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テキスト:清水康介
東京オペラシティアートギャラリーとTOTOギャラリー・間で個展が同時開催され、話題沸騰中の建築家、田根剛(たね・つよし)。同展でもエネルギッシュな活躍で来場者を驚かせている田根が、シチズン時計とともに6年にわたり取り組んできたインスタレーション作品『Light is Time - We Celebrate Time Ver.』が、南青山のスパイラルガーデンにて展示されている。開催期間は、2018年12月7日(金)から16日(日)まで。スパイラルを象徴する円筒形のアトリウムに、2014年の『ミラノサローネ』でも絶賛された、圧倒的な光の空間が広がっている。
金色にきらめく光の渦に包まれているかのような空間を構成しているのは、意外にも、腕時計の基盤装置である「地板」という、一見すると地味な素材だ。会場いっぱいに螺旋状につり下げられた、7万2000個にも及ぶ腕時計の地板の一つ一つが、それぞれ光を細やかに反射することで、浮遊感にあふれた宇宙的で幻想的なイメージを立ち上がらせる。地板という要素はもちろんのこと、円を描く形状や、60や12といった時間と縁の深い数字を想起させる7万2000という数が、同作のテーマである「時と光」の「時」を、正確に表現する。
シチズン時計の創業100周年を記念したイベント『CITIZEN “We Celebrate Time”』の目玉展示として、同作が紹介されているのだが、会場では、そのほかにも時を巡る展示が様々に行れている。現在の地球上で、1秒間に何が起こっているかを端的に示した映像や、人類が発展させてきた時間に関する思考の歴史、正しい時を告げる精密な時計を作るための道具たちなど、興味の尽きない内容になっている。
1秒間に赤ちゃんはハイハイで27cm進むらしい。時を巡る展示より
いわゆる「サイクロイド振り子」の周期の数式も
また、寺山修司(てらやま・しゅうじ)とシチズンの関係にも注目したい。同社の広報誌『Citizen Sales News』に寺山が寄稿していた、時間に関する連載を一部まとめた書籍『時をめぐる幻想』(東京美術)が2018年に発刊された。山本タカトなど、気鋭の画家16人の描き下ろしの絵を掲載した物語画集として出版された同書も、本展で大きく取り上げられている。スピーカーから流れる、寺山による文章を朗読しているのが、シチズンのデザイナーをはじめとする同社の社員というのもユニークで面白い。
写真右下は山本タカトの作品
森山未來(もりやま・みらい)などのアーティストによるパフォーマンスや、子ども向けのワークショップも多数開催される本イベント。シチズンが刻んできた歩みをきっかけに、時間について考えを巡らせながら楽しんでほしい。