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2020年10月11日、六本木に新たなアートコンプレックス、ANB Tokyo(アンビー トーキョー)がオープンした。東京タワーが見渡せる外苑東通りに面し、1階には7月に開店したばかりのノンアルコールバー0%が入居。2階から7階までのフロアには、ラウンジ、スタジオ、ギャラリー、キッチンスペースもあり、さまざまな表現や交流の場に対応している。
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この場所を拠点とするのは、アカツキ創業者の香田哲朗、キュレーターの山峰潤也が立ち上げた一般財団法人東京アートアクセラレーション。2020年4月に始動し、展覧会やトークイベントの企画運営をはじめ、アーティストの創作活動支援やアートを軸にしたコミュニティーの形成などを展開する。
街の再開発が進む六本木だが、ANB Tokyoの建物もまた開発地区に当たって3年ほどを持って取り壊しを予定しているという。アーティストをはじめ、アートを支える人々の視点から、変わりゆく六本木の街はどのように映るのだろうか。
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10月11日に開催を迎えたオープニング展『ENCOUNTERS』は、予期せぬ「遭遇」から生まれる新しい創造をテーマに、若手キュレーターたちが中心となった企画展だ。四つのフロアから成る展覧会で構成され、26組のアーティストが参加している。
3階『NIGHTLIFE』では、都市のなかでも「夜の街」を象徴する六本木の文化に着目し、Houxo QueとMESが手がけた展示空間が広がる。1988年に六本木のディスコで死傷者を出した事故をモチーフとしたオブジェ、祭壇を思わせるDJブース、ターンテーブルを回すと刺(とげ)抜き地蔵をなでることができ、壁には点滅する無数のディスプレイ作品。パーティー会場を連想させるような空間からは、そこにある記憶の痕跡と現在とが重なり合う瞬間が垣間見える。
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6階の会場では、六本木の土を会場に運んだという石毛健太、丹原健翔の作品『盛土(六本木)』が目を引いた。都心ではあまり見かけることのない生々しい土の姿や持ち込まれた植物と、むき出しの梁(はり)やコンクリートとの対比は、都市の表皮を反転させる意図を持つ。
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また4階では、写真家の長島有里枝をはじめ、グラフィティーや詩を扱う作家を招き「路上」「家族」をテーマとした展示を展開。 7階では写真家やアーティストが参加するコレクティブ、Tokyo Photographic Researchより、田村友一郎、細倉真弓、三野新、谷口暁彦ら11組の作家による、写真や建築、メディアアートなど多様な表現と視点の作品が集まっている(あまりにも空間に溶け込んでいるため、気をつけないと見落とすユニークな作品もあり)。
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各階には大通りを見渡せる大きなガラス窓があり、それぞれの展示作品と場所の持つ特性とが相乗し独特の空間を作り上げていた。全て観終わった後には、六本木の風景が少し違って見えるかもしれない。
場所:ANB Tokyo
時間:12〜20時(入場は19時30分まで)
休館日:月・火曜
入場料:1,000円、中・高・大学生 入場無料(受付で学生証要提示)
入場規制:10人/毎30分程度
入場方法:事前予約制
キュレーション:山峰潤也(TAA共同代表)、石毛健太、丹原健翔、西田編集長、布施琳太郎、吉田山、Tokyo Photographic Research
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