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世界最大のサンゴ礁地帯として知られるオーストラリアのグレートバリアリーフ。600種を超えるサンゴから成るこの「海の森林」には、さまざまな生き物が共存している。しかし近年ではサンゴの白化が心配されており、このままではサンゴだけでなく、この地で育まれてきた生態系そのものが消失してしまう可能性もあるという。
2020年8月1日(土)、グレートバリアリーフにオープンするMOUA(The Museum of Underwater Art)は、シュノーケルやダイビングをしながら海の中のアート作品を楽しめる海中美術館だ。「サンゴ礁やそこで暮らす生き物、そしてアートを総合的に楽しめる」という魅力的なコンセプトと同時に、失われつつあるサンゴ礁の実態や、その理由として挙げられる地球温暖化について訪問者に提起する。
美術館は4の展示から成り立っており、水面に建てられたモニュメント『オーシャン・サイレン(Ocean Siren)』を除く全ての作品が海中展示されている。ビーチからも眺めることができる『オーシャン・サイレン』の作者は、海中彫刻家で環境活動家のジェイソン・デケアーズ・テイラー。先住民の少女をモチーフにした銅像は視覚的に環境問題を訴え、ソーラーパネルで駆動するLED照明が実際の水温に反応しながら、青から濃い赤へと色を変える。
『コーラルグリーンハウス(Coral Greenhouse)』はサンゴ礁の保護と修復の重要性を訴えた作品。海底に設置されたスチール製のハウス内には、鉢を植える人や顕微鏡を覗き込む研究者、海底を掃除する人などの像が展示されている。スチールは、もともとサンゴ礁の成長を促進する素材として活用されているもの。サンゴの環境を守りながら、自然とアートの調和を目指す。
また、周辺に散らばった20体の像は『リーフガーディアンズ(reef guardians)』と名付けられており、サンゴを守り育てる地元の学生たちがモチーフだ。
世界でも、自然と共存するサステナブルな美術館や環境問題を訴えるアートプロジェクトなどに注目が集まっている。今年はオーストラリア史上最悪の森林火災により、野生動物などの多くの生態系が失われることになった。
大自然の修復に取り組むオーストラリア発のこのプロジェクトが、人々の環境への意識を高めるとともに「エコツーリズム」という新しい旅行スタイルとして世界に広がっていくことを願いたい。
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