)に展示されている吉岡の作品『Prismatic Cloud』(10月下旬まで展示予定)も併せて見に行きたい。
虎ノ門駅(渋谷行きホーム):『白い虎が見ている』 (中谷ミチコ 原画)
中谷は彫刻は凸面という考えを覆し、材質の内側に凹むことで作り出す陰影や凹凸で作品を構成する。少女たちの群像彫刻で、凹型のレリーフが錯視を引き起こす点がポイントだ。少女は虎ノ門だけに、白い虎の面を被っている。
同じ少女を異なる左右から見比べると、鑑賞者の体の動きと連動して少女も向きを変え、こちらを眺めているように見える。虎ノ門駅を往来する全ての人を見守る新しいシンボルとして期待されたという。協賛は森村商事、日本土地建物、野村不動産。
青山一丁目駅(渋谷方面改札付近):『みんな友だち』(野見山暁治 原画)
青山一丁目駅のコンセプトは「優雅な街並み」だ。野見山らしい抽象的な表現でありながら、その色彩がみずみずしい草木を思わせるステンドグラス。作品が人々をつなぐ豊かな場になることを意図している。協賛は三菱地所、メトロ文化財団。
外苑前駅(4b出口付近):『躍動の杜』(山下良平 原画)
スポーツ施設が多く集まっていることから「スポーツの杜」としても知られる明治神宮外苑にちなみ、銀杏並木道を全速力で駆け抜けるスプリンターやアスリートの活躍などを描いたステンドグラス。鑑賞者が作品世界に吸い込まれていくようなイメージで絵作りしたという。東京五輪の後も、この作品が外苑に訪れる人々を本物のスポーツの感動へいざなうことが意図されている。協賛は伊藤忠商事。
それぞれの作品は駅のイメージにちなんだものになっているだけではなく、協賛企業が最寄駅にある場合も多い。そのことが一層各作品の存在意義を高めている。作品を見た後は、駅を出てゆかりの街を巡ってみるのもいいだろう。
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