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鉄工島FES開催目前、熟練の技とアートが融合する工場内を初公開

テキスト:
Miroku Hina
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大田区に浮かぶ人工の島、京浜島(けいひんじま)を知っているだろうか。 1986年に竣工したこの島は、地域の大半が工業団地。特に機械金属加工の工場が多く、島内では、各国へ輸出する半導体やロケットの先端、パラポラアンテナなどが生産されており、その技術力の高さは世界的にもトップクラスだ。

そんな一風変わった「鉄工所の島=鉄工島」の特徴や歴史の魅力を発信しようと、島内では2016年から工場の技術と、アーティストたちの創造性を掛け合わせたイベント鉄工島FESを開催。2018年は11月4日(日)の開催を予定している。当日は島内にある4つの工場や製作所などが会場となり、ライブやアーティストの作品展示が行われる予定だ。

10月18日には、「鉄工島アイデアジャンボリー」の一環で島内の工場を巡るツアーが行われた2019年のフェス開催に向け、発足以来、初めて一般から出展者を募集する同フェス実行委員会が、出展に興味のあるアーティストなどを対象に実施した今回のツアー。フェスに協力している島内の工場を見学するツアーを皮切りに、次年度の招聘アーティストが生まれるのだという。当日は、美術大学の学生や、アクセサリー作家、会社員など約20人が集まり、工場の職員らの案内で、普段は目にすることのない工場内部の様子を見学した。当日の様子を、写真と共にレポートしよう。 

最初に訪れたのは、70年以上、金属の絞り部品加工を専門に手掛けている北嶋絞製作所。当工場に勤務し、フェスにもアーティストとして出展している高橋輝雄(たかはし・てるお)が工場内を案内してくれた。当工場では、主にジェット戦闘機に使用される燃料タンクの先端部品などを生産しており、見学中も熟練の従業員らが手早く金属材料を加工していた。

こうした工場から出る金属の端材などが、アーティストの作品の材料となる

ツアーで訪れた工場は、材料となる端材や会場の提供だけでなく、アーティストと協力して作品を作り上げるパートナーでもある。そして、高橋も仕事の合間にフェスに参加するアーティストの作品制作をサポートしている一人だ。見学の最後には、工場でボツになった部品などで制作中の作品の一部分を披露し周囲から感嘆の声があがったが、「たまに、従業員がゴミだと思って捨てちゃうんですけどね」と明かし、参加者らを笑わせていた。

制作した部品を手に、金属の風合いにこだわり「端材を外に置いてしばらくサビさせることもある」と語る高橋

続いて訪れたのは、管工事や、エレベーター設置などの機会器具設置工事を専門に行っている須田鉄工所。フェス実行委員会の拠点でもあるBUCKLE KÔBÔ(バックルコーボー)が隣接しており、印象的な看板やグラフィックが目を引いた。

工場内でくつろぐ猫たちの餌を小脇に抱え、参加者らを案内してくれたのは、同社代表の須田眞輝(すだ・まさき)。主生産品である浄水槽タンクの制作過程などを詳しく説明してくれた。普段は見ることのできない浄水槽の内部や溶接の様子などを、参加者らは興味深そうに覗き込んでいた。

 職人もアーティストたちからのアイデアを楽しんでいる

フェスの開催について、須田に一帯の工場がどのように捉えているか尋ねると「自分たち職人は、図面通りの部品を正確に作るのが仕事なので、その中に創造性はない。でもここに出入りするアーティストたちは対極で、自由な創造性が全てです。島の職人も、彼らが出す様々なアイデアを楽しんでいます」と、教えてくれた。  

須田鉄工所代表の須田

ツアーの最後は、フェスに出展するアーティストたちの制作工房であるBUCKLE KÔBÔを訪問。参加者らとフェス実行委員会で、実現したい作品アイデアの意見交換などが行われ、解散となった。

応募者の中から選ばれたグランプリ受賞者には、2019年のフェス開催での作品展示の権利が贈られるほか、前出の滞在型のアートファクトリー、BUCKLE KÔBÔを開催に向けて1年間無料で利用できるという。1028日(日)までホームページから応募を受け付けているので、興味のある人は急ごう。

まずは、114日(日)のフェスに参加して、モノづくりの現場と、アート、音楽が一体となった空間に浸ってみるのも良いかもしれない。

鉄工島FES 2018の詳細はこちら

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