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現代音楽家でトランペット奏者のジョン・ハッセルが、長らく患ってきた病気に加えて新型コロナウイルスによって健康リスクの緊急性が高まっていることを背景に、今後の安全で持続可能な生活を確保するための基金を設立し、経済的支援を募っている。
ハッセルは1937年にアメリカに生まれ、現在83歳。学生時代にセリー音楽を学んだのちにテリー・ライリーと出会い、ミニマルミュージックの名作『In C』の録音に参加。その後はインド古典音楽などさまざまな地域の民族音楽を学び、西洋と非西洋を横断した音楽を追求した。
エレクトリックジャズやアンビエント、ワールドミュージックを融合した1977年のアルバム『春分点(Vernal Equinox)』は彼の音楽的な思想を象徴する代表作であり、同作に感銘を受けたブライアン・イーノはジョンにオファーを持ちかけ、共作アルバム『第四世界の鼓動(Fourth World Vol.1, Possible Music)』(1980年)を完成させた。ハッセルの音楽と彼が提唱した「第四世界」という発想は、デヴィッド・バーンやデヴィッド・シルヴィアンをはじめとする多くのアーティストに影響を与えた。
今回のハッセルのドネーションに際して、ブライアン・イーノは以下のようなコメントを寄せている。
「ジョン・ハッセルは、過去50年間で最も影響力のある作曲家の一人です。彼が『第四世界』と呼ばれる概念を発明したことで、世界各地の音楽文化が深い尊敬と新鮮さを持って注目を集める道が開かれました。彼の作品は私だけでなく他の音楽家にも大きな影響を与え、音楽性を大きく変えました。また、彼のユニークな知的貢献も特筆すべきもので、彼は偉大な音楽家であると同時に、疲れ知らずの理論家でもあります。
ジョンは今、大変な時期を迎えています。彼に恩義を感じている我々のような音楽家は、この基金に寄付をすることで彼に感謝の気持ちを伝えたいと思っています。」
ポップシーンでのヒットとは無縁だった彼だが、その音楽キャリアは常に革新的で、近年ではクラブシーンでも人気を博すようになっていた。彼の音楽が伝える多様性は、混迷や対立が絶えない世界では痛烈なメッセージとなり、癒しにもなる。なんとか健康問題をクリアして、今後もその才能をいかしてもらいたいものだ。
基金の目標金額は20万ドル。寄付の募集は以下のサイトにて行なっている。
『Jon Hassell Fund』の詳しい情報はこちら
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