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ダンスミュージック文化の中で「レジェンド」という言葉は多様されている。エレクトロニックミュージックの初期の人物であればレジェンドと言われるし、21歳でナンバーワンシングルのヒットを出せばそう呼ばれる。その言葉がぴったり当てはまる男の一人で、イギリスを代表するDJ、プロデューサーのアンドリュー・ウェザオール(Andrew Weatherall)が、このほど肺血栓塞栓症ロンドン市内の病院で亡くなった。まだ56歳だった。
Twitter上では、ニュー・オーダーやプライマル・スクリーム、ジャイルズ・ピーターソンらミュージシャンや多くのファンからの追悼の言葉であふれている。
We are all very saddened to hear about the passing of our friend, and collaborator, Andrew Weatherall. pic.twitter.com/vZ3ckl7lw0
— New Order (@neworder) February 17, 2020
Andrew Weatherall 1963 - 2020 pic.twitter.com/dnNEA339n9
— Primal Scream (@ScreamOfficial) February 17, 2020
ここでは追悼の意を込めて、2012年にタイムアウトロンドンに語った、レジェンドと呼ばれること、18歳の自分自身に向けたアドバイスなどを紹介したい。
ーよくレジェンドと言われると思いますが、自分でも本当にそうなったと感じますか?
本当に意地悪だなあ! おかしな例だけど、ポップカルチャーって全てを加速させるんだ。10年以上のキャリアがある人はみんな「国宝」を首からぶら下げる。それってただ俺たちがまだ生きてて音楽を作り続けてるからってだけだと思うんだ。天才って言葉の使い過ぎで言葉自体に意味がなくなってるみたいな。
ー同じように長い功績のおかげで復帰して、例えば新しいクラシックハウスナイトでプレイするアーティストもいます。そういったことから何が生み出せると思いますか?
バランスが必要だし、そのバランスを視野に入れるべきだと思う。伝説のDJと新鋭の若いDJを同じ空間に呼べば、若いDJを見に来た人も、彼らの音楽性、ルーツが分かると思うんだ。そういうパーティーがベスト。遊びに行くのに内容が音楽の歴史のレッスンだなんて気の毒だろうけど、でもそうあるべきだよ。俺は別にグライムナイトとかは行かないけど、もし行ったとして、DJが1970年代のヘビーデューティーダブを皆のためにかけてたら、自分はもっと楽しめる。
ー去年の『Red Bull Music Academy』の講義で、「無知の自信」についてお話していましたね。面白いコンセプトでした。
オルソン・ウェールズ(Orson Welles)から取ったんだ。すごい良いでしょ? 自分のアイディアってことにしておけば良かったけど、いずれバレちゃうからね。実際、レコードを作るときの自分のモットーになってるんだ。ギターか何かの下の方にラテン語で、「自分が何をしているのかわからない」って。俺たちは輝くアマチュアなんだよ! それが無知の自信。
ーもし、18歳の時の自分にアドバイスをするとしたら?
当時は自信過剰だったし、すごく無知識だった。恥は最高の学習で、ここ数年、馬鹿馬鹿しい事もしてしまったけど、いい勉強になった。それでも今いる場所があるから、自分が変わる事はまだないと思う。俺は適度にバランスの良い人間でそれなりの経歴もあるし、18歳の自分に伝えるとしたら、「継続しろ! スピードを1グラムでも買って、ウイスキーのボトルを一本飲んだら?」かな。
ーオプティモ(Optimo)が初めてあなたに会った時、下着にまつわる事件があったと言っていました。詳しく説明してくれませんか?
それはセラピストと催眠術に頼らないと記憶から引っ張り出せないような話だなあ。汚れたから下着を脱がなきゃならなかった事って人生で数回しかないから。その話を覚えていて「OptimoとWeatherallのパンツにまつわる伝説」を持ち続けるべきだったけど、記憶を抹消してしまうほどダークなことだったのかも(笑)。
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