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都営交通の「整備現場」にフォーカスした写真集『MAINTENANCE』が、2018年3月20日(火)に発行される。撮影を担当したのは、世界的写真家集団「マグナム・フォト」に所属している写真家のマーク・パワー。世界の様々なバックヤードを撮影してきた彼だが、本格的に鉄道やバスの整備現場を撮影したのは、今回が初めてだったそうだ。
パワーが写したのは、整理整頓された道具や、几帳面に干された軍手、普段はものすごい速さで車両が通り過ぎているであろう地下鉄のトンネル、車両検修場の様子など。撮影中は、パワーに「あれを撮ってほしい」「これを撮ってほしい」ということは一切せず、彼の感覚で、撮りたいと思ったものだけを撮影してもらったそうだ。全てを撮り終えたパワーは、「この現場は小宇宙のようでした。そこに一つの世界が出来上がっている感じがしました」と話していたという。
あとがきには、編集を担当した高木基のこんな文章があった。
「さまざまな作業を行う場所ではあるのだが、一つひとつが丁寧に扱われ整っている。京都の神社仏閣よりも、里山の古民家よりも。日本人の『用の美』がそこにはあると思えた。この現場は私たちに教えてくれる。美しいものが美しいのではなく、美しく使われているものが美しいのだ」。
首都圏3000万人の移動を支える整備現場が「美しい」ことを伝える写真集。彼の言葉通り、まさに日本人の「用の美」がたっぷり詰まっている。
写真の中には、ポートレイトのようなものや、作業中の姿など、スタッフを写したものも多くある。朝礼か何かの写真だろうか。用の美という部分からは少し外れてしまうかもしれないが、個人的には、20人くらいのスタッフが集合している中で、1人だけあくびをしている人が写っている写真が気に入っている。カメラを意識していない自然体の写真で、彼らの日常を少しだけ覗けた気分になったからだ。
写真集は、全国の書店やamazonなどのオンライン書店、都営地下鉄の駅長事務室で販売*される。普段、我々が当たり前のように都営地下鉄や都営バスで移動できるのは、日々の保守点検によって、安全が保たれているからだ。その安全が生まれる整備現場の「美」を見るべく、ぜひ手に取ってみてほしい。
*写真集が販売される都営地下鉄の駅は、五反田駅、新橋駅、浅草橋駅、日比谷駅、水道橋駅、巣鴨駅、高島平駅、市ヶ谷駅、馬喰横山駅、本八幡駅、上野御徒町駅、門前仲町駅、大門駅(大江戸線)、青山一丁目駅、都庁前駅、練馬駅の16駅