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テレビ番組『セサミストリート(Sesame Street)』が、初のロヒンギャのマペットを制作し、バングラデシュの難民キャンプなどで上映されている教育ビデオに登場させた。
『セサミストリート』は中東の国々に向けたプログラムの開発を行うなど、かねてから難民の子どもたちへの教育支援に尽力してきた。世界最大の難民居住地であるバングラデシュに向けた今回のプロジェクトは、新型コロナウィルスの感染拡大によって教室が閉鎖され、非営利団体からの家庭訪問が停止されるなど、避難とパンデミックという二重苦にある現地の状況に対して立ち上げられたもの。
エルモなどおなじみのキャラクターたちとともにビデオに登場する2人のロヒンギャ、6歳の双子のNoorとAziz Yasminの誕生にあたっては、難民キャンプ内のロヒンギャのコミュニティーに暮らす人々の意見を取り入れながら制作が進められたという。
彼らの使命の一つは、難民の子どもたちに不安や恐怖に対処する方法を伝えることだ。あるストーリーでは、暗闇を怖がるマペットに対して、別のマペットが腹式の深呼吸を教えて落ち着かせるシーンが盛り込まれているという。
ロヒンギャ難民の問題は、ビルマ(現 ミャンマー)で1962年に起こった軍事クーデター以降のビルマ民族中心主義とそれに基づく中央集権的な社会主義体制に端を発し、ロヒンギャたちへの迫害と、バングラデシュ、マレーシア、タイ、インドネシアなどの周辺国への難民流出は、現在まで続く国際問題となっている。今年1月には国際司法裁判所(ICJ)がミャンマーに対してロヒンギャ・ムスリムへの虐殺行為防止を命じるなど、現地はいまだ悲惨な状況にある。
『セサミストリート』を制作している非営利団体セサミワークショップは、本プロジェクトに関する声明で「私たちは今、子どもたちがこれまでに経験したことのないような、本当に心に響くものを作ることができたと実感しています。ほとんどの子どもたちは、世のメディアが作るコンテンツのなかに自分たちのような環境にいる、身近に感じられるキャラクターを見たことがないのです」と語っている。
日本では国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がロヒンギャ難民への支援、および難民キャンプにおける感染拡大危機に関する支援を目的として募金を呼びかけている。
テキスト:三木邦洋
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