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3年に一度開催されるアートの祭典、ヨコハマトリエンナーレ2020がいよいよ開幕する。2001年に始まり今年で20年目を迎える本展は、新型コロナウイルスの影響で2週間延期されての開催となったため、待ちわびていたアートファンも多いのではないだろうか。
本展はヨコハマトリエンナーレ初の外国人キュレーションとなる、ラクス・メディア・コレクティブ(以下敬称略、ラクス)の3人をアーティスティックディレクターに迎え、横浜美術館とプロット48の2会場で開催。国内外から出展する全67組のアーティストは20〜30代が多く占めることや、コロナ禍でのオンラインイベントとの連携など、初の試みが盛り込まれている。
2020年7月16日に開かれた記者会見では、残念ながらラクスの日本滞在はかなわなかったものの、Zoom中継で「言うまでもなく世界規模の危機的状況のなかで、今は変革の時」と語る3人の思いを聞くことができた。ここでは、本展の見どころを五つのトピックに分けて紹介する。
1. まずは飛び込んでみる
タイトルの『AFTERGLOW―光の破片をつかまえる』とは、ビッグバン後の宇宙に発せられ、今に至るまで降り注ぎ広がる光のイメージを指している。「光の破片を〜」が意味するテーマは、目まぐるしく変化する世界で、大切な光を自ら発見してつかみ取る力と、他者を排除することなく共存の道を探る術だ。
横浜美術館現館長の蔵屋美香(以下、蔵屋)は「通常の生活では到底考えないようなことに向き合い、人々の心が敏感になっている今だからこそ、現代アートの持っている一つ先の表現に触れやすいのではないか」と語った。さまざまな変化のなかで、自身と向き合わざるを得ないこの機会にこそ、一度訪れてみてほしい。
2. 五つのキーワードを感じる
本展は「独学」「発光」「友情」「ケア」、それから「毒」の五つのキーワードが掲げられている。これらは2019年に発表されたものだが、コロナ禍にある現在を予言するかのようなテーマとなっているのが不思議だ。「アーティストは未来を予見するようなテーマを引き当てることがある」と蔵屋は語る。
「毒」との共存を避けられない現状、一人でもたくましく学ぶことや、他者とのつながりを保つこと、心身のケアなど生き抜く上で学ぶことが多いテーマであることは間違いない。また「発光」は、学んで得た光を遠くまで投げかけ、共有を促すことを指している。
3. 「分からない」ことを楽しむ
ここまで読んで「現代アートはよく分からない」と思った人も安心してほしい。本展では、初めて現代アートを体験する人にも楽しんでもらえる工夫として、作品をより深く知るためのガイドブック『いっしょに歩く ヨコトリガイド2020』を用意している。
また、配慮はキャプションにも施されている。今回のキャプションは3段落に分かれており、まず1段目にキュレーターであるラクスのコメント、2段目に作家自身のステイトメント、3段目に解説が載っている。これらを目にしたとき、詩や散文、あるいはメモのようなラクスのコメントをたしなむも良し、作家自身の言葉を読むも良し、解説と作品を見比べて楽しむなど、さまざまな鑑賞方法が用意されているのだ(もちろん必ずしもキャプションを目に入れる必要はない)。
4. 未来へと歩く
トリエンナーレとは3年に一度開催される展覧会だけのことを指すのではなく、「一つのトリエンナーレから次のトリエンナーレへと1000日間かけて、刻一刻と変わる世界と付き合い、表現していく旅」だとラクスは語っている。展覧会と並行して時間の旅をするように開催されるプログラム『エピソード』では、パフォーマンスをはじめ、アーティストが紡ぐさまざまな表現を発表。
プロット48会場の入り口にあるデニス・タン『自転車ベルの件』は、次のトリエンナーレまでの1000日間を旅する展示として、開幕中および閉幕以後も場所を問わず実施する。また黄金町バザール2020、BankART Life Ⅵなど、横浜に所縁のあるイベントへの周遊パスとなる『横浜アート巡りチケット』も販売している。
5. オンラインで参加する
岩井優《ヨコハマで黒鉛と遊ぶ(エピソードのために)》
揺れ動く社会情勢のなか、横浜へ出向くことが難しい人にはオンラインイベントも企画されている。洗浄をテーマに作品を制作する岩井優の参加型アクションのほか、ヨコハマトリエンナーレの公式YouTubeチャンネルでは展覧会の特徴や本展の見どころを解説。会期終了までの3カ月間、さまざまな楽しみ方にチャレンジしてほしい。
蔵屋美香(横浜トリエンナーレ副委員長、横浜美術館館長)による展覧会の特徴と見どころとなる作品の説明
『ヨコハマトリエンナーレ2020』
会期:7月17日(金)〜10月11日(日)
※チケット販売は日時指定の予約制
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