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サウナ大国としても知られるフィンランド。フィンランドは人口560万人、それに対してサウナは300万と、国内にある車の台数より多いといわれている。学校や会社、国会にまでもサウナはあり、外交の一部としても機能してきた。 東京のフィンランド大使館にも、サウナがあり、仕事終わりなどに同僚たちと入ることもしばしばあるそう。庭にはヴィヒタ(※1)にするための白樺が植えられ、すくすくと育っている。
(※1)白樺の枝葉を束ねたもの。ウィスキングなどのマッサージでも使用される。
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大使専用サウナの内部
今回、フィンランド大使館のサウナで行われる交流イベント『サウナイルタ』に潜入。映画『サウナのあるところ』の監督、ヨーナス・バリヘルとミカ・ホタカイネン、映画に登場する公務員のカリ・テンフネンと軍人のミッコ・リッサネン、フィンランド大使館のマルクス・コッコ参事官とともに『サウナイルタ』を体験してきた。
サウナイルタとは?
そもそもサウナイルタとは、日本語に訳すと「サウナの夕べ」という意。フィンランド大使館主催の招待制のイベントで、今年の6月から月1で開催している。フィンランドでサウナは日常生活に欠かせないばかりでなく「サウナ外交」も歴史的に行われてきたという背景もある。
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休憩ラウンジ
イベントは、サウナに入って、食事や酒を楽しみながら、リラックスして交流しましょうという意図から開催されている。日本人とフィンランド人の実業家を招いたものや、今回のように映画の公開を記念したものなどさまざま。リビングのような空間で、冷蔵庫にはビールやフィンランドの酒が入っており、自由に取り出して飲めるというカジュアルさだ。
まずは、ロンケロで乾杯
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ロンケロとはフィンランドではなじみのジンベースのカクテル。グレープフルーツのサッパリとした香りがサウナ上がりにぴったりだ。日本では成城石井などで購入できる。
大使専用サウナへ……
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2019年4月にリニューアルしたばかりというサウナ室からは、ヒノキの良い香りが漂ってくる。大使専用サウナは6人が定員で、中央奥にはフィンランドのサウナヒーター『Tulikivi』が鎮座。サウナストーンがたくさん積載されているので、ロウリュ(※2)はし放題だ。室内は会話しやすいように向き合って座るレイアウト。サウナ室とシャワールームの扉の下に隙間が空いているため空気がたくさん入り、息苦しくないのも特徴だ。
(※2)熱したサウナストーンに水やアロマウォーターをかけ、蒸気を発生させること。または、蒸気そのものや蒸気で満たされた空間
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サウナの妖精トントゥ
フィンランドではサウナ室に、「サウナ・トントゥ」という妖精が守り神のような役割で存在していると伝えられている。昔はトントゥが一番最後に入るから、常にサウナの中を清潔に掃除しておこうと子ども達に言い聞かせていたとか。
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日本との交流100周年を記念したオリジナルのサウナハット
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タオル1枚を腰に巻いて、もしくはガウン姿でクールダウン
サウナ室では、映画についてやフィンランドのサウナ事情などを話しながら過ごした。これも無言で入る日本のサウナとはまるで違う。話を聞いて驚いたのは、かつては出産や葬儀をサウナ室で行っていたことだ。
また、親子でサウナに入って、悩みや将来の話をすることもあるそうで、サウナで裸になってオープンな気持ちで話をすることによって、親子関係を円滑にする秘訣になっていると大学准教授のフィンランド人女性が教えてくれた。
ひと段落するとロウリュ、そしてまた会話を始める。サウナの後には水風呂ではなく冷水シャワーを浴びて、広々としたベランダでクールダウン。これを繰り返すという至福のルーティンだ。
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ソーセージ、サーモンとポテトのグラタン、サラダ、ビールなどがふるまわれた
忘れてはいけないのはサウナフードとドリンク。フィンランドでは、サウナストーンの上でソーセージや野菜をのせてサウナの中で味わう料理のことを差す。サウナ上がりに、焼いたソーセージとキンキンに冷えたビールで一杯。
表彰式がスタート
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サウナフードと外気浴を満喫し、夢見心地な気分でいると、表彰式が始まった。大使館のサウナに入ると、「80度の熱に耐えた」ことが表彰されるのだ。
正式会員の賞状には、「フィンランド外交サウナクラブ、サウナイルタは東京のフィンランド大使館によって運営されています。サウナイルタに参加し、80度の熱に耐えた人が加入でき、フィンランドのロウリュの魅力を広めるスポークスパーソンになります」と記されている。
これからは、胸を張ってフィンランド式サウナの良さを伝えていこうと思う。
サウナブックに思い出をつづろう
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サウナブックは、フィンランドの伝統的なサウナ施設に置いてある、サウナに入った人たちが記入していくノート。せっかくなので、思い出を残していこう。
映画『サウナのあるところ』は、9月14日(土)からアップリンク渋谷、吉祥寺、新宿シネマカリテほか全国公開中なので、フィンランドのサウナ事情が気になるならぜひ劇場に足を運んでみてほしい。
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監修:松田宇貴