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2019年3月29日(金)、約3年にわたり大規模改修工事を行っていた東京都現代美術館がリニューアルオープンした。オープン初日の29日は、20時までの夜間開館(展示室入場は閉館の30分前まで)があり、入館料も無料となっているので、ぜひ実際に訪れてみてほしい。
今回の改修は、経年劣化に伴う設備機器の更新をメインとするものであり、抜本的な変化があったわけではないが、エレベーターの増設や多目的トイレの拡充のほか、子育て支援設備の充実などが図られ、時代に即したものとなった。従来からベビーカーの貸し出しなどを行っていたが、併設する美術図書室に子ども向けのライブラリーを備えるなど、今回のリニューアルでも子育て面については特に注力しているようだ。1995年に開館した同館から強い影響を受けたコアなファン層が、子育て世代になっていることも関係しているかもしれない。
こどもとしょしつ
外見上での変化を一番感じられる点は、館内のサインだ。スキーマ建築計画を率いる建築家の長坂常(ながさか・じょう)がサイン什器設計を、富山県立美術館のサイン計画なども手掛けたデザイナーの色部義昭(いろべ・よしあき)がサイン計画を担当している。巨大な建築空間の圧迫感を中和させるような軽やかなデザインが印象的だ。隣接する木場公園との一体感が増したところにも、子育て層にアートを楽しんでほしいという同館の狙いが見える。
ミュージアムショップは引き続きナディッフ コンテンポラリィ(NADiff contemporary)が手掛ける
今回のリニューアルでは、飲食店施設も一新され、「スープストックトーキョー」などで知られるスマイルズが展開する100本のスプーン、二階のサンドイッチの2店がオープンした。あざみ野、二子玉川に展開する100本のスプーンは、すべてのメニューにハーフサイズを用意しているほか、季節に応じた離乳食なども提供する。新業態となる二階のサンドイッチは、その名の通り、同館2階に位置するサンドイッチ店。ベトナミーズがなくなってしまったのは寂しいが、鑑賞前の虫養いに気安く利用できそうだ。
100本のスプーン
肝心の展示室については、コレクション展示室入り口すぐの扉から、屋外展示場へ出られるようになったことが大きな特徴と言えるだろう。実はリニューアル以前から屋外展示場として存在はしていたのだが、実際に使われることがほとんどなかったこのスペース。広さのわりにあまり知られていなかった空間に、今回新たに世界的なサウンドアーティスト、鈴木昭男(すずき・あきお)の作品『道草のすすめ —「音 点(おとだて)」 and "no zo mi"』が設置された。作品は、屋外展示場のほかにも館内にひっそりと設置されているので、同館の探索がてら、こちらもぜひ探し出してみてほしい。
耳の形をした足跡の上に立って周囲の音に耳をそばだてる作品
現在は、『百年の編み手たち—流動する日本の近現代美術』『MOTコレクション ただいま/はじめまして』が開催中。企画展示室とコレクション展示室をあわせて、同館のコレクションを堪能することのできる展覧会だ。今後のスケジュールとしては、ダムタイプやミナ ペルホネン、オラファー・エリアソンなどの企画展が予定されている。