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自由に旅行することができた日々を恋しく思うかもしれないが、家にいても世界を旅することは可能だ。日本の主要観光地を訪れたことがあり、もっと珍しい場所を探しているのであれば、徳島県の山奥にあるこのちょっと奇妙な村をGoogleマップで訪れてみよう。名頃(なごろ)集落は「かかし村」とも呼ばれる小さな村。350体以上のカカシが村のあちこちに置かれており、まるで住民と同居しているようだ。一方、実際に村に住んでいる住人は30人未満という限界集落でもある。
Googleマップの360度ストリートビュー機能を使って村をバーチャル散策すると、この奇妙な光景を自分の目で確かめることができる。古びた古着に身を包んだボロボロなものとは違い、名頃村のカカシは村の住民、月見綾乃の手により丁寧に作られている。一見リアルでびっくりするが、どの人形の表情も温かい。人形にはそれぞれの目的があり、役割に応じた衣装が用意されている。座っている人形や仕事をする人形、オリンピックで競い合うグループなど、年齢や職業を問わない、さまざまなカカシに出くわすことができる。
ドイツの映画監督フリッツ・シューマンは、2014年にこのかかし村のショートドキュメンタリーフィルムを制作した。『人形の谷』と名付けられた本作では、月見自身がインタビューに答えている。「父親に似せて作った」というのが記念すべき一体目のカカシ。もともと畑の種を食べている鳥を寄せ付けないように作ったのがきっかけだったという。その後、住民が自分たちのためにも作ってくれと頼みに来るようになり、いつの間にか彼女の作品が小さな村を埋め尽くすようになったのだ。
名頃村の過疎化が進んでいることもまた、悲しい現実である。しかし、今では彼女の作品を見に地元の人々だけでなく遠くから来る人も増えており、観光客から注目されている。
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