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突拍子もない話だが、今をときめく現代アートチームの「目 / [mé]」が、「顔」を募集している。『大地の芸術祭』や『北アルプス国際芸術祭』など、数多くの芸術祭にも引っ張りだこの目は、展示空間を別空間のように作り替え、そこに様々な仕掛けを忍ばせたインスタレーションなど、想像力を刺激する作品で人気の若手アーティストだ。そんな目が、来たる2020年に向けて、巨大な人間の顔を東京の空に浮かび上がらせるプロジェクトを進めているという。
目のメンバーであるアーティストの荒神明香(こうじん・はるか)が「中学生の頃、突如、街の上空にまるで月のように人間の顔が『ぽっ』と浮かんでいる夢を見た」ことに着想を得ており、作品タイトルもずばり『まさゆめ』。夢のような光景を生み出す、そのキーとなる顔候補を、オフィシャルサイトにて現在募集中だ。「2020年夏の東京の空に、どのような顔が浮かぶべきか」が真剣に討議されたのち、荒神が最終的に一人の顔を選び出すという。
同様のプロジェクトは、2013年から2014年にかけて宇都宮美術館で、『おじさんの顔が空に浮かぶ日。』として展開された。なんの変哲もない「おじさん」の顔が宇都宮の上空に浮かんでいる景色は、さぞ異様なことだったろう。前回は「おじさん」という制約があったが、今回は年齢、国籍、性別を問わず広く募集している。せっかくの機会なので、宇都宮で実施された際の印象的なエピソードについて、目に尋ねてみた。
「たくさんあるのですが、気がついたら『なんだなんだ?』という感じで街にたくさんの人が集まって来ていて、老人ホームから、おじいちゃんおばあちゃんがぞろぞろ出てきたり。これはボランティアスタッフの方から聞いた話ですが、街なかでおばあちゃんが、空に浮かぶ顔を発見した途端、慌てて家の中に戻っていき、しばらくしたらまた慌てて表に出て、カメラのほこりを口でフーッとはらいながら撮影している様子を見たそうです(笑)。泣いてる子もいたり、大笑いしてる人もいたり。不思議と、どんな反応や行動も共感できるような光景に思えました」
空に巨大な顔が浮かび上がる。言葉にしてしまうとごくシンプルな発想だが、実際に直面したならば、しばらく使っていなかったカメラを取り出してきたくもなるだろう。想像するだにワクワクしてくるが、何はともあれ、その場に立ち会ってほしい。より密に楽しみたい人は、「どのような顔が浮かぶべきか」を議論する「顔会議」も参加可能なので、そちらも要注目だ。まずは話の種にでも、下記のオフィシャルサイトから「顔」を応募してみてはどうだろうか。