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テキスト:吉澤 朋
6月中に梅雨明け宣言がされた関東甲信地方。既に猛暑の日もあり、この長い夏をどう乗り越えたものか、暗たんとしている人も多いのではないだろうか。
東京の夏の暑さは確かに耐え難いが、その上をいくことで知られるのが、京都だ。盆地に集まる湿気と熱気。まさに天然のサウナ状態だが、(筆者の思い込みかもしれないが)道ゆく人はどこか涼し気な表情なのはなぜだろう。
打ち水やのれん、格子越しの景色、水ようかん…。体感温度は同じでも、触れるもの、見るもの、口にするもの、全てがどこかしら涼し気だったりする。京都には、五感で季節を楽しみ、暑さをしのぐ工夫が溢れているのではないだろうか。
京都に惹かれ、京都に通い何十年という工芸ライターで編集者の田中敦子がプロデュースする展示会『ひんやり、はんなり、夏いろ京都』が7月11日(水)〜24日(火)、銀座三越7階GINZAステージで開かれる。京ならではの涼のとり方を、手仕事や工芸品を通じて東京でも体感できるようなイベントだ。
会場には、陶器や漆器、木工、ガラス、布など、京都の老舗の品から若手作家の作品まで幅広く並ぶ。これらは、青モミジや川床、水を打った石畳、白木のカウンターに並ぶ京料理などをイメージしてセレクトしたものだという。
筆者が特に気になるのは、揺らぎと透明感が同居する、杉江智のガラスの器。田中が「水を張って青モミジを浮かべて眺めたい」と言うのもうなずける。小坂大毅の京焼・清水焼の器も涼しげだ。夏は火を使う料理が億劫(おっくう)になり、そうめんや冷や奴、サラダなど、切って盛り付けるだけというようなメニューも増える。無地の白磁の器だったら淋しげに見えてしまうかもしれないような料理も、この藍色の絵付けなら美味しく見せてくれそうだ。
創業400年の日本最古の木綿商という永楽屋が仕上げる手ぬぐいも、ぜひチェックしてほしい。型友禅の技法を活かして染め上げるという1枚には、季節を感じさせる世界観が収められており、見るからに涼し気だ。視覚から涼を呼び込むアイテムとして、壁に掛けるのはどうだろう。手軽なインテリアとして、季節感を空間に取り入れることができるのも、手ぬぐいの数ある用途のひとつだ。
7月14日(土)14時からは田中によるギャラリートークも開催される。